表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/21

第一卷:|龍淵遗誓《りゅうえんいせい》(220〜280年) 第1章·|機関鳶墜《きかんえんつい》 第一回·|火鳶焚林《ひえん》 一、|機関起動《きかんきどう》

三国志を熟読している方、またゲームを楽しんでいる方なら、東漢末期184年の黄巾の乱から呉が滅国それぞれ建国するところまで96年間のストーリはよくご存知かと思います。各政権を支える武力値の高い武将たちがいろんな物語やゲームに登場したりして、後世にも高い人気があるようですが、その三国時代に活躍していた高い知恵を持つ知将たちのことは逆に詳しくありません。本書では、その三国を表から裏まで支える三つの大家族、魏の軍神と呼ばれる夏候淳、蜀の臥龍こと諸葛亮、魏の冢虎こと司馬懿が大活躍し、名門として成長、また互いに牽制し敵視しているところからのストーリを描くものです。後世の今、彼らの後代の関係はどうなっているでしょうか、現代において新たな物語が展開し、彼らの運命の歯車が静かに再起動しています。

 

 一、機関起動(きかんきどう)


 夷陵(いりょう)の夜空は固まりかけた朱砂(しゅしゃ)を浴びせられたように暗紅色に染まっていた。諸葛瞻(しょかつせん)は焦げた岩陰に伏せ、風に乗って皮膚と硫黄の焦げた匂いが刺すように鼻を突いた。十七歳の少年は銀鱗(ぎんりん)の鎧を脱ぎ捨て、薄衣の下の脊椎(せきつい)が剣のように浮き出ていた。右手に握りしめた墨家(もっか)の矩は、父・諸葛亮(しょかつりょう)が臨終時に隕鉄(いんてつ)で鍛えた秘器で、「兼愛(けんあい)非攻(ひこう)」の篆刻(てんこく)紺碧(こんぺき)の蛍光を放っていた。


少将軍(しょうしょうぐん)、東南風が変わる!」

 副将の王勉(おうべん)は藤の鎧の亀裂から『墨子(ぼくし)』の血染めの断片を覗かせていた。五旬(ごじゅん)を超えたこの元墨家(もっか)巨子(きょし)は、今や蝦のように背中を丸め、焼け焦げた指で燃える軍旗を握りしめていた。


「三百の鳶陣(えんじん)が完成すれば、江の水も三寸は蒸発する...」


 突然、諸葛瞻(しょかつせん)は老将の喉元に手を伸ばした。脈動する頸動脈の感触。少年将軍の瞳に映るのは対岸(たいがん)の赤い炎の波――蜀軍最後の防衛線を飲み込む朱色の津波だった。


王叔(おうしゅく)、聞こえるか?」夢遊病者(むゆうびょうしゃ)のような囁き。「陸遜(りくそん)牛皮水車(ぎゅうひすいしゃ)が江底の陰気を吸い上げている」


 闇に牛の(うめ)きが低く響き、江面に十二の青銅製(せいどうせい)夔牛(きぎゅう)の頭が浮かび上がった。王勉の濁った隻眼が見開かれる。


張角(ちょうかく)の太平祭器(さいき)だ! 建寧(けんねい)三年の鉅鹿(ころく)の戦い...」

 

 言葉が終わる前に、少年は舌を噛み切り、鮮血を(きょ)の青銅枢機(すうき)に噴きかけた。


 崖の奥で雷鳴(らいめい)のような歯車の噛み合いが響き、三百六十体の機関鳶(きかんえん)が羽を広げた。玄鉄の羽根に刻まれた「離火紋(りかもん)」が髪の毛ほどの細さで青白く光る。王勉が突然少年の腕を掴んだ。枯れ枝のような指が骨まで達しそうな力強さで。


少主(しょうしゅ)、いけぬ! この血で(えん)を養う邪術(じゃじゅつ)は、お父上が五丈原(ごじょうげん)で...」


「だからこそ司馬懿(しばぎ)に敗れたのだ!」


 諸葛瞻(しょかつせん)は老将を振り払い、(きょ)の先端を掌に突き立てた。血の滴が機関鳶(きかんえん)の核心にある隕鉄車輪(いんてつしゃりん)にかかり、たちまち猩々緋(しょうじょうひ)の霧となった。五十人の墨者が同時に手首を切り裂くと、崖の裂け目から(ほとばし)る蒼光が大空を引き裂いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ