第一卷:|龍淵遗誓《りゅうえんいせい》(220〜280年) 第1章·|機関鳶墜《きかんえんつい》 第一回·|火鳶焚林《ひえん》 二、鳳焔焚天
二、鳳焔焚天
陸遜の白玉の冠纓が熱風で灰と化した時、彼は秭帰城の砂盤を羽扇で指していた。帳外が突然白昼のように明るくなる。親衛の絶叫と不気味な鳳凰の鳴き声が鼓膜を貫く。
「都督! 西の崖が...」駆け込んできた親兵が自ら燃え上がり、砂盤をひっくり返して倒れた。
陸遜は羽扇を軽く振るい、卓上の茶が氷錐となって火人の頭蓋を貫いた。帳外に出た彼の白い中衣がはためき、胸に刻まれた「太平経」の刺青が露わになる。
江と空の間に、三百六十条の炎の鳳凰が現れた。火鳳が通過する場所、江の水は沸騰し、十二の夔牛祭器が断末魔の呻きを上げる。陸遜は軽く笑い、胸の刺青をなぞった。
「諸葛孔明、その息子はお前より苛烈だ」玉佩を引きちぎると、破片から張角の幻影が立ち上った。
火鳳の嘴が中軍の軍旗を砕く寸前、十二の黒気江底から噴き出し、鳳凰の首を鎖で縛り上げた。崖の上では諸葛瞻が黒血を吐きながら、陸遜の軍旗が「蒼天已死」の太平道旗へと変貌するのを見た。
「つまり...」
少年将軍の爪が岩を削り、血混じりの破片が江に落ちる。
「父上が見たのは東呉ではなく、黄巾の残党だった!」
叫びながら衣襟を引き裂くと、胸に浮かんだ太平経の刺青が、「蒼天已死」の文字が刃物で切り刻まれていた。