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東方風雲観察誌  作者: カップワードル
風は雲を運ぶ
5/55

天狗の風

ろうどう じごく


※某作品の装備品と被ったため改変しました。

………


…………


あれから私は延々と飯綱様の説教を聞かされた。

罰としてその後しばらく私は雑用の用務となった。

薪を集めたり、食事支度をしたり、物を集めたり、警備したり……

やっている事は天狗の普通の仕事に変わりない……が、


量だ。明らかに量が違う。

一日に薪は500本、食事はほぼ全員分、

武器や道具に至っては、ほぼ全て私が手入れしているのだ。


そして驚くべきは勤務時間である。

朝3時から叩き起こされ、寝る時間は夜12時……。

たった3時間しか眠れない。地獄だ。


ただ食事だけは普通の天狗より多めとなった。

食事だけは普通の天狗よりも良い食事かもしれない。

食事の時間だけが唯一安らぐ時間である。美味しいし。


勿論、人間の観察など、出来るはずが無かった。

私としてはそれが心残りであった。


おかげでどうだろう。目の下には深い深い紫のくまができた。

どんな悪人も顔負けなんじゃないかしら。


そして今日も地獄の労働日が始まろうとしていた……。




■■■




「時間だぞ!!晄!!」


飯綱様の叫びが山にこだまする。

……んあ?も……もう起きる時間?

一日ずっと休める夢を見ていたのに……。空っぽの頭に叫びが響く。


「晄ッ!!」


重い重い体をなんとか揺り起こす。

うぅ……じゃあ今日も一日頑張ろう(働こう)……。

「はっ……はい!ただいま~!」

情けない声から私の一日は始まる。


「晄よ、まずは……」

「掃除ですよね……?」

「うむ、5時ほどには全て片付けておくように」

「いつもながら厳しい……」

「案ずるな、妖怪だから死にはせん」

飯綱様が涼しい顔で恐ろしい事を言う。

これならはっきり言えば死んでいた方が楽な気すらする。


こうして天狗の山の掃除が始まる。

天狗達のゴミはまとまった所にあるので比較的楽だが、

山全てを片付けるはめになるのだ。結局きつい。


「全てを~やり遂げるその日まで~

私負けない、負けないわ~」

そんな歌を口ずさみつつ山の掃除を行う。

きつくはあるが大分慣れた様な。……慣れとは恐ろしいわね。


しかしここで挫けてはまずお話にならない。


「うむ、あらかた片付いておるな」

「へい」

「では他の天狗を起こして来るのだ」

「へい」


こうして日課その2、天狗起こしが始まる。

一見簡単そうに見えるがこれはかなり大変だ。

何せ寝起きの悪い奴は攻撃してくる場合もあるし、

てこずっていると眠ってしまう天狗、とよりどり緑である。

無垢な寝顔(時折暑苦しいのもいるが)に凶悪な攻撃がお見舞いされるのでどうにも慣れない。




「ぎゃああぁあぁぁっ!!」


今日も天狗のねぐらに私の悲痛な叫びが聞こえたであろう。

でもこんな叫びをあげても眠りに貪欲な奴は起きなかったりする……。

私だって、寝ていたい……。


「晄、おはよう」

起きた天狗が話しかけてきた。

寝起き攻撃してきた天狗の一人である。

がそれしきで私は根にもちはしな……するかも。

「おはよう」

「今日も仕事?大変そうね……」

大変?うん……大変。

しかしそれを言って何が変わるのか、いつしかそんな声は出なくなった。


代わりに出てくる言葉は……『死ぬかも』まぁ何とか生きているけど……。


「大丈夫よ、じゃなくて大丈夫じゃない」

性格なのかなんなのか、大丈夫と言いそうになってしまう。

そう言おうとする自分が怖い。何を考えてるのかしら……。


「じゃ頑張ってね!」

高く軽い声が響く、私の頭に。

しかしこう言った交流こそ私の安らぎの一つなのだ。

体の痛みなんてェ気にしないィ!



「では次、薪割り!!」

日課その3、薪割り。

腰をしめ、力を抜き、そして斬りやすい所に斧を下ろす。

実に単純にして移動も無く楽に見えそうだが

長くやっていると腰や腕に痛みが来る。しかも量が多いので必然的に長くなる。なので慣れても体力が続かない……。


朽ちた木、大小問わず5本を一日に500本ほどの薪にする。

他の天狗もこれを行うが量は私の20分の一ほど。

しかし考えていても木は消える訳でも無し、

たた斧を降り下ろすがのみ。現実はァ……厳しい……。


「今日も大変だな……」

薪割り仲間の天狗が話しかける。

相手も汗が凄いがこちらもきっと凄いに違いない。

汗がどうとか考えていた

時期もあったが考えていても木は(以下略)


「気……気遣いどう……もっ!」

「もうすっかり薪割りが板についたな」

「嬉しく……ない……わっ!」

「だろうなぁ…」

板についた……?私がもう板につきたい。

しかしこんな事を考え(以下略)



「ふむ、今日もここまで来たか。

では次は武器、道具の手入れを頼む。

それが終わればお前の望む食事の時間ぞ!」

「はい!」


次の次は食事の時間である。ようやく食べる時間が来る…前に

日課その4、武器道具の手入れである。

これは使い方を間違えなければ一番楽である。


まずは道具だ。

道具と言っても色々ありすぎるが、大体は少しいじる程度で済む。

稀に壊れている物、無くなった物もあるが、

代えは別の天狗からもらうので非常に楽である。



□□□



「さてあらかた片付いたわね。次は武器……ね……」

少し声を落として話す。


問題は武器だ。これはうっかりすると斬れたり刺さったり酷い物は毒があったりする。解毒剤や傷薬はあるが、使わないにこした事はない。

慎重に手入れしなければ……。私は布を持ちゆっくりと手入れを行う。


「痛っ……」

刀の刀身を拭いていると微妙に刀が指をかすめる。

そこからは血が出てきてしまった。仕方ないので傷薬を使用する。

ふと見ると私の手は包帯まみれだった。

うーむ私ってドジだなぁ……。薬箱とはもう顔なじみである。

箱寸法全部いえます。


最後は飯綱様御愛用の刀『風断ちの太刀』を磨いて拭く。

これは実によく斬れると言う事で、かなり警戒して磨ぎ、拭かなければならない。私はまだ、この指とオサラバはしたくない。


しかもトチれば飯綱様のお説教はまず確実。

なのでこれは失敗できない。わかっていることだけど。



□□□




… … … …上手く終わったかしら……?

きらきらきららと刀の刀身は輝いていた。

幸い、刀に血がつくことはなかった。良かった……。


さて!食事だ!食事だ!

私はちょいと小躍りしながら、飯綱様に向かう。


「うむ!待ったであろう?食事だ!」


飯綱様のその言葉を聞き思わず跳び跳ねる。


「いやったぁ~!!!」


脇目も、振らず食堂へ。まず食堂へ。とにかく食堂へ。そして食堂へ……。



机の上の料理を見て思わず笑みと涎が溢れそうになる。


今日の献立は、焼き鮭小魚の佃煮、味噌汁、山菜の詰め合わせ、野菜の詰め合わせ、豚の炭焼き、納豆玄米ご飯……

とかなり豪華である。味は濃いのが多いが、旨いので気にしない。


食っている時と苦しんでいる時、生きてるって感じるのよね……!



して、当然の如く必然に無論平らげる。量が多い?すぐ胃の中に消えるわよ。ふぅ~…お腹いっぱい、夢いっぱい、んでもって元気いっぱいね!



さて日課その5は警備である。

何者かが侵入しないかいつも目を光らせなければならない。

場所は決められているが、定期的に移動するので食後だとそれなりにきつい。


「お、晄!」

「あら、文」


親友こと、文が飛んで来た。文は実はこの山には住んでいない。

集会や仕事、私との約束や飯綱様の召集の時にしか来ないのだ。

私も時々文の方に行き仕事や話し合ったりする。

確か文は東の方の妖怪の山だった様な……。


「調子はどう?」

「見ての通りよ」

「良さそうね」

「この目のくまが目に入らんかー!!」

「さて、飯綱様は?」


相変わらず綺麗にかわされる私。飯綱様……?

何かあったかな?


「多分今いるわよ?」

「そう。じゃあ失礼するわ」

「ちょっと待った!」

「ん?何よ?」

「能力比べでもしない?」

「今?」

「多分急用じゃあないでしょ?」

「まぁ、ね……」


文が構える。これは能力を比べるだけである。

文は風を操るが、私はどうだろう、よくわからない能力である。

それを今からご覧に入れましょう!


「それっ!」


文が疾風を吹かす。次は私の番ね……。


「えいっ!」


… … …

雲が早い勢いで流れ、散っていった……。

そう、恐らく私の能力は雲を動かす能力……なのだがよくわからない。

途中で雲が散ってしまうのだ。つまり……何も起こらない。


「ん~晄の能力はよくわからないわね……」


文も首をかしげる。私も、同じく首を傾げざるを得ない。


「う~ん……風を使うけど文みたいにはできないのよねぇ……」

「……じゃあ先にいくわね。仕事、頑張るのよ!」


文が声をかけて通り過ぎて行く。

う~ん、なんなんだろう、私の能力は……。謎は深まる……。


そうこうしている間に警備の時間が終わる。


「晄!」

「ん?今日は何?」

「今日は山菜とキノコをとってきてくれ詳しくは書に記しておく」

「わかったわ!」

「じゃあなるべく早めにね。頼んだよ!」

「まかせなさい!」



さてと、ゼンマイ、ワラビ、シイタケ、マツタケ、ナメコ……と


「今日は大分楽ね……」


日課その6、もの探し。食料を主とし、言われた物を探す。

食事係や武器道具の整理をしている奴から話を聞いてそれを持っていく。

見つかるか見つからないかはその日によって異なるのでこれが一番大変なのである。最悪見つからないこともあるのだから。



「……っとワラビとゼンマイ見っけ!数も……よし!」

根本をポキッとな……と。

こうしないと生えてこないのよね~。注意注意……っと。


「おっ朽ち木もあった!」


朽ちた木に近寄る。木の裏にはぎっしりとナメコが群生していた。

そしてそのすぐにしいたけを見つけた。おっ生えてる!

ナメコと椎茸を入手!これで後は……松茸ね!


松の木……松の木っと……おっあった……!その下に……

よし!あった……!これで山に帰れる……!

頬が緩む。私は妖力を使い、すぐに里へ飛んでいく。


こうして大体の用事が終わった。

一日が終わる……そう思うとどうしようもなくホッとする。



「よし晄!夕食の時間だ!さっそく料理に取りかかろう!」


食料係兼料理係の天狗が叫ぶ。そして私も前掛けをかけて、台所へ飛んでゆく。


「はいはいただいま~」


こうして台所と言う名の戦場を共にする戦友と共に……


いざ!料理大戦開始!




……言ってみたかったのよ。


さて日課その7、夕食である。

最初は私は雑用だったのだが、何故か途中から本格的に料理するのは私になってしまった。おかげで山の天狗の殆どの料理は私が作る事となってしまった。


「晄!水少し多い!」

「はいはい!」

「竃の方は?」

「へぇ!ただいま!」

「野菜は、斬った?」

「あらよっさ!」

「もっと焼いて!」

「ほいさっさ!」


… … こんな感じに止まる暇がない。

多分きっと傍目からは私の姿がたくさん見えるに違いない。

「よしよし!大分できたな!味見味見……と」

「どう?」

料理を口に運ぶ。こいつは妙にこだわりがあって口合わないと作り直させられる。そのため料理も神経のすり減らしである。が、当然料理の腕は良い。舌が喜びます。


「よし!これなら良いや!料理を運ぶよ晄!」

「了解!」


こ……これで本当に後もう少しで終わるのね……!

そんな気持ちで料理を運ぶ。足は仕事で踊り疲れているが、心は自然と躍り続けていた。


「んぬ?できておるな!皆!!食事の時間ぞ!!!」

「「「「オオオオオオ!!」」」」


山が天狗の叫びで震える。いよいよ……来た!


私の日課その8。夕食である。

これであらかた終わった……。後は食器洗い、布団の準備である……。

……眠い……。

夕食を大体のものたちが食べ終わる。私も全てを食べ終わり

強烈な眠気が襲う。舟をこいでいるのが自分でわかる。

もう陸地から……はなれ……て……。


「うむ!晄!今日もご苦労であったな!」

「ありがとうございます」


… … … …


「ふむ……よく三週間耐えたな!これで罰は終わりだ!」

「… … … …」





■■■


「晄!

……晄?むぅ。寝てしまったか……。


…やれやれ晄よ、大百足を倒せるほどでなければならぬ?

…ふむ、この三週間で、体力は充分ついたはずだ。

そろそろ修業の頃合いであろう。


近頃は妖怪同士の派閥争いも多い。やつ程を倒せぬとあらば何も出来まい……」

「飯綱様!例の妖怪の話ですが……」

「うむ!今行く!……と文!」

「はっ」

「晄をねぐらに運んでやれ!」

「はいはい!」





こうして一日はくれて行く……。


若い頃は苦労を買えと言いますが買わせすぎましたかね?

今までにくらべると長いかも?

…と思ったんですがそうでもないという…。


追記、もっとリテイクしました。

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