華恋の感
◇◆
こんな夜中にコンビニのレジに立っていても何もすることがなく暇でしかなかった。
大学の夏休みに入って東京から地元に帰ってきた私はずっと実家にいてもしょうがないので、少しでもお金を稼ごうと単発でコンビニバイトに入っていた。夜間に。
そして、なかなか客が来ないので眠りそうになっていた時に彼は訪れた。
半袖長ズボンにリュックを背負った彼は一直線にドリンクコーナーへと向かった。この時間に来客は本当に珍しいので、彼の様子を伺っていると、少し変に感じた。
目がずっと死んでいるような曇った瞳をしていることに気がついた。
私はよく人の目を見てしまう。フェチとかではないが、目を見ればその人の思惑がうっすら感じ取れるような気がしてついつい見てしまうのだ。
そして彼はメロンソーダとアイスクリームを持ってレジへやって来た。
よく見ると彼は身長はそこそこだが、とても幼く童顔に見えた。別にお酒やタバコを買っているわけではないので聞く必要はないが、もし未成年ならこんな時間に出歩くのは危ないので一応聞いてみた。
「年齢はおいくつですか?」
私の心配は意味のないものだった。
「19歳です。」
なんと同い年だったのだ。
私の大学にいる周りの男どもはもっとカッコつけていて、オシャレをしていて、the・垢抜けという感じだったので想像もできなかった。
「あ、同い年でしたか!
失礼しました。高校生くらいに見えたので補導されないように注意しようかと思いまして」
「いえいえ、よく言われるので。
ありがとうございました。」
何がありがとうなのだろうなんて考えながら、会計が済み、彼はリュックに買った商品を入れて帰る準備をしていた。その時だった。
コンビニに入ってきた時から思っていたが、リュックの中はほとんど何も入ってないだろうというほど凹んでいた。
気にはなったが、一応バイトという名の仕事なので、聞かないことにした。
しかし、買ったものをリュックにしまう隙にチラッと見えてしまったのだ。
"包丁が入っている"
本当に驚いた。さっきまで眠たかった目が一気に覚めた。殺人か自殺か、もはや想像もつかないが
こんな時間に出歩いている人なんてほぼいないので止めるなら私しかいないと思った。
警察に連絡するという手段もあったが、自殺という線もあるのでそれはやめておいた。
彼がコンビニを後にしたあと、私は店の裏にいた店長に早上がりしていいかを聞き、許可を得たので、急いで帰る準備をして彼を追いかけた。
◇◆
川の土手を歩いていた彼は意外とすぐに見つかった。彼に気付かれないように、隠れながら彼の跡をつけた。
川に誰か呼び出しているのか?
あの目の奥の光の無さはやはり自殺なのか?
もしかすると先ほどの年齢も嘘なのではないだろうか?
なんてことが頭をよぎりながら歩みを進めていると、彼は立ち止まり、ベンチに座った。
そして、メロンソーダをものすごい勢いで飲んだ後、アイスクリームを口いっぱいに頬張っていた。
これは自殺だろうな。
いつ飛び出せばいいのか考えたが結論はすぐに出た。包丁をリュックから取り出したらすぐに叫ぼう。
時刻は午前4時をすぎており、まだまだ暗い中、月明かりを頼りに一生懸命に目を凝らして彼の動きを見ていた。
そして、彼は食べ終わってからしばらくして、
遂に包丁をリュックから取り出した。
「ちょっと待ってください!!!」
今年一大きい声を出したかもしれない。
どうもーー作者のりっちーです。
なかなか怖い入りになっているこの作品ですが、これからどんどんニヤニヤするような描写が増えていくと思うので、ぜひみなさん期待して待っていてください!