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第一卷:龍淵遗誓(220〜280年) 第1章·機関鳶墜 第三回・铜雀噬星 ④噬星啓明

(一)量子の嵐


 九嵕山(きゅうそうざん)の空が引き裂かれ、青紫色の量子嵐が無数の毒蛇のように渦巻いている。司馬昭(しばしょう)は崩壊する山稜に立ち、機械の身体の回路模様が幽玄な青白い光を放っていた。その足元では沸騰する量子溶岩が広がり――三百の血鼎(けってい)から溶け出した青銅と童子の血が、山体の亀裂を通じて《河図》の経絡を描いていた。彼の機械右目は嵐を貫き、夷陵(いりょう)の方角の空が機関火鳳凰によって赤く染められているのを見た。


諸葛瞻(しょかつせん)、お前も結局遅かったな」


嵐に向かって独り言を呟く彼の声は、量子場によって歪められ、諸葛亮の音色となる。


司馬仲達(しばちゅうたつ)墨魂(ぼくこん)が熔炉で精製できると思っていたのか?」


虚空に突然羽扇(うせん)の残影が浮かび上がり、扇骨から迸ったデータ流が三体の機械兵馬俑(へいばよう)を貫通した。


 司馬昭の義肢が突如伸び、粒子状の光刃となって残影を粉砕する。


墨翟(ぼくてき)の亡霊に過ぎない!」


光刃の余波が山肌をなぎ払い、地中深く埋まっていた青銅星艦の艦橋が露わになる――制御台上には半分折れた七星龍淵剣(りゅうえんけん)が刺さり、剣柄の臥龍紋章からは諸葛亮の脳髄液が滲み出していた。


「公子!重力井戸(グラビティーウェル)が暴走しています!」


瀕死の司馬師(しばし)が断臂で艦橋の縁を掴んでいる。鬼面の兜の下では肉と機械が融合して怪物と化していた。


「反応炉が地核エネルギーを吸収しています……」


言葉が終わらぬうちに量子溶岩が逆巻き、彼を艦橋の奥深くに引きずり込み、悲鳴とエンジンの轟音が地獄の交響曲を奏でる。


(二)星間座標


 アナールハンの聖胎(せいたい)が嵐の中心に浮かび、朱雀(すざく)の翼から金属の羽毛が一枚一枚剥がれ落ち、内蔵されたナノセンサーが露わになる。嬰児の泣き声が暗号化された信号波となり、雲間に三組の星間座標を描き出す:


 N34°26' E108°52'(三星堆遺跡)

 火星オリンポス山(龍淵星艦の残骸区域)

 ケンタウルス座α星(量子ウイルスの発生源)


  「貴様こそが真の“天”字巻だったか…」


司馬昭の機械の指が聖胎の胸腔を貫き、発光する量子心臓を引き抜く。心臓の血管一本一本が光ファイバーケーブルであり、建安二十四年の諸葛亮の陰謀を映し出していた――白帝城の病床の下に隠されていたのは《出師表(しゅっしひょう)》ではなく、反物質反応炉の設計図だった!


 聖胎が突然目を開け、灰翳(はいえい)化した青い瞳がデータの渦となる。


「父はペルシャ湾でお前の到着を待っている」


純粋な雅言(がげん)が嬰児の口から吐き出され、量子心臓が放つ強烈な光の中でアルダシール五世(アナールハンの父)の全息映像が現れる。


「司馬仲達よ、お前が光武帝陵から盗んだ星図は……」


ペルシャ皇帝の弯刀が虚影を切り裂く。


「超新星爆発の放射線量を見誤ったのだ!」


 司馬昭の機械の身体が突然過負荷になり、回路模様が焦げて黒くなる。彼は狂ったように笑いながら量子心臓を艦橋の制御台に押しつける。


「それがどうした?!」


九嵕山全体が突然持ち上がり、山体の岩石が剥がれ落ち、直径百里(約300キロメートル)もの龍淵星艦の艦首が露わになる――それは秦の始皇帝(しこうてい)の十二金人を溶かして作られた星間エンジンだった!


(三)墨魂の覚醒


 諸葛瞻の機関火鳳凰が量子嵐を突き破ったとき、龍淵星艦の重力波が中原の半分を揺さぶっていた。少年将軍は火鳳凰の背に立ち、手に持つ矩尺(きょしゃく)が分解再構成されて粒子砲となる。


「司馬昭!この星艦の竜骨(りゅうこつ)が……」


砲口に集束した青い光が三体の機械兵馬俑を貫通する。


「墨家の初代巨子の脊椎を使って鍛造されたものだということがわかるか!」


 艦橋内の司馬昭が見上げて冷笑し、モニター越しに星艦の竜骨に刻まれた甲骨文字を見る――それぞれの文字から血が滲み出ている。


「あの老人の脊髄液のおかげで、エンジン効率が37%向上した」


彼は制御台の亀甲ボタンを押し、艦首から万本の青銅鎖が伸び、火鳳凰を繭状に縛り上げる。


「お前の父親の本当の姿を見ろ!」


司馬昭が建安二十四年の全息映像を再生する:病床の諸葛亮が墨家の矩尺を自分の天霊蓋(てんれいかい)に挿入し、抽出した脳髄液を星艦の燃料槽に注入している姿が映し出される。諸葛瞻の瞳孔が針先のように縮み、父親の臨終時の唇の動きを目撃する。


「瞻よ……龍淵を……壊せ……」


 量子嵐が突然静止する。アナールハンの聖胎の残骸が艦橋の舷窓の前に漂び、朱雀翼のナノ粒子が空中で凝縮して一文を形成する。


「彼は嘘をついている」


嬰児の指が軽く触れると、燃料槽の監視画面が突然変化――諸葛亮の脳髄液が反物質コアを腐食している!


(四)星河の逆流


 辰の刻(午前8時頃)の陽光が重力レンズによって環状に歪められる。司馬昭の機械の身体が炭化し始め、彼は過負荷の量子計器盤を見つめた後、突然狂ったように笑う。


「結局、我々は皆間違っていた!」


星艦エンジンの轟音の中で、彼は焦げた頭皮を引き剥がし、頭蓋骨に埋め込まれた三星堆の青銅仮面を露わにする。


「龍淵は決して星艦ではない……」


 仮面の縦目の部分から突然金色の光が放たれ、星艦全体が瞬時に量子化される。九嵕山の遺跡が突然盆地状に陥没し、龍淵星艦が西暦2023年の三星堆考古現場に出現する!三号坑を発掘していた考古学者たちは恐怖に震えながら青銅神樹が光を放つ様子を目にし、幹には司馬昭の幻影が浮かび上がる。


諸葛青(しょかつけい)に伝えろ。彼女の祖父の脳髄液は……」


 虚空中から突然巨大な機械の手が伸び、星艦を三国時代の時空に引き戻す。アナールハンの聖胎はこの瞬間完全に分解し、ナノ粒子が諸葛亮の意識の断片を包み込み、諸葛瞻が握る矩尺に注入される。


「瞻よ、墨魂は滅びることはない……」


 量子嵐が鎮まるとき、九嵕山には焦土だけが残る。司馬昭の青銅仮面は盆地の中央に嵌め込まれており、その裏面には新しい星間座標が刻まれていた。そして千里離れた夷陵の戦場では、夏侯覇(かこうは)の魔刀が突然鳴動し、刀柄には龍淵星艦の遷移軌道が浮かび上がる……

洛陽らくようの観星台で、少年・司馬炎しばえんは焦げた亀甲きっこうを拾い上げる。彼が自らの血でその甲面に刻まれた「人」字巻を活性化させた瞬間、西暦280年の星空が突如として2049年の火星戦場を映し出す――そこでは彼の未来のクローン体が龍淵剣りゅうえんけんを持った諸葛青しょかつけいによって斬り殺される光景が広がっていた。そして亀甲の裂け目深くでは、アナールハンの聖胎せいたい量子嵐りょうしろうの残存エネルギーを吸収しており、朱雀すざくの翼は次第に光年規模の星艦尾炎へと変貌していた……


(第一巻終)


三家の棋局ききょくは銀河文明の存亡をかけた戦いへと進化し、第二巻『烽火連城』(ほうかれんじょう)では安禄山あんろくざんの出自の謎と天機閣てんきかくにおける量子武学の起源が明らかにされる。



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