第一卷:龍淵遗誓(220〜280年) 第1章·機関鳶墜 第二回·刀劈密匣 ③地煞噬魂
(一)青銅の軌道が裂ける
残りの月が七殺のブラックホールの縁に吸い込まれ、川岸の砂粒一つ一つが高周波で震えていた。夏侯覇の魔刀が秦の始皇帝の馳道にある青銅の軌道深くに突き刺さっていた。饕餮模様からは黒金色の粘液が染み出し、それは彼が母親の胎盤で見た星図と同じ物質だった。曹獰の機械化された残骸が突然痙攣し、胸腔から歯車が噛み合わさる甲高い摩擦音が響いた――「龍淵」と刻まれた歯車が超回転している!
「将…軍…」曹獰の機械喉が曖昧な電子音を吐き出した。
「軌道が…再構成されて…」
言葉が終わらぬうちに、千年埋もれていた青銅の軌道がまるで生きている蛇のように動き、百丈(約300メートル)四方の地面を波打たせた。夏侯覇は軌道の隙間から無数の青銅の腕が伸びてくるのを見た。指節には紫檀の箱にあった「甲子」の文字が埋め込まれていた!
「司馬昭!」
魔刀が三本の青銅の腕を斬り落とすと、断面から蒸気時代の真鍮製歯車が噴き出した。
「嬴政の屍まで利用するとは!?」
応えるように地底から編鐘の轟音が響き渡り、その音波が血塗られた泥を凝固させ、12体の兵馬俑を作り出した――それぞれの心臓にはクローン技術で作られた心臓が鼓動していた!
(二)屍虫が心を喰らう
夏侯覇の縦長の瞳孔から突然黒い血が滲み出た。彼は曹獰の残骸が音波の中で再構成されるのを見た。脊椎から三丈(約9メートル)もの巨大な機械のムカデが這い出し、その千足には渾天儀の部品が仕込まれていた!
「将軍は知っているか…」
ムカデの頭が割れ、司馬昭のホログラム像が現れた。「この馳道は道ではない。龍淵星艦の発射軌道なのだ」
魔刀が腥い風を巻き起こすが、突然現れた青銅の壁にぶつかった。夏侯覇の「覇」の刺青が突如膨らみ、生きたムカデとなって肩甲骨を食い始めた。「お前の父が胎児を切り開いて星図を取り出した時、夏侯家が皆星艦の燃料だと話したことはあったか?!」
激痛の中、建安七年の記憶がフラッシュバックする:暗室の灯りの中で、父・夏侯惇の狼牙刀が弟の心臓を引きずり出し、その血肉がガラス容器の中で成長し、表面には青銅の軌道と同じ二進法のコードが浮かび上がっていた!
「つまり俺たち夏侯一族は…人型の蓄電池だったのか…」
夏侯覇の残忍な笑みが血泡と共にこぼれ、魔刀が突然分解して粒子状の光刃となり、大地に突き刺さった!
(三)血鼎の幻境
地核の奥深くからドラゴンのような金属の悲鳴が響いた。七殺のブラックホールが突然特異点に収縮し、夏侯覇を時空の裂け目に飲み込んだ。彼は九嵕山の血鼎の縁に落ち、若い頃の父・夏侯惇が諸葛亮の羽扇を鼎の中に投げ込む姿を見た。そして鼎の中で沸騰しているのは――なんと自分自身のクローン体だった!
「覇よ、これが夏侯家の宿命だ」
夏侯惇の片目からオイルが滴り落ちていた――それは義眼だった!「光武帝が白蛇を斬った時から、我らは龍淵計画のために肉体を育ててきたのだ…」
幻影が突然歪んだ。鼎の中から司馬昭の声が響く。
「令尊が言わなかったのは――お前の弟こそ主燃料であり、お前は…保険糸だ!」
12体の機械化された兵馬俑が鼎を破って飛び出し、手に持つ戈矛からレーザーを放ち、夏侯覇の背中に新しい星図を刻み込んでいく。
「保険糸?」
夏侯覇の粒子刃が兵馬俑の頭蓋を貫通し、「龍淵」と刻まれたチップを引き抜いた。
「ならば天地を焼き尽くすまでだ!」
七殺の星図が突然実体化し、血鼎を溶かして鉄の液体に変えた。彼はその液体金属の中に2049年の火星戦場を見た――自分のクローン体が司馬家の末裔によって星図チップを埋め込まれていた!
(四)龍淵の初鳴
夜明け前の最も暗い瞬間、川岸の地割れから幽かな青い放射線が噴き出した。夏侯覇の魔刀は完全に量子化され、振り下ろすたびに時空を引き裂いた。紫檀の箱の破片が放射線の中で再構成され、一艘の星艦のホログラム投影が現れた――船首には初代巨子の甲骨文で書かれた「龍淵」という銘文が刻まれていた!
「なるほど…」夏侯覇の機械左目が星艦の設計図をスキャンしながら狂ったように笑った。
「諸葛亮が燃やしたのは図面ではなく、燃料の配合だったのか!」
彼は逆手に自分の心臓を貫き、黒い血が青銅の軌道に飛び散った――それは反物質触媒だった!
全長の馳道が突然輝きだし、川の水を蒸発させてイオン霧に変えた。12体の機械兵馬俑が強烈な光の中で跪き、胸腔内のクローン心臓が同時に轟音を上げる。「適格者を検出。龍淵星艦の起動カウントダウン開始:900年…」
最初の陽光が放射線雲を突き破ったとき、夏侯覇はすでに量子状態に変わっていた。彼の最後の意識の中で、司馬昭の溜息が聞こえた。
「惜しいな、この駒は甲子年まで生き延びるべきだったのに…」