2017年9月9日(土)13時38分
2017年9月9日(土)13時38分
記念撮影の最中、土橋は目を真っ赤にして泣き続けていた。
その光景が珍しく、演奏を聴きに来ていた吹奏楽部の卒業生たちは、思わず笑い声を上げていた。
近くでは、瑠璃が熊谷君を慰めながら泣きじゃくる彼を見守っている。意外にも、その姿がとても愛らしく感じられた。
「千紗!」
振り返ると、今回は、満面の笑みを浮かべた瑞希が立っていた。
「どうだった? 満足した?」
「もう、最高っ!」
瑞希は間違いなく、純粋に音楽の喜びを感じ取っていた。
周りの同級生たちとも楽しげに談笑していて、その光景が何とも微笑ましい。
「先輩!」
隣の雪ちゃんが、何かに気づいた様子で声を上げる。
そこには、信二たちの姿が見えた。
*
急いで片付けを終え、トラックに荷物を載せたら、既に夕方になっていた。
信二たちと共に外に出ると、目の前に広がる夕方の空が、まるで私を夢から引き戻すかのように、鮮やかに視界に飛び込んできた。
その色は、何とも儚く、美しく、まるで一枚の絵画が空に描かれているようだった。夕陽は、まるで最後の力を振り絞るかのように、地平線に沈みかけており、その橙色の光が大地を優しく包み込んでいった。空の端には、微かに紫がかった雲が漂い、どこか切なさを感じさせる。
その景色の中、信二たちが私の前に並んでいる。信二は、空を見上げたまま、遠くを見つめるような目をしていた。彼の目には、何かしらの感慨が込められているようだった。
口を開いたその言葉は、穏やかでありながら、どこか遠くの世界を語りかけるような切なさが含まれていた。
「いい夕焼けだな。何か、特別な日って感じがする」
私は無意識に頷き、ふと心に浮かんだ思いを言葉にした。
「そうね。でも雲があるから、バーベキューはだめだね」
私がそう言うと、信二たちは一瞬、驚きの表情を浮かべた。その驚きに、私の胸はほんの少し温かくなった。
――そうか……。
私は、花火大会でもらった指輪にそっと触れながら、ふと大気君のことを思い出した。もう二度と、その優しい声を聞けない現実が、頭の中でくっきりと広がっていく。
そして、静かに彼の方へ目を向け、柔らかく微笑むと、私は震える声でそっと彼の名前を呼んだ。
「工藤君」
その呼びかけが、静かに、しかし確かに工藤君の耳に届くと、彼は一瞬、驚きの表情を見せた。その後、すぐに真剣な眼差しを私に向け直す。
その目には、深い理解が宿っているように感じた。まるで、言葉にできない何かをお互いに分かち合っているかのように。
「本当に今までありがとう」
私の言葉が、ほんの小さな音で空気を揺らす。その言葉に込めた思いを伝えたくて、私は少しだけ目を伏せた。
工藤君は一度視線を落とし、しばらくの間、何も言わずに静かに立ちすくんでいた。その後、ゆっくりと顔を上げ、穏やかな表情で言葉を紡いだ。
「こちらこそ、本当にお世話になりました」
その声には、確かな感謝の気持ちが滲んでいたけれど、それと同時にどこか吹っ切れたような、静かな強さが感じられた。
空は、時間と共に刻々と色を変え、橙色から深い紫へと移り変わっていく。まるで、私たちの別れを静かに包み込むように、夏の終わりを告げる風が三人を優しく撫でていった。
その風に吹かれるたび、私はその一瞬を、胸の中でしっかりと抱きしめようと思った。




