5 ゼネコンの次は馬車
俺は異世界に転生した、転生と言っても異世界で生まれたわけではない、だが明らかに前世より凄く若返っている気がするのだ、転移とは前世と同じ姿で異世界に来る事だと思うから、推定だが年齢が半分以下に変わっている俺は転生と言って良いと思う、ケインさんに工場の説明をしていたのだが、ついでに流れ作業の事を教えてあげた
「すると何か、全部の工程を覚えなくても一部分を覚えれば良いのか、そして最後に仕上がるなんて、手分けした魔法のようなものだな」
全然違うけどそう思えるならそれでいい
「全部覚えなくて良いのなら覚えるのに時間はかからないな、良い事を聞いた」
ケインさんは総支配人のヨドルさんを呼んで
「またハヤトに教えてもらった、さっそくこれを基本に計画を実行に移してくれ」
ケインさんは今では大陸一の土木建設会社の社長、前世で言うゼネコンの会長と言っても過言ではないが、此のまま行けばその他にこの世界の自動車ともいえる馬車制作も独占してしまう事になるだろう、ケインさん夫婦は命の恩人ともいえるほど世話になった、幸せに成ってもらいたいとは思ったがこれほどになるとは思わなかったが、俺の思いが天に通じているようで嬉しかった、ケインさんは
「ハヤトは俺達夫婦の福の神だ」
口癖のように言うがそう言いたいのは俺の方だ、ケインさん夫婦のお陰で俺は今此処に生きているのだし、俺の知識を具現化して実現しているのはケインさん自身だ、俺は何もしていないでその恩恵を受けているだけ、申し訳ない気持ちでいっぱいだ
俺が錬金術師のルイスにコンベアの事を教えると、魔石を燃料にして回転するモーターのようなものを造った、そしてコンベアを実現してしまった、天才とはルイスのような者の事を言うのだろう、ケインさんは俺が天才だと皆に何時も言っているが、俺のは真似事であって才能でもなんでもない言われる度に恥かしい思いだ、参考になればとギヤと言うものも教えると、ルイスはその特性をすぐに利用していろいろなものに応用していた、工場内で重い物を持ち上げるチェーンブロックのような器具もその一つだ
ある日
「ハヤト、とうとう王家から注文が来たぞ。王家の馬車は王家専属の馬車職人たちが作っていたが、うちの馬車に性能の面で劣ってしまっているが、幾ら腕利きの職人でも追い付かなくなったらしい、元々ショックを和らげるコイルは一しか作れないからな、ヨドルの腕が凄いという事だ今迄ヨドルに嫌がらせをしていた奴らじゃあ真似もができないらしい、皇室専属の職人たちもねをあげたらしい、その為王家に献上しろと言って来たんだが断った、何の世話にもなっていないしこれからも世話になるつもりはない、ちゃんと税金は払っているんだこの上誰が献上なんかするか、商人ギルド長に断ったと言ったら笑っていたよ、別には犯罪にはならないからな」
「大丈夫なの、断って良かったの」
「昔だったら恐れ入って王様の要請とあらばどんな事でもしただろうが、今は違うからな、王様より使用人たちや庶民の方が俺にとっては大事だ、優先して作って献上せよなんて素直に聞いていられるか、王家御用達って言えば箔が着くだろうが、いまさらそんな事望んではいないしな」
「王命に背いたとか言ってこないかな」
「言ってきたら言ってやるよ、野盗より質が悪いってな、野盗は悪い事を承知で物を取って行くが捕まれば命が無くなるのだ、あいつ等だって命懸けでやってるんだ、それを何だ命令するだけでしかも届けろだとふざけるなと言いたいよ、それで断れば罪になるなんていったらおかしいだろう」
「それが王侯貴族なんでしょう」
「今の俺は王侯貴族より稼ぎが良いんだ、取引もこの国だけじゃない大陸中だ、そんな理不尽な命令に従っていられるか、うちの馬車が欲しかったら順番を待って金を払えってんだ、商会としてそれなりの税金を払っているんだからな」
何事もなければ良いのだが何だか胸騒ぎがした、商会には大陸格国の方々に支店がありその間を行き来する馬車の警護で、腕効きの冒険者達が多数専属として在籍している、それらが集まればちょっとした軍隊では歯が立たないくらいいるが、ケインさんが少し心配になった、貴族に平民の俺達の常識は通らないと聞いているからそう言う事にはなってほしくなかった
その日はのんびりと家でくつろいでいた、大商会の会長になってもケインさんは奢る事無く住居はそのままで住んでいた、俺も相変わらず居候として一緒に住んでいたが
「ハヤト、大変、ケインが近衛兵に連れていかれてしまった」
エレンさんが真っ青な顔で俺の部屋に駆け込んで来た
「えっ、どうして」
「王命に背いたとかで態々衛兵じゃなくて、近衛兵の部隊が商会に来て連れて行ってしまった」
「分かった、俺が何とかするから、心配しないで」
「何とかするって、いかにハヤトでも無理よ、ケインも意地を張らないで馬車の一台くらいくれてやればよかったのよ」
「そう言う事をケインさんの心情として許せなかったんだ、兎に角何とかするから」
心配するエレンさんを残して商会に向かった、俺は冒険者として一人動いているうちに誰にも言えないが魔法とは違うらしいある力がある事を知ったのだ、そんな力があるのではないかと思ってはいた、冒険者登録をするためにギルドに行ったときゴルドをやっつけた、その時は何かが違いと感じただけだったが、ある夜の事その力の謎が解けたのだ、今でも神様かどうかは分からない人が夢に出て来た
【お前が魔力ゼロなのは神力と言う力が宿っているせいだ、神力の前に魔力などと言う下等なものが入り込む余地などあろうはずがない、お前が強く願う事は必ず実現してしまう、心して使うように】
そう言われて
「何故俺なんですか」
そう聞くと
【神力はこの世界の人間の体では受け入れる事が出来ないが、千年に一度はこの世界に与えなければならない事になっておってな、異世界に来る途中受け入れられるようにお前の体を変えた、だからお前は若返っておるのだ、千年に至るまでに何度か神力の器として変えようとした人間は何人かいたが、全て死後の世界へと言ってしまった前世での善行が足りなかったのだ、だがお前だけは死後の世界へと消滅せず残ったのだ、前世で相当に徳を積んでいたようでな】
「俺の前世はどのような」
【其れは教え理訳には行かぬが、自分が決して幸せではなかったのに、見ず知らずの人間を助けて死んだそう言う善行があったからだ、詳しく知りたいか】
「はい」
【死んだときの痛みや苦しみも身をもって知る事になるが、それでも知りたいというなら教えるが」
「いえ、痛みや苦しみは知りたくないです、詳しくは知りたくなくなりました」
「そうだろう、それでだ、力はみだりに人に知られぬよう気を付ける事だ、必要と思った者にだけには教える事は許すがそれはおまえの判断に任せる、出来るならお前の前世の知識で良いから世を正す事を心がけてほしい、強要する事は無いがお前が生きて行くという事は、自然にお前の思う世界に繋がっているはずだ、くれぐれも力を心して力を使うように、良いな」
そんなお告げと言うか夢と言うかを見たのだ、今迄夢か現実かはっきりしなかった事がはっきり現実だと確信できるようになった、異空間収納や前世では空想だった事が実際に出来るのだ、想像以上の現実に密かに驚いていたのだった、ケイン歳夫婦が幸せになるよう心から願ったら、ケインさんは大商会の会長にまでなってしまったのも力が作用していたのだ、だからケインさんが王様に連れていかれても何んとか出来る自信がある、ケインさんが無事でいてくれとお強く思っているので、何があろうとケインさんにはかすり傷一つつかない筈だ、問題は人知れずケインさんを連れ戻す事、強引に連れ戻しても王命とあってはまた同じ事の繰り返しになり、間違いを正す事にならない、傲慢な王にお仕置きして二度とケインさんに手を出させない事、それしかないのだがどうすれば良いのか
「いちばん目立たないには、王様一人だけに俺の意見を分からせる、方法は直談判しかないな」
俺は神力で知識にある魔法と同じ事が出来るか試して見たが、あのお告げの通り本当に全て実現できた誰も知らない俺だけの秘密だ、その後は密かにそれらの力を上手に使得るように密かに修業はしていたのは誰も知らない俺の秘密だ、大勢の人間の前では力を使いたくない、王様一人なら知られても何とかなるだろうそう考えた
神力とは魔法と違い願えば成せる都合の良い力だ、俺がこんな世界は無くなってしまえ、自棄になってそう願えばこの世界は消滅してしまう。それほどに恐ろしい力らしいがこの世界がなくなったら俺の居場所が無くなってしまう、だから間違ってもそんな事は願わない
空を飛び王都に向かっている、王都には行った事などないが脳内にマップを使い向かっている、もともと俺はごく普通の人間だそんな人間が神力を授かったとしてもどう使えな良いのか、前世で読んだ異世界ものの小説の中に出てくる魔法の知識で真似事をするしかない、そもそも神力と言うもの自体が分かっていない、最上位の魔法よりさらに強力だろうとは思うが、どのようにどう強力なのかもわからない、だから小説に出て来た魔法の知識を真似る事しか出来ないが、それでも超便利な事に変わりはない、夢のような事が具現化出来て思う事が叶うのは非常に心強い