『野菊と紋入りのプレスマン』
昔、雫石の里に、野菊という、何とも美しい娘がいた。気立てもよく、読み書きそろばん裁縫だけでなく、速記ができるということで、嫁のもらい手が引きも切らなかった。結局、雫石の殿様にお輿入れとなり、仲むつまじく暮らしていたが、あるとき、野菊は、お殿様の前で、お尻のあたりから気体を放出し、その際に音を発してしまったことから、殿様の御不興を買い、お城を追われることになった。
数年の後、鷹狩りにお出かけになった殿様が、城下をお通りになると、子供が、黄金の実るふくべの種を売っているのを見かけた。おもしろいと思って、殿様が、これ小僧、そちの売るふくべは、確かに黄金が実るか、と尋ねると、間違いないが、これまで屁を放ったことがない者が植えないと、黄金はならない、と言うので、殿様は、ばかを言うな、生まれてから屁を放ったことがない者などあるわけがない、と笑ったので、子供は、居住まいを正して、ならば伺います。殿様は、なぜ、我が母に暇をとらせたのでしょう、と言うので、何か母から渡されたものはないか尋ねると、九曜の紋入りのプレスマンを差しだしたので、我が子であることがわかり、泣いてわびた後、高らかに笑い、野菊と子供を城に呼び戻した。
教訓:出物腫れ物というやつである。




