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第五話 対人初戦 鴉の翼

昔の記憶を掘り出そう。

今は亡き僕の幼馴染との一つの会話。

あの時は夏だったか、蝉の合唱が煩かったから、たぶん夏だろう。

夏の日の晴れた日、曜日までは憶えていないけれど、僕と彼女の大切な思い出。

「雷君。雷君は生まれ変わるとしたら何になりたいと思う?」

「何だよ。藪から棒に。」

「まあ、良いから良いから。で?何になりたいの?」

暫し黙考する僕、それを楽しげに眺める華蓮。

「無い…かな。」

「無いの?一個も?」

「元より、生まれ変わるって言うのが好きじゃないんだよ。だって、今まで持っていた物を全て一度捨てるって言う事だから。」

「面白い考え方をするね。」

「来年には中学生だからね。このぐらいは考えられないと。」

そっかそっかと何処か満足そうに応える華蓮は、いつもと変わらない笑顔で、天真爛漫な顔でこちらを向いてこう答えた。

「私はね…狐になりたい。知ってるかな?狐が手袋を買いに行くお話。私はね、あれを読んでから狐も良いな〜って思うの。」

「本当の狐はそんな風にはいかないけどね。」

「雷君ひどい。女の子の夢を簡単に壊す?」

変わらない笑顔で僕を非難する華蓮はその日、燃える家と共にいなくなった。

その時、僕の手の中に入って来たコンとコルはもしかしたら…なんて思ったけど。

やっぱり、華蓮とは似ても似つかなくて、僕はやっぱり記憶をまた、埋めてしまうのだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「さあて、愉しい鴉狩りの始まりだ。」

結界を壊すのに成功した俺達は鴉の翼を持つ男と再び対面する。

「へぇ。よくこんなに早く結界を解けた物だな。はは!」

「はっ!お前、俺達についてよく知らねえみたいだな。少なくとも、コンとコルがどういう妖怪かは知らねえ。そうだな?」

確信を持って攻撃的な笑みを浮かべたまま空に浮かぶ男を睨みつける。

「どうしてそう思う?坊主。」

「知っていたら結界なんて張る訳が無いんだよ。少しは考えろこのバカ。」

「はは!面白いじゃねえか。たかが二つの起点を壊した程度で…」

「だから〜。そこが理解出来てないって言うんだよ。」

何?とでも言う様にこちらに視線を向けてくる鴉男。

「まあ、やっていれば分かるんじゃね?と言う訳で戦闘開始だ!」

そう言うと同時に俺は地面を蹴り、空にいる鴉男に突っ込んで行く。

だが、相手は鴉。空を自由に飛べる相手に、ただ跳んでいる俺が一撃を当てられる訳が無い。

紙一重で躱された俺はそのまま地面へと着地する。

「諦めな狐の坊主。自由に飛べないお前じゃ、俺には届かない。はは!」

「届かない?なら届かせれば良い!」

そう言って俺は左手に持つ刀を地面へと刺す。

すると刀を中心に先程の結界と同じような場が展開されていく。

ただ一つ違うところがあるとするならば…

「ススキ野原…だと⁉」

「安心しな。別に俺に対して何か力が与えられるとか、そんな類の物じゃねえ。どちらかと言うとさっきのあんたの結界に近い感じだ。」

ただ閉じ込める、それだけの為の結界。

そんな物、基本的には対して有効な手段では無い。

しかし…

「鴉よお。お前、俺が何であの時お前に突っ込んだと思う?」

「何?」

「俺は別にお前に近づいた訳じゃねえ。あの時、上空で逃げ遅れた人を確認したんだ。つまり、ここは俺の決戦場。名付けるなら、『葛の式、夢見層刀』って所だな。」

少し中2臭いだろうか。まあ、良いか。

「犠牲者を少なくする為の結界ってか?はは!よくもまあ、こんな大それた物を即興で作れた物だ。」

「あんたのおかげと言えば良いのかな。あんたの結界を壊したおかげで思いついた物だからよ。」

「待て…今なんて言った?壊した?解除したじゃなく?」

「ああ、言って無かったっけ。俺、お前の結界の起点探すのが面倒だったから。悪いけど、中から結界を張ってお前の結界を破裂させたんだよ。」

「じゃあ、何か?あの時の破裂音はお前の仕業だと?」

「そんな事は別にいいじゃねえか。さっさと続き、始めようぜ!」

そう言って俺はススキ野原から又もや鴉男に向かって地面を蹴る。

しかし、今回は様子見の跳躍では無い。

「坊主、お前!」

「悪いけど、あんたが一回目を避けた時、既に仕掛けは打っておいた。どうだい?雷で翼が思い通りに動かない気持ちは?」

一回目の跳躍の時、俺は人の有無と一緒に仕掛けを打った。それは…コンの毛を鴉男に付ける事!

「刀の一部は本体に惹かれるって聞いたんでね、今回はそれを利用させて貰ったよ。」

激突

空中での刀と錫杖の激突は、上に陣取っていた鴉男に軍配が上がる。

「坊主、さっき言っただろ。俺が空を飛んでいる間は、お前は俺に勝てない。」

「お前こそ、俺はさっき言ったぜ?仕掛けは打ったって。」

男が怪訝な顔で自分の姿を見てみる。

男は漆黒の翼に細身の体、たいしてどこも変わっている様には見えない。

その翼で光っている、金髪の毛以外は…

「しまっ!」

「仕掛けは一つとは限らない。そっちはコルの毛だ。受け取りな。」

『葛の式、夢幻憂月』…発動

瞬間、男の体が力を無くした様に落ちてくる。

元々、コンの毛の妨害で翼はあまり機能しておらず、そんなに高い場所は飛んでいなかったが、それでも普通は痛いだろう。

落下していく男をススキが優しくキャッチする。

「へえ、この結界、俺の意思に反応するのか。」

俺はススキの上で眠る男に、聞こえていないだろうが技の説明をしておく。

「『葛の式、夢幻憂月』は毛に触れた対象者の意識を強制的に奪う技だ。脳の生体電気をちょっと弄らせてもらったから少し眠りが深くなると思うけど…まあ、許してな。」

そのまま俺は、一本のススキに一人で歩いて行く。

「お〜い。セレ、土花〜。もう出て来て良いぞ〜。」

ススキからは、完璧に隠れていた土花と完璧に頭の一部が出ていたセレが顔を出す。

「赤原さん。終わったのですか?」

「小僧、あの男がいきなり起きると言うのは無しじゃぞ。」

「大丈夫だろ。鴉の翼も消えてるし。完全に意識は刈り取った。何か俺から仕掛けた分、罪悪感が残るが。」

まあ、それは向こうから喧嘩を売って来たという事で気にしないでおこう。

「赤原さん。この男、どうしますか?」

「そう…だな。」

「赤原さん?」

土花が心配そうに俺を見てくる。何だろう?

酷く眩暈が…

そう思ったのが俺の意識の最後だった。

俺はススキ野原のど真ん中で原因不明の眩暈に…倒れた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

起きたらそこは…知らない場所だった。

病院とは思えない木製の天井。

それに自分は今、ベッドでは無く布団で寝ているのだ。ここが病院とは考えにくいだろう。

「僕は…確か。」

鴉の男と戦って、罠を使って勝って、そこから…ダメだ、思い出せない。

「赤原さん。大丈夫ですか?」

「青田さん、ここって?」

「私の家です。赤原さんのアパートはあの鴉のせいで屋根が無くなっていましたので。」

ああ、やっぱり我が家に被害が出ていたか。

原因は僕では無いとはいえ、考えさせられてしまうのは否めない。

「ご主人!」

「ご主人様!」

青田さんの後ろからコンとコルが現れ、僕の腹へとダイブする。

ヤバイ、ちょっとこれは辛すぎる。

「コン、コル。ちょっと退いて、お願いします。でないと僕の内臓に深刻なダメージが‼」

僕の必死の呼びかけに青田さんが応えてくれて、僕の内臓は九死に一生を得た。

「ご主人、申し訳ありません。まさか敵の妖怪がご主人の中にいようとは…」

「ご主人様が倒れられたのはそれが原因だと思われます。ご主人様、何か御体に異常はございませんか?」

「体の中に…妖怪?何が入っていたの?」

「おそらく、あの鴉野郎の妖怪と思われます。鴉の翼を持っていたので、まず間違いないかと思われます。」

「今、男と妖怪は別々の部屋で軟禁しております。男の方は未だ目を覚ましませんので、妖怪の方をセレが見ていてもらっております。」

体の中に妖怪。なるほど、それであの時眩暈がした訳か。

「男の人はまだ目を覚まさないんだよね?だったら、少し話を聞いておきたいんだけど。大丈夫かな?」

「大丈夫でごさいます。このコン、今後ご主人に危害を加える様な妖怪が出て来てもちゃっちゃと片付けましょう!」

「も、勿論私もですよ。ご主人様!」

コンとコルの気持ちはとても有難い。

しかし、この二人気付いていない。

妖怪に対しては僕が戦っているので、守る手段は彼女達としてはあまり無いと言う事に。

まあ、留守を護ってくれていれば充分だけどね…。

「小僧、妖怪に話を聞く必要は無くなったぞ。」

「セレ?話を聞く必要が無くなったってどう言う事だ?」

「どうしてなぞ、簡単だ。男が目を覚ましたのじゃ。本人に聞くのが一番じゃろうから必要無いと言ったのじゃ。」

あの男が目を覚ました。

ただそれだけなのに、場に奇妙な緊張が流れる。

「取り敢えず。話だけでも聞いてみよう。最初からそのつもりだったんだし。」

話は僕とコンとコル。つまり、鴉を倒した僕達の責任と言う事になった。というかさせられた。

「し、失礼します。」

少し裏返ってしまった声に恥ずかしさを持ちながら襖の取っ手を横に引く。

部屋はだいぶ広く、その中央に僕達を襲ったあの男が寝ていた。

「よお、坊主。何の用だ?」

「あなたから少しでも話を聞けないかと思って。あなたは、何故僕達を襲ったんですか?」

普通の質問をしたはずだ。そのはずなのに、男は何故か目を丸くしていた。

「あの、何か?」

「お前、本当にあの時の狐か?人格が全然違うじゃねえか。」

ああ、ギャップに驚いていたのか…

「これは、この二人に性格の一部を渡しているせいでこうなっているんです。供物…って言う奴ですよ。あなただって何か供物にしているはずですけど?」

「いや、わかってはいたんだが、どうも慣れないんだよ。えっと、供物だっけか?残念ながら俺は知らねえな。烏天狗が何か教えてくれれば俺も分かるんだがな。」

「烏天狗?」

「お前の体に入った、俺の妖怪だよ。ま、そこの狐共にすぐにひきはがされちまったみたいだがな。」

「烏天狗。なるほど、だから結界も使えたのですね。」

「コン、烏天狗って何?」

「ご主人の妖怪無知には今は付き合っていられないので時間がある時にお話します。」

頼れる相棒に見捨てられてしまった。

うむ〜、少しは勉強しなきゃ駄目かな?

「それであなたは、烏天狗をご主人様の体に入れて何をしたかったんですか?」

「何、情報収集だよ。烏天狗は壁をすり抜ける。つまり、応用すれば人体にも使えるんじゃないかと思った訳だ。贅沢を言えば脳の情報も少しは頂きたかったが、まあそれは非人道的だからな、それはやめといたよ。」

「貴様。もしも、もう一度でもその様な事を言ってみろ、今すぐ私達が貴様を殺す。」

「へいへい。気をつけるよ。」

気をつけて済む問題でも無いのだが、ここは口を挟まない方が良いだろう。

「最後の質問だ。貴様の総合的な目的は何だ?情報収集なんかしとったんだ。何か思っての犯行だろう?」

「はは!狐はなかなか鋭いな。良いぜ。教えてやるよ、お前みたいな妖怪の力を使う者を襲った理由。」

男は快活にいじらしく笑って受け答える。

自然とこちらが彼の話にのめり込んでいた。

「何でも近々、俺達みたいな力を使う者達が一同に揃う機会があるらしい。詳しい事はわからねえんだが、何でも大量の賞金が懸かった狩りみたいな物らしい。それがこの町で行われるんで俺はライバル潰しをしていたってな訳だ。」

「その狩りが行われると言う根拠は?」

「烏天狗を使って調べたんだ。間違いがあるとは思えない。」

「一体誰がそんな事を…」

「さあな。でも、これだけは言えるぜ。この仕事は命懸けだ。こんな大規模な仕事がある時は大体依頼を受けた人間の半分が…死ぬ。」

「参加する為の条件は?」

知らない内に言葉が口からこぼれ出ていた。

「ご主人⁉」

「ご主人様⁉」

「受ける気か?」

「僕には目的がある。絶対にやらなきゃいけない、目的が…」

「死ぬかも知れねえぞ?」

「死なないさ。絶対に。言ったはずです、絶対にやらなきゃいけないって…」

男は少しこちらの顔を伺った後、突然、突飛な事を言い出した。

「はははは‼そうかいそうかい。良いね、気に入った。…力を貸そう。俺とお前で組めば生き残る事はできるだろうぜ。」

「「なっ‼」」

「何?」

「聞こえなかったか?俺とお前で手を組むんだよ。シングルプレイよりマルチプレイの方が難易度は下がる。自明の理だ。」

「は、はあ…」

「よし、そうと決まれば俺とお前、明日から修行だと思えよ。坊主!」

「「「訳が分からない。」」」

かくして、敵の次は味方となった烏天狗の使い手と共に何やら狩りをしなくちゃいけないらしい。

何だか、大変な目に遭っているのでは無いだろうか?


しかし、僕達は気付いていなかった。

マルチプレイのデメリットを、狩りが、黒い影を連れてくる事を…


こんばんは。片府です。

皆さんに一つお知らせがあります。

私は一介の学生であります。

学生が必ず通る道、そう期末テストが今日から開始します。

ですので皆さん、私、片府は試験の為に四日間程お休みを頂きたいと思います。

私が試験をしている内に私の作品がいつの間にか、忘却の彼方に行ってしまう事、それが私の不安です。

ですが!私は待ち続けます。

皆さんがいつか、この狐の事情の裏事情のページへ戻って来てくれる事を…。

では皆さん、私が投稿するその日まで、頭の片隅にでも置いておいて下さい。m(_ _)m

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