1 始まり
ありきたりの内容ですが肩の凝らない爽快な内容に心がけています、暇つぶしに読んでいただけたら幸いです
前世の常識的な事は記憶にあるが家族構成は覚えていない、ただ職場では過酷な労働をさせられていた記憶しかなく社畜だったのだろう、前世の記憶があるのだから俺は転移者という事は承知している、魔物がいて魔法のある前世でよく読んだ異世界に良く似た世界に転移しているようだ、遠くに前世の中世ヨーロッパ風の街が見えるから、俺は海外など行った事は無いが映画やテレビで見た事風景だ、だからこの景色は夢でなければ異世界だとすぐに思った、夢ではない事は感覚で分かる
「本当に異世界なんてあるんだ」
ちょっと感動したが
「という事は俺は前世で死んだという事」
服装は服とズボンの他には何もない、服装から覗く手足が何だか若返っているような気がするが、記憶が曖昧ではっきりとは分からないがそんな気がした
「どうしよう、何も持って居ない、よく街に入るのに金が要るとかあったような気がするが」
異世界小説を思い出すとそういう場合が多かったが
「まぁ良いか、なるようにしかならない」
俺は結構いい加減な性格らしい、さほど悩む事なく街に向かって歩き出したが、大きな街らしく門も立派な門に見えた、門衛の人が立っていて俺を見ると
「あんた、旅の者か」
そう声をかけられてホッとした、何故かと言うと言葉が通じないかもしれないと冷や冷やだったのだが言葉は通じそうだ
「はい、そうだと思います」
「思いますって、自分の事だぞ」
「ええ、それが何も分からないのです」
「何も分からないって、お前、野盗にでも襲われて何処かを打って記憶喪失にでもなったか」
「それも分かりません」
「あちゃー、これはお手上げだ、しょうがない、ちょっとこっちに来い」
そう言って詰め所らしき所に連れていかれた
「ちょっと此処に座って待って居ろ」
そう言って奥に入って行ったが、暫くすると私服らしきものに着替えて戻って来て
「これからどうすると言ってもどうして良いか分からないよな、このまま放っておくのも気がかりだし」
少し考えてから
「俺の名はケインだ、自分の名前は覚えているか」
「はい、ハヤト、名前だけはどうにか思い出せました」
「ハヤトか、仕方ない俺はこれで上がりだから俺の家に来るか、飯くらいは食わせてやるし目途が立つまで居手も良いから」
見ず知らずの俺に何と優しい人なのだろう
「ありがとうございます、そうして頂けると助かります、何しろ何をどうして良いのかも全く分からないので」
「そうだろうと思ってな、これも何かの縁だ放っておけないから、ぼろ家だが雨風は防げるからじっくりこれからの事を考えよう、俺も力になる」
異世界は命の重さは軽く治安が悪く魔物がいるのだ、このままではすぐに死ぬ運命だっただろうが良い人に巡り合った、神様がいるとしたら感謝しかない、この世界での俺は案外運が良いのかも知れない、前世の俺は記憶からしても決して運が良いとは思えない、社畜的思い出が記憶の大半を占めている事からも分かる、この世界に来ても状況は運の良いものではなかったが、ケインさんに会った事で全くお先真っ暗だった未来が少し明るくなった
「帰ったぞう」
「お帰り、おや、お客さんなの」
ケインさんが出て来た奥さんに説明している
「主人から聞きました、どうぞ気兼ねなくいてくださいね」
夫婦そろって良い人達だ、仕事が見つかったらしっかり恩返ししよう、そう心に誓った
初めての異世界一日目の夜、これから俺はどうなるのかこんなにも親切にしてくれたケインさんご夫婦、こんな良い人達が幸せに成るよう心から願った、あわよくば俺にその手伝いが出来れば幸せだとも思った、小説の通りの世界なら俺は冒険者になるのが手っ取り早いだろう、明日は冒険者ギルドへ行ってみよう多分ある筈だからケインさんに聞いて見よう、そんな事を考えながら与えられた部屋で何時の間にか眠ってしまった
翌朝、ドンと言うもの音で目が覚めた
「何事だ」
言いながらケインさんが表に出たようだがすぐに戻って来たようだった
「エレン、御馳走が落ちていたぞ」
「何を馬鹿な事言ってるの、御馳走が落ちているわけないでしょう」
そう言って奥様エレンさんが玄関出て行った気配を感じた、すると
「本当に御馳走だわ、すぐにお料理するわね」
不思議な会話だと思いながら起きていくと
「起きたかハヤト、これを見て見ろ、どういう訳かうちの壁にぶつかって落ちて来た、神様からお前にプレゼントかもな、こいつは最高に美味いんだ」
雉に似た鳥を手に提げていた
「よくある事なんですか」
「いや、聞いた事もないな、御馳走が飛んで来るなんて運が良いよ」
この世界には冷蔵庫は無いからすぐに料理して食べなければ腐ってしまうだろう、だから朝から肉料理は重いと思ったが最高に美味かった
俺が居候になってからケインさんの周りは良い事ばかり続くと言われた、体の弱かったエレンさんが見違えるほど元気になり、ケインさんは職場で班長に昇格した、休みの日に俺と猟に行けば貴重な高価で獲物を狩る事が出来た
「ハヤトが一緒に住むようになったら良い事ばかりが続く、お前は強運の持ち主らしいな」
「いや、俺の運なんかじゃなくてケインさんの人柄がそうさせるんでしょう」
「いや、俺は今迄と何も変わっちゃいない、お前が家に住むようになったら急に変わった、俺には分る、お前は強運の持ち主だ」
「そうなの、だったらそう言う事にしておきましょう」
俺があの夜ケインさん夫婦が幸せになるよう願ったからそうなっている、一瞬そう考えたがそんな事がある訳が無い事は分かっている、だが不幸になったというよりはずっと良い、そう信じているならそう言う事にしておこう
ケインさんばかりではなく俺にも良い事と言うか不思議な事が起こった、冒険者ギルドに登録する為にギルドに行ったのだが小説によくあった、新人がギルドに行くと絡まれるそれが定番だったが、俺の場合もか絡んでくる奴がいたのだ、大柄なその男が
「冒険者と言うものを舐めているのか、手前のような弱弱しい奴が何しに来た」
「冒険者登録だけど」
「だから冒険者をなめんなって言ってるだろう」
「強くなくてもできる仕事があるだろう、俺はそう言うのをやるつもりだから」
「けっ、そう言う奴は冒険者とは言わねえんだよ、帰りな」
襟首をつかんで来たので振り払った、すると
「てめえ、生意気に、俺はいま機嫌がよくねえ、運が悪かったな」
そう言って俺に殴り掛かって来た、敵わない迄も大人しくやられるつもりはなかったし、そう言う奴が大嫌いなので正面から相手をしてやろう、怪我をするかこの世界の事だから下手をすると死ぬかもしれない、頭の中にそんな事が思いが過ったが奴の言う通りにする気は無かったが、結果は意外な結果に終わった簡単にやっつけてしまえたのだ、是枝政で俺は趣味程度だが空手をやっていた、ストレス発散の為であって大した技も力もなかったが、気合で大声を出し激しく体を動かすとストレスが解消されるような気がして、長年続けてはいたのだがそれがこの世界で役立つとは思っていなかったが、そのお陰だと思う、絡んできた奴を相手にしたとき相手の動きが遅く見えて、躱すしながら軽く打った積もりの掌底の威力がもの凄く相手は壁まで吹っ飛んでしまった、俺自身が呆気に取られるほどの威力だった
お読みいただきありがとうございました