第一卷:|龍淵遗誓《りゅうえんいせい》(220〜280年) 第1章·|機関鳶墜《きかんえんつい》 第一回·|火鳶焚林《ひえん》 一、|機関起動《きかんきどう》
三国志を熟読している方、またゲームを楽しんでいる方なら、東漢末期184年の黄巾の乱から呉が滅国それぞれ建国するところまで96年間のストーリはよくご存知かと思います。各政権を支える武力値の高い武将たちがいろんな物語やゲームに登場したりして、後世にも高い人気があるようですが、その三国時代に活躍していた高い知恵を持つ知将たちのことは逆に詳しくありません。本書では、その三国を表から裏まで支える三つの大家族、魏の軍神と呼ばれる夏候淳、蜀の臥龍こと諸葛亮、魏の冢虎こと司馬懿が大活躍し、名門として成長、また互いに牽制し敵視しているところからのストーリを描くものです。後世の今、彼らの後代の関係はどうなっているでしょうか、現代において新たな物語が展開し、彼らの運命の歯車が静かに再起動しています。
一、機関起動
夷陵の夜空は固まりかけた朱砂を浴びせられたように暗紅色に染まっていた。諸葛瞻は焦げた岩陰に伏せ、風に乗って皮膚と硫黄の焦げた匂いが刺すように鼻を突いた。十七歳の少年は銀鱗の鎧を脱ぎ捨て、薄衣の下の脊椎が剣のように浮き出ていた。右手に握りしめた墨家の矩は、父・諸葛亮が臨終時に隕鉄で鍛えた秘器で、「兼愛非攻」の篆刻が紺碧の蛍光を放っていた。
「少将軍、東南風が変わる!」
副将の王勉は藤の鎧の亀裂から『墨子』の血染めの断片を覗かせていた。五旬を超えたこの元墨家の巨子は、今や蝦のように背中を丸め、焼け焦げた指で燃える軍旗を握りしめていた。
「三百の鳶陣が完成すれば、江の水も三寸は蒸発する...」
突然、諸葛瞻は老将の喉元に手を伸ばした。脈動する頸動脈の感触。少年将軍の瞳に映るのは対岸の赤い炎の波――蜀軍最後の防衛線を飲み込む朱色の津波だった。
「王叔、聞こえるか?」夢遊病者のような囁き。「陸遜の牛皮水車が江底の陰気を吸い上げている」
闇に牛の呻きが低く響き、江面に十二の青銅製夔牛の頭が浮かび上がった。王勉の濁った隻眼が見開かれる。
「張角の太平祭器だ! 建寧三年の鉅鹿の戦い...」
言葉が終わる前に、少年は舌を噛み切り、鮮血を矩の青銅枢機に噴きかけた。
崖の奥で雷鳴のような歯車の噛み合いが響き、三百六十体の機関鳶が羽を広げた。玄鉄の羽根に刻まれた「離火紋」が髪の毛ほどの細さで青白く光る。王勉が突然少年の腕を掴んだ。枯れ枝のような指が骨まで達しそうな力強さで。
「少主、いけぬ! この血で鳶を養う邪術は、お父上が五丈原で...」
「だからこそ司馬懿に敗れたのだ!」
諸葛瞻は老将を振り払い、矩の先端を掌に突き立てた。血の滴が機関鳶の核心にある隕鉄車輪にかかり、たちまち猩々緋の霧となった。五十人の墨者が同時に手首を切り裂くと、崖の裂け目から迸る蒼光が大空を引き裂いた。




