3 深く静かに
ギルドの気遣いのお陰で俺の大金収入に関しては噂にもならなかった、あの時時間が早く冒険者があの場に居なかった事が幸いした、ただゴルドを倒した事は噂になってそれ以来俺に絡んでくるものはいなくなった、何故か周りの出来事迄が都合良過ぎの感がある時が過ぎて行った、驚くほど速く建て増しが終わり俺専用の部屋が出来て、今迄以後ごちが悪かっらわけではないが一層落ち着いてくらせる気分になった、依頼は続けて何日も受ける事をせずに前世の習慣から、七日に一日休みを取るようにしている、サラリーマン時代と違い自分で決めてそうしているが、この世界ではまだそんな習慣は無い
「天候の加減で休むんだから、お日様が出て居たら仕事をしなきゃあな」
と言うのが常識らしい
ある休みの日朝起きて思った、考えてみたら俺は冒険者ギルドとケイン家の間しかこの街を知らない、そう思って家の近辺を歩いて見て回る事にした、今まで家の表側しか見て居なかったのでまず裏側に行ってみた、いくら辺境の地とは言え裏に回って見て驚いた、屋根越しには見えなかったが裏には家並みは何もなく少し先に林があるだけ、其の林の向こうは街を囲む高い塀が続いていた、塀ぬは上に昇階段があったので上ってみる塀の外は原野が広がっていた、そして塀の少し先に湯気が上がっている場所があるのが見えた、もしかしてと気になったが外側に降りる階段は無かったので、門まで行き外に出てその場所に行ってみると硫黄の臭いがしていた、それは間違いなく温泉で結構な量が湧きだしていた、彼方に山が連なって見えその一つが噴煙を上げる火山の様だった
「確実に温泉だな」
湯を観察してみたが相当高温なのが分かる、此の町の事は家とギルドの間と南門の向こうしか知らなかった、ケインさんの家は北側に有る塀の近くだから景色は外に出なければ見えなかった、だから何も知らなかったが、冒険者ギルドは街の中心部にあるから細距離を感じなかったが、ケインさんは街を横断して職場に通っているから大変なのだと気が付いた、それは余談だが俺の周りにまたも良い事が起きた感じがしてワクワクしている、温泉を確認して門に戻るとケインさんが立っていた
「何だ、何処に居って来た、今日は仕事は休みだと言いていたよな、その格好は仕事じゃないな」
「ええ、ちょっと気になる場所があったので見に言って来たんです」
「気になる場所とは何処の事だ」
「ケインさんちの家の裏の兵の上に登ってみたら、湯気の立っている場所があったのできになって」
「何だあそこか、厚いお湯が出ているが飲む事は出来ないし、あの周りは草も生えない毒の水が出ているだけだったろう」
「ええ、お湯が出ていました」
「あんなもの何の役にも立たないのにわざわざ見に行ったのか、ご苦労な事だな」
「そうだけど、それでちょっと聞きたいけどケインさんの家の裏の土地は誰のものなの」
「家から塀迄の空き地の事か、林の向こう側の事か」
「そうだけど」
「あの辺はどっちも誰のものではないぞ、あの毒の水のせいか野菜も育たないし、あの林の木だけが不思議に育っているだけだ、欲しい奴なんている訳が無いじゃないか、俺があそこに家を建てたのは土地がただだから何だよ、毒の土地をぎりぎり避けた場所にな」
そうか、この世界には温泉と言う概念は無いのだな、確かに飲んでも不味いし作物など育つわけがない、土地の所有者がいないなんて宝の山みたいなものなのに、これは面白い事になって来た
そう言えばこの世界にも風呂と言うものはあるが、風呂と言う概念がないから貴族の屋敷でも一部しかないようだ、俺も水に浸ししぼった手ぬぐいに似た布で体を拭くだけで過ごしている、温泉を見たら湯にまったりと浸かりたいと思う気持ちが抑えられなくなって来た
「温泉を掘ろう」
あの温泉が湧き出ている場所は塀が邪魔してそのまま使えないが、草木も生えないという事は地下の浅い場所に湯脈があると思われる、温泉の源泉に関する知識は無いが地下に穴をあければ湯が出るんじゃないか、単純にそう考えて休みの日に温泉を掘ってみる事に決めた、、ケインさんの家の近くを掘ってみる事にして地面を調べると固い岩盤ではなく柔らかそうだった、その夜ケインさんに俺の考えを話してみた
「あれは毒の水じゃあないのか」
「ええ、あのお湯に入れば疲れが取れたり傷の治りが早くなったり、良い事ばかりでの筈ですよ」
「お前、自分の事は何も分からないくせに変な事を知っているな」
変な事じゃないけど変な事なのかな
「俺にも分らないけど、入ったら気持ち良いそんな気がするんです」
「本当にそうなら誰か分かる筈だが、この街で知っている者はいないぞ、だからこの周りは毒がある言って嫌われた土地でな、俺が家を立てるまで見捨てられた土地だったんだ、何もなかったんだが俺が住むようになってから周りに家が建ち始めたがな」
「そうなんですね、あれは決して毒なんかじゃ無くて体にはいいお湯なんです」
「そう言う事なら裏を掘れば出て来るぞ」
「その掘るのが問題で」
「何だ、そんな事か、だったら簡単だ、俺がやってやる」
「えっ、どういう事ですか」
「実はな、俺は土魔法が使えるんだが、穴を掘るとか土を固めるくらいしかできないから、冒険者になっても使い道が無いし、農業にもあまり役に立たないから衛兵になったんだ、自慢できるような魔法じゃないから女房以外誰にも言ってないんだがな、地面に穴をあけるくらい簡単だぞ、其の湯舟って言うのは土を固く固めれな良いのか」
「お湯で溶けないように出来るの」
「出来るぞ、うちの食器は俺が作ったんだ、茶碗は水でもお湯でも溶けてないから大丈夫だろう」
俺は此の世界にも投棄の技術がありと思っていた、毎日の食事に使う食器は剣さんが作った物だなんて驚きだ
「食器が出来るならそれで商売できるんじゃない」
「土真魔法使いはこの辺じゃあ珍しくない、一家とは言わないが親戚に一人くらいはいるんだ、多少は商売になるかもせれないが誰も始めないという事はもうからないんだろうな」
魔法にも土地柄なんてあるのかは知らないけど、土魔法使いが珍しくないなんて凄い処じゃないか
「凄い、凄いじゃないですか、じゃあ、銭湯を造ってエレンさんと事業に始めれば良いじゃない」
「そんな事が商売になるのか、とんでもない事を言うな」
「いや、俺の考える通りだったらかならず商売になります、金を稼げますよ」
「まあ、お前の言うような事は金がかかる訳じゃないし遣ってみるが、衛兵は辞めるつもりはないぞ」
「すぐに辞めろと言う訳じゃないけど、良いと思ったら商売にすればと言う事ですよ」
「分かった、じゃあ、明日は休みだからやって見る」
あまり乗り気ではないようだが、土魔法が使えるとは渡りに船だ
翌日、興味が薄い割にはケインさんは休みを取ってくれた
「考えたらお前が来てから良い事続きだから、今度も良い結果になるかもしれないと思ってな」
まずは浴槽と周りが沼のようにならない様排水路を造ってもらった、二メートル四方の深さ一メートルの浴槽、固いコンクリと言うより陶器のような浴槽が出来上がったのには驚いた
「ケインさん凄い、凄過ぎる」
「この程度ならいくらでも出来るぞ」
褒められてうれしそうにそう言った
「次にこの辺にあなを掘ってみてください」
「穴をあければあの熱い水が出て来るぞ、良いんだな」
ケインさんがその場所に手を当てると、手の先の土が窪み上になって良きケインさんが其処から手を放しても窪みが深くなっていく、深い穴となって暫くするとプシュ~と言う音と共に湯気が上がり続いてお湯が吹きあがって来た、何この世界土建業者も真っ青じゃないか簡単に温泉が出て来た、先に作ってもらって置いた土管で湯を浴槽に流し込んだ、排水は塀の下を通って下水が流れていたのでそこに流すようにした
「こんなもんで良いのか」
ケインさんは簡単に言うが前世でなら何日かかる仕事が、たった一時間ほどで出来てしまった
「こんな凄い事を、ケインさんは凄いですね」
「だからこの程度の事の出来る奴はこの街には大勢いるぞ大した事じゃないよ、他人に言うなよ恥かしいから、こんな事で喜んでいたら笑われてしまう」
ケインさんは全く自分の力の価値を分かっていない、この世界にだって土木建築の仕事は合うはずだ、前世なら何十人分もの土木工事を一人でやってしまったのだ、使い方によってはこの世界を変える力かも知れないのだ
湯加減は暑すぎるのでこれをどうするかだが
「これじゃあ熱くて入れない、水があれば良いんだけど」
俺がそう言うと
「水ならうちで使っている水を引いてくればいいじゃないか」
「出来るんですか」
「かんたんだ」
土に手を当てると細い土管が出来上がり水源から浴槽まで続いていた、取り敢えず浴槽に手前に升を造ってもらいそこに水とお湯が入るようにした、その先を浴槽に落ちるようにし湯加減を見て浴槽に落とした、たまった浴槽を見て
「これで良いでしょう、入って見ましょう」
「俺も入るのか」
「当然です」
「裸になるのか」
「勿論です」
周りには誰も居ないので服を脱ぎ湯に入る、泣けてくるほど気持ち良い温もり
「わぁ~気持ち良い~」
「本当だなぁ~、こいつは気持ち良い病みつきになりそうだ」
「でしょう、これから毎日入れますよ、町の人達もこの感覚を味わったら、金を払ってでも入りたくなるとおもいませんか」
「そうかもしれないな、これは本気で考えなくてはいけないな」
その時
「これは何なの、どういう事なの二人で裸になって、ちょっと嫌らしいわよ」
エレンさんだった
「名か言うな、お前も入って見ろ、気持ち良いぞ」
「本当、でも本当に気持ちよさそうな顔ね、じゃあ私も入る」
そう言って服を脱ぎだした
「ちょちょ、ちょっと待ってください、ケインさんと二人だけなら良いけど俺がいるんですよ、服を着たまま入れば良いじゃないですか」
「何言ってるの、あんたは家族だからそんな事関係ないわ、ねっ、あなた」
「おう、そうだぞ、ハヤトは何を言っているんだ、早く入れ風邪ひくぞ」
あんたら羞恥心て物が無いのか
「ハヤトだからだからね、誰にでも私の裸を見せる訳じゃないわよ、ねっ、あなた」
「いや、そう言う事じゃないと思うけど」
「見たいなら堂々ともっと見れば良いじゃない、ほら~」
面白がって俺の前に来て立っていた、俺は風呂から上がれなくなってしまい、湯にのぼせてその後の事は覚えていない