表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/21

第二卷 第二章 量子烽煙

(一)神樹の驚魂


 三星堆(さんせいたい)三号坑を照らす探照灯が雨幕を貫く。諸葛青(しょかおう)の放射線測定器が突然鋭い警報音を発する。彼女は洛陽鏟(らくようさん)を握り締め、表示画面に跳ねる数値が300μSv/hから臨界値へと急上昇するのを見つめる。青銅製の神樹の枝幹は豪雨の中で幽玄な光を放ち、折れた金釵(きんさい)が木の頂点にある神鳥の眼窩に刺さっている。その釵頭の真珠からは黒金色の液体が染み出している。


「教授!三号神鳥の縦目が動いています!」


 助手の叫び声が雷鳴に混じって響く。諸葛青の機械義眼が突如過負荷となり、網膜には馬嵬驛(ばいえき)での豪雨の光景が浮かび上がる――彼女は756年の自分自身(楊貴妃)が量子嵐に引き裂かれている様子を見る。そして目の前の神樹は幻影の中で龍淵星艦の通信塔へと変貌していた。


「下がれ!」


 彼女は考古隊特製の電磁ネットを振り出すが、それが神樹に触れると同時に溶断される。金釵が突然赤ん坊のような啼き声を放ち、助手たちは血を滲ませた耳を押さえる。諸葛青の遺伝子ネックレスが急に熱を持ち始める――それは代々受け継がれてきた墨家の信物だ。


「跨時空量子もつれを検出。DNA一致率99.7%…」


 雨の中から馬蹄の音が響く。安禄山(あんろくざん)の機械重甲が時空の裂け目を踏み破り、陌刀(ばくとう)のプラズマ刃が雨幕を二分する。


太真娘娘(たいしんにゃんにゃ)驪山(りざん)に戻り、陛下にお仕えすべきです!」


 彼の機械脊椎が青白い光を放ち、潼関(どうかん)戦場の硝煙が裂け目から溢れ出す。


(二)潼関の天焚


 潼関城壁の狼煙(ろうえん)と量子砲火が交錯し、終末の光景を描き出す。夏侯燎原(かこうりょうげん)の魔刀が五体目の機械兵馬俑を斬り裂くも、刃がAIコアのチタン合金骨格に引っかかり動かない。


「クソッタレの諸葛家め……」

 

 彼は血泡を吐き出し、背後の七殺星図(しちさつせいず)は守備兵たちの魂魄を量子燃料へと変換している。


「将軍!地脈(ちみゃく)が我々の血気を吸い取っています!」


 副将の叫び声には涙が混ざる。燎原の機械左目が城壁を突き抜け、地底深くで眠る龍淵エンジンを見る――それは玄武門(げんぶもん)の変で亡くなった六十四体の屍骸を溶かして作られた反応炉だった!彼は昨夜見た奇妙な夢を思い出す――自分が九嵕山(きゅうそうざん)血鼎(けってい)の前で跪き、背後に七殺星図が司馬昭(しばしょう)のクローン体によって刻まれた二進法コードに侵食されている光景。


「轟!」


  諸葛青玄(しょかせいげん)機関木牛(きかんぼくぎゅう)が西門を打ち破り、牛の目に射出されたレーザー光が反乱軍を横掃する。彼の黒色の大氅はプラズマ火に包まれ、内側に刻まれた密かな甲骨文コードが露わになる。


「燎原!お前の脊椎第三節のボルトが……」


「黙れ!」


 燎原の魔刀が突然向きを変え、量子振動波が木牛を粉砕する。


「お前たち諸葛氏は司馬家よりももっと汚らわしい!」


 彼の瞳孔が突然拡散し、火星戦場のクローン体が自分の記憶チップを埋め込もうとしている光景を見る。


 地脈の裂け目から青銅製の巨大な手が伸び、燎原の腰を掴む。地核の深部から諸葛亮の声が響く。


「賢侄よ、夷陵(いりょう)血債(つけ)を返す時が来たぞ……」


(三)渾天の乱流


 長安城(ちょうあんじょう)の廃墟上空、司馬承禎(しばしょうてい)の量子渾天儀(こんてんぎ)は既に太陽のように膨張している。彼の青銅仮面に細かいひびが入り、その下から機械化された半顔が現れる。


李三郎(りさんろう)、あなたの盛世をよく見なさい……」


 渾天儀が投影する全息映像では、玄宗(げんそう)が亀甲を貴妃の胸布に押し込んでいる光景が映し出される。


「妖道!」


 李亨(りこう)龍泉剣(りゅうせんけん)が承禎の右肩を貫通するが、そこから飛び散るのはナノ粒子を含んだ黒い血だ。承禎の機械指が突然伸び、太子の喉元を掴む。


「殿下の夏侯(かこう)の血統は……ゴホンゴホン……実に優れた陣眼(じんがん)材料ですな……」


 渾天儀が突然制御不能となり、皇城全体を量子空間に引き込む。楊貴妃の金釵が虚空の中で分解され、再構成されて神樹の頂点に鍵として挿入される。承禎の頭蓋内で2049年の電子音が響く。


「時空アンカーがロックされました。転移カウントダウン:10、9、8……」


「いやっ!」


 李亨の絶叫と共に、承禎の仮面が完全に砕ける。司馬昭のクローン意識が機械化された頭蓋骨から現れる。


「李氏の小僧、玄武門の変が本当に偶然だとでも思っているのか?」


 太子の瞳孔には恐るべき真実が映し出される――当時、李世民(りせいみん)が佩用していた七星龍淵剣の柄には反物質起動装置が隠されていたのだ!


(四)墨血の星河


 洛陽(らくよう)天機閣(てんきかく)地下宮殿で、諸葛青玄の七つの穴から次々にナノ血液の滴が漏れ出る。青銅鼎上の「非攻」コードは夏侯燎原の量子血液によって腐食され、鼎内には初代巨子(きょし)の全息遺言が浮かび上がる。


「青玄よ、『兼愛』がエネルギー制約方程式であることを知っていたか?」


 少年墨者が突然石門を蹴破る。


「閣主!潼関……潼関の地脈が守備兵たちの魂魄を喰らっています!」


 青玄の機械腕が突然少年の喉元を掴む。彼の網膜には火星戦場のリアルタイム映像が跳ねる。


「私が唐室(とうしつ)を救っていると思っているのか?」


 彼の声は電子ノイズに混じる。


「私は2049年の……咳咳……人類の火種を救っているのだ……」


 驪山(りざん)の地宮方向から竜の咆哮が響く。秦始皇の青銅棺が虚空を切り裂いて現れ、棺内の巨大な機械の手が七星剣を青玄の胸に突き立てる。


「遺伝子認証完了。殲星モード起動。」


 中原大地全体が震え始め、黄河の水が逆流して量子裂け目に注ぎ込み、河床の下に隠された星間船渠(せんかんせんきょ)が露わになる――三千隻もの龍淵星艦の残骸がゆっくりと上昇していく!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ