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グミ

作者: せおぽん

深夜2時、昼間のストレスと空腹で目が覚めた私はコンビニに向かった。


グミで小腹を満たそうと考えたからだ。


グミをひとつ取って、レジに向かうと事務所から出てきた不機嫌そうな店員が対応してくれた。休憩中だったのだろう。


会計を済ませた後、レジ横のおでんを一瞥する。私はコンビニのおでんが苦手だ。この店の客の視線を浴びたおでん。この町の視線を浴びたおでんは、なにか視線を注いだ人々の情念を煮込んだように思えるからだ。


コンビニ店員が、さっさと帰れという視線を投げている。私はそそくさとコンビニを後にした。


家に戻り、グミを皿に開けた。ハート型の可愛らしいグミ。グラニュー糖がまぶされたソーダ味の青いグミ。


そのグミをつまようじで、グサリと刺す。

私は今日、彼氏に振られた。この悲しい心持ちをハート型のグミを生贄にして癒してしまおう。空腹もついでに。


かつて、私は振られる度にヤケ食いをしてしまいデブになるというダブルで痛ましい結果に悩んでいた。過去の失敗から産まれたのが、このグミによるストレス解消法なのだ。


ハート型のグミは私の嫌な気持ちの象徴だ。嫌な気持ちを噛み砕いて、飲み込んでしまうのだ。


つまようじに刺したグミを、パクリと口に入れる。グミにまぶされたグラニュー糖の甘さが頭をスッキリさせてくれた。舌でグミのハート型をなぞり、今回の恋の思い出を反芻する。ああ、最低な男だったと改めて認識できた。


「僕は乗り物が趣味なんだよ」と言っていたあの男。なんでもかんでも跨りやがって。まあ、いい。別れられて、ラッキーだと思うしかない。


私はガチガチと歯をならし、グミと恋の思い出を噛みつぶす。ハードグミは噛みごたえがある。柔らかいグミでは、うさが晴れない。ひとしきり噛み砕いて、ごくん。と飲み込むと心とお腹が少し満たされた。


グミは、まだ何粒もある。食べ終わる頃には、きっと心も小腹も満たされるだろう。



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