表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校生神王の後日談  作者: ぺのじ(旧春瀬)
第3章 高校生神王の真実
15/30

高校生神王の鍛錬

 目のまえで、銀閃が虚空を掻いた。

 速い――しかし、動きは直線的だ。


「くっ」


 真希凪まきなは反射的な動きで、手にしたサーベルを横に薙ぎ、払う。

 それを予想していたのだろう、エミステラは手を止めることなく、さらにサーベルによる連撃を繰り出す。真希凪も歯を食いしばり、負けじと応戦する。


「防戦一方では勝てませんよ」

「挑発には乗らねーよ!」


 瞬間、エミステラの口元に笑みが広がった。その裂け目はさながら地獄まで続くかのように深く、不快で、不覚にも真希凪は一瞬、目を奪われてしまった。

 当然、エミステラはその隙を見逃さない。

 真希凪が身構えるよりも速く、エミステラはいままでよりも深く振りかぶり、そしていままでよりも速く、その手を振るった。

 が、その動きを真希凪は捉えることができていた。

 挑発に乗るわけではないが、防ぐばかりでは勝てることができないのも事実。

 ならば。


「!」


 エミステラの目が軽く見開いたことに、真希凪は上体を低くしながら気づいた。頭のうえを、エミステラの神速ともいえる一薙ぎが通過する。だが真希凪は怯まない。そのまま、倒れ行く重力を推進力にかえ、エミステラの懐に潜り込む。


「そこだ……って!?」


 眼前からエミステラの姿が消えた。

 エミステラは、振りぬいた腕をさらに加速させ、体を無理矢理に急回転。その勢いを利用し、跳躍したのだ。そう理解した真希凪の視界に、白い、鶴のような脚が文字通り、飛び込んでくる。


「な、ちょ、待った――」

「舌、噛みますよ」

「うぐっ」


 エミステラの遠慮のない一撃が炸裂し、真希凪は地面に倒れ込む。立ち上がらなければ。そう思っても、体が、頭がいうことをきかなかった。どうやら、軽い脳震盪のようだ。両手をあげるジェスチャーで降参の意図を示すと、エミステラは勝ち誇ったように目を細めた。


「……はい、エミステラさんの勝ち」


 恋子のやる気のないコールが、人気のない鍛錬場に広がった。

 ここは天界城のなかの鍛錬場。その名の通り、天界兵が鍛錬を積む場であるが、いまはその光景は広がっていない。かわりに、その一角にぽつりと、鍛錬に励む真希凪たちの姿があった。


「くそ、今回はいけそうだったのに!」

「そう思っているようでは、わたくしに勝つにはまだまだ遠いようですね」

「うぐっ。……どこがいけなかった?」

「わたくしの一閃をかわしたところまでは見事でした。しかし、そのあと、その一瞬、真希凪様は勝利を思い描いてしまいました。目のまえの現実を見ていなければ、それは隙にしかなりません」

「……よし、エミステラ、もう一回だ!」


 真希凪は膝に力を入れグイと力強く立ちあがると、ふたたびサーベルを構えた。サーベルは本来刺突向きであり、また片手握りで用いるものであるから、少なからず剣道の経験がある真希凪には不向きであったが、これも伝統だというのだから仕方がない。

 しかし一方で、日本刀をサーベル外装に仕込むのはべつにいいというのだから、伝統も意外と大したことのないものなのかもしれない。


「ほう、なにやらここ数日、やる気がありますね。鍛錬だけでなく、授業もです。……なにか、心境の変化が?」

「べつに、それほどのものでもないけどな。ただ――」

「ただ?」


 真希凪はどこか、すがすがしい、吹っ切れたような表情で、いう。


「俺も神王なんし、いつまでも弱いままじゃ、いられないだろ」

「……素晴らしいことです」


 エミステラは首肯する。なにやら煮え切らない表情だったが、いまの真希凪には気にならなかった。


「おう、だから、もう一度やるぞ! ……って、エミステラ、どうして片付けてるんだ?」

「申し訳ありません、真希凪様。わたくしはこれから、用事があるので」

「じゃあ恋子れんこ――って、あれ、あいつどこいった? まあいい、ならライオウと――」


 そんな真希凪に、エミステラは、ふうとため息をつく。


「真希凪様。わたくしが、わたくしだけの用事のために、真希凪をほっぽりだしたことが、これまでにありましたか?」

「へ? それってどういう……?」

「ライオウをお呼びください。いまからわたくしたちは、天界城の最深部で――」


 エミステラはいう。


「初代神王様と、謁見します」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ