第一卷:龍淵遗誓(220〜280年) 第1章·機関鳶墜 第二回·刀劈密匣 ①血渡乌林
烏林の渡し場では、川の水が錆びた鉄のような暗い赤色に染まっていた。夕陽が葦原を血の海のように照らしている。夏侯覇、九連の金背刀が七人目の蜀軍斥候の胸を切り裂いたとき、刃の上の狼の牙模様が噴き出す鮮血を貪欲に吸収していた。37歳の曹魏の猛将は上半身裸で、筋肉隆起した背中には饕餮の刺青があり、その一本一本の傷跡が黄巾の乱から漢中の戦いまでの殺伐を物語っている。
「将軍!北東の角だ!」副将の曹獰の叫び声が夕暮れを引き裂いた。
この墓荒らし上がりの荒くれ者は顔中に火傷の痕があり――三日前、諸葛亮の連弩の燐火弾が彼の顔の半分を焼いてしまったのだ。夏侯覇が声の方を見ると、一騎の蜀軍が浮氷を踏み砕きながら馬で駆けているのが見えた。その男が背負う紫檀の木箱からは幽かな青白い光が漏れ出し、箱の角には太平道の「甲子」の符が刻まれていた。
「止めろ!」夏侯覇の怒号が枯れた葦の上に積もった霜を震わせた。
20人の鉄鷂騎が弓を構えるが、矢は不思議なことに目標を避けて空中で北斗七星の形に交差した。夏侯覇の瞳孔が急に縮んだ――これは諸葛家の「璇璣引箭術」だ。本来、これは五丈原で諸葛亮と共に埋葬されたはずの技ではないか!
紫檀の箱が突然馬から跳ね上がり、空中で蓮の花のような形に開いた。箱の中の羊皮紙の地図が風に膨らみ、張角の手書きによる「黄天当立」という血文字から黒い霧が立ち昇り、三体の顔のない死体が魏軍に向かって襲いかかった。夏侯覇の「地煞令」の玉佩が急に熱くなり、胸甲から白い煙が上がった。
「太平道の生贄装置だ!曹獰、地載陣を敷けええ!」
「了解!」曹獰は腰から五帝銭を取り出し、それを地面に投げた。
銅銭が罫を成し、血と泥の中で「山風蠱」の凶兆を示した。
20人の鉄鷂騎が刀を地面に突き立てると、血が刃の溝を通じて二十八宿の陣形を描き出した。陣が完成した瞬間、夏侯覇は左腕の鉄製の護甲を斬り落とし、小臂に刻まれた「覇」という恐ろしい刺青を露わにした――それは12歳の時に父・夏侯惇が狼の牙で人血を混ぜて彫ったものだった。
刀が紫檀の箱に触れた瞬間、川岸全体が揺れ動いた。夏侯覇は、箱の底に嵌め込まれていた亀甲の破片が空に舞い上がり、「甲子」という文字が72本の血の線に割れるのを見た。黒い気が刀身を通じて血管に入り込み、耳元で建安七年の雨の夜の悲鳴が響き渡った――母が難産で苦しむ叫び声、父が産婆を斬る音、そして暗闇の中で生き埋めにされる赤子の微かな音……
「将軍、気をつけろ!」曹獰の鎖鎚が黒い気の一筋を打ち逸らした。
夏侯覇が正気に戻ると、自分の刀が副将の首元に構えられており、周囲の20人の鉄鷂騎は骨だけになり、紫檀の箱に向かって拝むように並んでいた。
「この箱…魂を吸い取ってる!」曹獰の片目が恐怖で飛び出しそうになっている。しかし夏侯覇は血塗られた羊皮紙の地図をつかみ取りながら、残忍な笑みを浮かべた。
「いや、これは七殺星を満足させているんだ。」