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一話
一話
始まり
真っ暗な部屋のなか
耿耿たる蝋燭の揺らぎに
燭台と交わる私の影が
呼応する
閉めきられた部屋には
10の息遣いが
微かに動いている
私は前にある蝋燭の火を
手にしていた木の枝に
わける
僅かな衣擦れをたてて
立ち上がり
辺りに立てられた蝋燭に
その火を移していく
次第に部屋が
姿を現してゆく
40畳程はあろう部屋
その造りはフロアリングに
毛氈が敷かれ
家具はロココ様式で
統一されている
全体的に金をあしらった
部屋に蝋燭の火が
鈍く反射する
その中で100本の
高さ7~80cm程の
赤い燭台と蝋燭が
存在をもて余した
私は目の前にある
最初の蝋燭を
吹き消した