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TRPG風小説 ダイス振ってTS異世界転生もの 第一話

 この世界にはかつて、様々な文明が存在していた。

 新たな文明が生まれ、発展し、滅び、忘れ去られる。この世界はそれを何度も繰り返してきた。

 今ある文明は、そう……


『判定1、3D6:8』

『判定2、10D100:618』


 世界の始まりから、第八番目の文明である。生まれてから僅か618年程度の、若い文明である。文化レベルは我々の目から見れば、お世辞にも高いとは言えないであろう。ざっくりとわかりやすく言ってしまえば、中世風ファンタジーな世界だ。


 そんなこの世界には、冒険者と呼ばれる者達がいる。

 かつて滅び、忘れ去られた文明……この世界には、それらの遺産が眠る遺跡、ダンジョンが数多く点在している。そこへ潜り、失われた文明の謎を解き明かし、かつて失われた技術を取り戻さんとする無謀な勇者達。それが冒険者である。

 そして此処にも、そんな冒険者を志す少女が一人いた。


 彼女は、一六歳の年若い少女だ。みすぼらしい恰好で、旅をしてきたからか薄汚れてはいるが、それでもなお損なわれない美しい容貌をしている。腰ほどまである漆黒の長い髪と、ぱっちりとした藍色の瞳は、この国ではなかなか見られない、珍しいものだ。


『主人公が訪れた街の規模 1D100(最低値25):30』


 彼女が訪れたのは、辺境にある町だった。彼女が育った町に比べれば大きいが、それでも王都などの、他の大都市に比べれば小さな町だ。彼女は街に着くと、真っ直ぐに冒険者ギルドの支部へと向かった。あまり大きくない街であるため、冒険者ギルドの建物も大都市にあるそれよりも、だいぶ小さい。

 彼女は木製のドアに手をかけ、その扉を開いてギルドへと入っていった。ギルド内には冒険者たちの姿があり、彼らの視線が入ってきた少女に集まった。


『ギルド内に居る冒険者の人数 2D10:13』

『冒険者達に好感を与えられたか、魅力(14)で判定。3D6:14。成功』

『冒険者達は主人公を見て、好感を抱いたようだ。では主人公に対する冒険者達の反応を判定する。魅力+1D100で、数値が高いほど好感を抱くとする』

『魅力(14)+1D100:100(・・・)→達成値114(・・・)


『………………』


『達成値114(・・・)、そしてダイス目、クリティカル』


『プ、プロットダイーーーーーーン!?』



 扉を開け、入ってきた人物に視線が集まる。冒険者が十三人とギルドの職員が数名、合わせて二十人弱の視線が、彼女に集まった。彼女の姿を見た瞬間、ギルドの建物内にいた者達は皆、雷に打たれたような衝撃を受け、その場に固まった。

 質素な身なりをしているが、こんな辺境の田舎町には不釣合いな……否、王都であっても滅多に見られないほどの、とんでもない美少女がそこに居た。


 入ってきた少女は扉を閉めると、部屋全体を見回した。それから、受付のカウンターに向かってゆっくりと歩いてくる。

 冒険者達も、ギルド職員も、そんな彼女の姿を呆けた顔で見つめるばかりだ。男達は彼女の整った顔や、艶やかな長い黒髪、肉付きの良い肢体を見てだらしのない顔をする。女達も彼女を見て羨望の表情を浮かべた。


「すみません。冒険者登録をしたいのですが」

「………………」

「あのー、聞こえてます?」

「……はっ!?し、失礼しました。冒険者登録ですね!?では、こちらの用紙に記入をお願いします」


 カウンター越しに職員の女性へと話しかけ、十数秒待ったところでようやく反応が返ってくる。それと共に、一枚の紙と羽ペンが差し出された。


『そういえばこの子、孤児だけどこの世界の文字は読めるの?読み書き技能を知力+1D100で判定』

『知力(8)+1D100:74→合計値82。かなり高いレベル』

『どうやらちゃんと教育されていた模様。サンキュー神父様』


 用紙を受け取った少女は、羽ペンを手にとると必要な事項を記入していった。孤児院出身である少女だが、どうやら育ての親である神父がしっかりとした教育を施していたようで、文字の読み書きはそこいらの上流階級の人間と遜色の無いレベルで出来ている。書く字も美しく読みやすい。

 美しい容姿と、それに不釣合いなみすぼらしい服装。たまたま容姿に恵まれた、貧しい出自の娘かと思えば、文字の読み書きは十分以上に出来ているようだ。

 そのちぐはぐさに、まさか家出してきた貴族の娘とかでは……と危惧を抱く職員であったが、そう考えている間に少女から、登録用紙が返却される。


『名前決定ダイス、1D2:1。よって1個目の案』

『名前案1個目、鬼丸國綱さんの案を採用させていただきます』

『この場を借りて名前案を出してくれた鬼丸國綱さん、藤堂隆宗さんにお礼を述べさせていただきます。お二人ともありがとうございました』


「名前は……アーレアさんね。えーと、孤児院出身の……16歳!?」

「……16歳ですが、何か文句でも?」

「はっ!?ご、ごめんなさい。凄く美人でスタイルが良いから、もう少し年上なのかと思って」

「そうですか」


 カウンター越しにそんな会話をする彼女達に、聞き耳を立てていた冒険者達がひそひそと話す。


「どうやら彼女の名前はアーレアさんというらしい」

「16歳か……ふっ、アリだな」

「孤児なのか……きっと苦労してきたんだろうなあ。よし、引き取らなきゃ(使命感)」

「憲兵さんこいつらです」

「16であのスタイルとかマジかよ死のう」

「まあまあ落ち着きなよ。小さいのにも需要はあるって」

「誰がまな板じゃゴルアアアアア!」

「そこまで言ってないわよ!?」


 背後の冒険者達が騒がしいが、それが自分に関係していると露程も思わないアーレアであった。そんな少女に、書類を読み終えた職員が話しかける。


「それでは冒険者登録を行ないます。まずは冒険者カードを作るために魔法をかけさせてもらいますね」

「わかりました。ところで冒険者カードとは何でしょうか?」

「ご存知ありませんでしたか。それでは説明をさせていただきます。冒険者カードは冒険者にとっての身分証明証であり、本人の能力、所持している技能が書かれています。書かれている情報はリアルタイムで更新され、自分の能力がどれくらいのレベルに達しているのかを、常に確認できるようになっています」


 なるほど、キャラクターシートのような物か。

 ほとんど忘れかけている前世の知識を元に、アーレアはそんな事を思った。


「では、魔法をかけさせていただきます。抵抗はしないでくださいね?」


 ギルド職員はそう言うと、アーレアに向かって手をかざし、呪文を唱えた。


『ギルド職員がアーレアに対して【ギルドカード作成】を使用』

『アーレアは抵抗放棄→自動成功』


 発動された魔法が、アーレアの能力値、技能レベルを読み取り、ギルド職員に正確に伝えていく。そしてギルド職員が手に持った白紙のカードに、その情報が自動的に記されていった。


(ふむふむ、筋力13、耐久12……凄い、この子ほとんどのステータスが水準以上じゃない……そのかわり幸運だけ妙に低いけれど……)


 ステータスに続いて、アーレアの持つ技能スキルレベルが職員に伝わり、その情報がカードに記載されていくのだが、その時であった。


(スキルの方は、剣が現在値4、限界値が45ね。次に槍が、現在値9の、限界値が……)

「ちょっ、98ぃ!?」


 驚きのあまり、思わず声に出してしまったうっかり職員であった。


「98だと?何のことだ?」

「アーレア嬢のバストのサイズではなかろうか?」

「こいつ……やはり天才か……」

「(ガタッ)」

「(ガタッ)」

「気持ちはわかるが座ってろカス共」

「あたしちょっと死んでくるわ」

「落ち着け絶壁、生きろ」

「よし、表に出ろ」

「いやいや冷静になれお前ら。彼女らは今ギルドカードを作っている。という事は、おそらく98というのはアーレア嬢の持つ能力値か、あるいはスキルレベルのどちらかだろう」

「う、うむ。そうだな。能力値が98という事はまず有り得ないだろうから、おそらくスキルレベルか」

「たった今冒険者登録したばかりの彼女が、現在値98のスキルを持っているとは思えないわね」

「という事は限界値のほうで間違いなさそうだ。将来有望そうだな」

「問題は、それがどのスキルなのかだが……」

「どれだって構うもんかい。それだけの才能がありゃあ、それ一本で飯が食えるぜ」

「ますます興味が沸いた。是非パーティーに誘いたいものだな……」


 聞き耳を立てていた冒険者達は、ギルド職員が思わず口に出した数字を元に推理し、アーレアに対する関心をますます高めるのであった。


 それから、無事にギルドカードが発行されて、アーレアはギルド職員からそれを受け取った。


「では、これで冒険者登録は終了になります。街周辺に出現したダンジョンの情報は、あちらのボードに貼り付けてありますのでご自由にご覧になって下さい」


 そう言って職員が指差すのは、カウンターから向かって右側の壁に打ち付けてある、大きなコルクボードだ。アーレアがそちらを見ると、ボードには大量の紙が貼り付けてある。


「わかりました。早速見てみます」


 アーレアはそう言って、職員に軽く頭を下げた。そしてダンジョン情報が貼り付けてあるボードを見にいこうと、彼女が振り返ると……そこには、いつの間にかギルド中の冒険者達が集まっていた。

 職員との会話や手続きが終わったと見るやいなや、彼らは一斉にアーレアの周りに集まって声をかけ始める。


「君!ぜひ僕達とパーティーを組まないか!?」

「あっ、てめえ抜け駆けするんじゃねえ!」

「いや、俺達のパーティーに!」

「貴女に一目惚れしました!結婚して下さい!」

「罵って下さい!」


 まず男達が群がってきた。アーレアは、突然屈強な男達に囲まれ、話しかけられ……


『ダイス目が高いほど上手く対処できた。1D100:5』


 パニックになった。

 元々、小さな田舎町で育った彼女は、大勢の人を相手にする経験は少ない。更に、今のように冒険者を生業にしている強面の男達に囲まれるような経験は当然ながら皆無である。

 そんな彼女が突然、今のように十人以上の男達に一斉に話しかけられれば困惑するのも無理はないだろう。中には求愛してくる者もいる。男にそのような事を言われた事は前世を含めても皆無であり、アーレアはどう答えていいかわからず、おろおろする。


「ちょっとアンタ達何やってんのよ!脅えちゃってるじゃないの!」

「大丈夫かい?この馬鹿共がすまないねぇ」

「男共、正座……いや、土下座!この娘に謝りなさい!」


 だが、そんなアーレアを女性の冒険者達が庇った。彼女らは男達とアーレアの間に割って入ると、男達を叱り飛ばす。

 女達の言葉に我に返った男達は、その場で一斉に土下座をした。


「すいませんでした」

「申し訳ございませんでした」

「ごめんなさい、悪気は無かったんです」

「貴女の美しさに我を失ってしまいました」

「許して下さい!なんでもしますから!」


 アーレアは女冒険者達のおかげで、何とか平静を取り戻すと笑顔を浮かべた。


「いえ、こちらこそ取り乱してすみませんでした。えーと、たった今冒険者になったばかりの、アーレアと申します。未熟者ですが、どうかよろしくお願いします、先輩方」


 そう言って頭を下げ、アーレアは彼らに自己紹介をした。

 彼女の美貌と美しい声、穏やかな笑顔に、冒険者達は男女問わず魅了された。


 こうしてアーレアは冒険者としての第一歩を踏み出し、ギルドの先輩冒険者達に熱狂的に歓迎されたのであった。



 ◆余談◆



「ところでお嬢ちゃん、あんた折角綺麗な顔してるのに、そんなボロい服着ちゃって勿体ないじゃないの。……アンタ達!」


 女達のリーダー格であろう、姉御肌の女戦士がアーレアを捕まえて指を鳴らすと、女性の冒険者たちが集合する。


「イエスマム!さーてアーレアちゃん、ちょっとお姉さん達とお風呂に行きましょうか」

「あら、この子全然化粧とかしてないのね。これはやり方を教えなきゃねぇ」

「それじゃ、あたしはこの子に似合う可愛い服を調達しないとね……」

「えっ、あの……皆さん!?」


 一瞬で女冒険者たちに囲まれ、アーレアはギルドの隣にある冒険者達の宿屋に連れていかれた。

 ……それから、約二時間ほどが経過して。


 女冒険者たちの尽力によって、質素な服装で飾り気の無かったアーレアは身なりを整えられ、リボンやフリルの付いた可憐な衣装に着替えさせられていた。


「イヤッホォォォォォォウ!姉御グッジョブ!」

「カワイイヤッター!」


 そんなアーレアの艶姿を見て男達は狂喜乱舞し、彼女を持て囃すのであった。


「あの、落ち着かないので元の服に着替えてきても……」

「あら駄目よ。せっかく素材が良いんだから、しっかり磨かないと」


 どうやら、来て早々にすっかりギルドのアイドルとして定着してしまったアーレアの明日はどっちだ。

 次回へ続く。


『クリティカルボーナス。クラス【アイドル】を取得』


―――――――――――――――――――――――――――――――――

 【アイドル】


 種別 EXクラス

 効果 魅力+1 ギルドの冒険者・職員達との交渉にボーナス大


 【解説】

 冒険者ギルドの人気者。

 ギルドに所属する冒険者・職員達に何かと便宜を図って貰えるだろう。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

正直自分のダイス運を舐めてた。

どうしてこんなに極端なんだ……!(絶望)

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