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「ああ、そうだよ。ほら、これ俺のアカウント」
とニコラスはそよに自身のTikTokのプロフィールを見せる。今まで画面越しで見ていた人が目の前にいて、そのひとと話しているという事実にそよは興奮を隠せない。
「え、本当にベベ本人なの……?」
そよは目を丸くしてニコラスを見る。驚いて両手で口を覆いながら。他の来店客の目もあってあまり大声は出せないものの、そよは今にもキャーキャー叫び出しそうだ。本当に本人かと訊くこと自体が失礼にあたると頭の中ではわかっていたけれど。
「あ、これ私のアカウント……」
そよはニコラスに自身のTikTokの画面を見せた。イーブイのアイコンで、うさぎの絵文字のリスナーはそよだったのだ。ニコラスもこれで理解したのか、
「あー、よくコメントくれるイーブイのアイコンの子か! これで君のことは覚えた!」
と言った。今まで動画見てくれる子と実際に会ったことがなくて、と。そよはニコラスに自分のことを認知されており、嬉しさ半分と恥ずかしさ半分だった。