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心のままに書いた短編集

僕は、君を知らないし、君は、僕を知らない。

作者: RERITO

少し重たい...かもしれない....

「どうか、どうかそばにいてください」


 帰り際、近所のコンビニで知らない女の子が、僕に声をかけた。

 知らない学校の制服を着ているのが、印象的だ。

 髪はショートカットに切っていて、腕を掴んだ君の顔は必死な顔をしていた。


「あの....その....どちら様ですか?」


 僕は、とっさにそう聞いた。

 思ったよりも、可愛かったから...少しだけキョドってしまったかもしれない。


「ダメです。あなたは、あなただけは、どこかに行ってはいけません。」


 時刻は、夕方あたりだ。

 そんなことを、言われたら色んな人が気になってみるだろう。どこから、なんだ?うちは揉めか?とか、見てあの子...と、彼女の容姿を気にしている人もいる。


「すみません。周りの人に迷惑なので。どこにも行かないから落ち着いて。」


 僕は、意外と冷静になって声をかけていた。

 なにか...変な動作でもしたかな。


「でも....その、私は....」


「わかった。変なことは、しないから...」


 実は、トイレに行こうとしてたところをいきなり引っ張られたので流石に、動揺してしまう。


「分かりました....でも、あなたを見放しておくわけにはいきません」


 めんどくさい子だな。

 なんで。そんなに赤の他人の僕に付きまとってくるんだ。


「そうなんだ。でも、こんなこと、他の誰かにしたら流石に勘違いされちゃうよ?」


「あなた以外には、しないので安心してください」


 流石に、訳が分からなくなってきたな。

 なんだか、怖くなったので思いっきり腕を振り払って外へと出る。


 僕もいい歳した大人だ。こんなところを様々な人に見られたら、不審者と勘違いされるだろう。しかも中学生くらいの女の子だ。


「まっ...まってください」


 後ろから追っかけてくる声がする。いくら、可愛いからって中学生くらい欲情する人間じゃない。


「....はぁはぁ....はぁっ!!」


 駅の改札口を通り、男子トイレに閉じこもる。

 ここなら、誰もこないだろ。


 案の定....あの中学生も、後を追ってこないようだった。





 少ししてから、外の様子を確認する。


「誰もいないな....」


 僕は、静かに外へと出てきた。それにしても、なんだったんだ。あの子は...


 もしかしたら、まだあの子がいるかもしれない。僕は、心を落ち着かせる。


「大丈夫。大丈夫だから....」


 ゆっくり深呼吸をする。念の為、駅からは出た方がいいかもしれない。






 チリンッというベルを鳴らす。駅員さんがいない時に、鳴らすものならしいけど...こういうのは、普通フード店とかて貰うものじゃないか?


「あの、すみませんっ!!」


「あー、ちょっと待ってね。はいはい。ってさっき、急いで改札を通ってきた人じゃないかい?」


「そ、そうですけど....」


「全く、誰かに追われてるような形相だったようだけど....いや、変に口を挟むもんじゃないね。それで、なんだい?」


「あ、その....間違えて乗ってきちゃったみたいで」


「はぁ....さっきの感じで?ここは、便利な場所じゃないんだよ。全く、仕事だから、やるけどね」


「は....ははは....すみません。」


 僕は、そうやって会話してる間も、あの子がどこからか見ているんじゃないか?ってソワソワしてた。


 駅員さんが、はぁ...とため息をつく姿に、少しだけ苛立ちを覚えるが...冷静に...冷静に


「はい。キャスポタッチしてね」


「ありがとうございます。」


 ピコンッという音がなった。うん。早くここから、出よう。




 僕は、念の為....駅の周りを二・三周くらいすることにした。





「駅の中では、人が沢山いたのに...まるで、別世界のようだ」



 ガタンゴトン...とい音が、定期的に聞こえてくる。


 僕は、ゴクリと唾を飲む。やっばり、電車の音はなんだか、怖いな。




 車が明るい光を放ちながら僕の前を通り過ぎる。


 夜中だからか...視界が妙にボヤけている。僕は、後悔してるんだろうか。




 家族が僕の近くを通り過ぎる。


「ねぇねぇ!!今日のご飯は、オムライスが、いいなっ!!」


「そうねぇ....材料があったらいいわね。」


 僕は、その一組の家族を羨ましそうに眺めていたかもしれない。材料か....今晩は、なにを食べようかな。.....僕の好きな食べ物ってなんだったっけ?




「戻ってきたんですね」


 中学生の女の子が、僕の目の前にいた。

 反対側でどうやら、待ち伏せをしていたようだ。


「君は、なんで僕に構うの。どうか、そばにいてください。ってなに?」


「.....なんとなくです」


「そう....なんだ」


 なんとなくで、そばにいてください。なんて言われたくなかったな。


 若い子の考え方は、わからないな。


「じゃあ、僕は行くから」


 また....また、腕を掴んできた。


「離して」


「嫌です」


 なにを持って、なにを根拠に?


「もう一周しませんか?さっき、一人で一周してきたんですよね。なら、私も付き合います。」


「......そんなことしたら、僕が捕まっちゃうよ。」


「ほら、行きましょう。今度は、逆側から見てみたら、なにか、違う、変化があるかも、しれない、ですっ、よぉ」


 そう言って、彼女は無理やり僕の腕をひっぱる。

 僕は、仕方ないので彼女に引っ張られることにした。一周まわったら、きっとあきらめてくれるだろうから。





「なにか、悩みとか、ありませんか?」


「悩み?悩みなんて....ないよ。しいていうなら、君が悩みの種かな。」


「一本取られちゃいましたね」


 そんな一本いらないけどね。



 逆側から、駅の周りを回る。





「好きなものとかありませんか?」


「.....あったかもしれないし、なかったかもしれないし。あ、オムライスは好きだったかもしれない。」




 車が、通る。今度は、大きな黒い車だ。


「綺麗な黒ですね。光ってますよ。すごくないですか?」


「.....ゴキブリみたい」


「酷いですねっ!!」



 ガタンゴトンと、音が鳴る。


「おぉ!!こんなに、ここだと響くんですね。意外です。やっぱり、行ってみないとわからないこともあるんですね」


「怖いな。少しだけ....って思ったんだ。さっき」


「そうですか?こういうのが、いいかもしれませんよ?」


「変わった感性してるね」


「あなたこそ、変わってますよ」




 あっという間に、駅についていた。

 一人の時とは、違かったような気もする。


「どうですか?なにか、変わりました?」


「うん。そうだね....変わったような変わらないような」


「そうですか。変わったんですね。よかったです。」


「う....,」


 随分推しの強い学生さんだな。僕なんかと、一緒にいたら....なんだか...申し訳ない気分になるな。



「あのですね...さっきは、実は、勢いで...言ってしまって....」


「勢いじゃなかったら、あんな行動できないよね」


「あ....あははは.....私、あんなことしないんですけどね...普通は」


「........」


 小さな花が、駅の隅で咲いている。小さな...小さな花だけど、しっかりとしてるようだ。


「予備用のティッシュペーパーの真の中....」


「っ....!?!なんで、君なかに入ったの?」


「いいえ。コンビニの店員さんに調べてもらいました。そしたら、小さなナイフのようなものがあったみたいです。」


 ......


「死ぬつもりだったんですか」


「それは、間違えて...入れちゃったものだよ」


「ティッシュペーパーの中に?」


「たまたまそこにあったから、新品だっただろ?あとで取りに行こうとおもってたんだけど、君が取ってくれたんだね。ありがとう」


「トイレでなにをする気だつたんですか?」


「ん?普通に、トイレだよw」


「そう....ですか」


 そう言って、小さな小型のナイフを渡してきた。




「ごめんね。ありがとう。変なこと感じさせたよね」


「いいえ。別にそんなこと」




「なんか色々ありがとね。元気でたよ」


「元気がでたなら、よかったです」




「じゃ、またね。」


「......ええ、また....」


 僕は、そっとポッケにそれをしまう。いい子だったな。



 ふいに、腕を引かれる。



「.....っ!?!」


 女の子に、背中から抱きしめられていた。


「どうしたら....どうしたら、あなたはそうやって....どうやったら、いいんですか」


「.......」


「誰も.....誰も....どうすることができないじゃないですかっ!!」


「..........」


「.......なんか、言ってください」


「周りの人に、勘違いされちゃうよ?」


「また、そうやってっ!!」


 だって、そうやって、考えてしまうのだから...仕方ないだろうに....



「私は、言いました。どこにも行かないでくださいって、そばにいてくださいって....」


「言っていたね。」


「じゃあっ!!」


 ......この出会いは、最後だよ。あとにも、先にも最後だから....



「花でも、見に行こうか。まだ、駅に入ってないし...」


「えぇ.....」






 公園には、沢山の花が咲いている。色とりどりの花だ、


「どの色が一番好きですか?」


「全部かな。全部好きだよ。」


「そうですか」


 公園には、猫が彷徨いてる。毛並みがボサボサの猫で、妙に人懐っこくて、とても可愛らしい猫だ。


「猫は、好きですか?」


「あぁ...好きだよ」


「そうですか」


 公園には、子供がいる。今は、夜中だから...誰もいないけど...日中は色々遊んだりしている。


「子供は、好きですか?」


「めんどくさいところもあるけど、やっぱり好きだな。」


「そうですか。」


 ....なんとなく、少女は、会話を広げる気がないように思えた。


「世の中は、生きづらいですか?」


「大好きだよ。みんなが、幸せに生きてるじゃないか」


「.....じゃあ、なんで....」


「それ以上言わないでほしいな」


 誰も....分からないものだ。人間の心なんて、分からないものでできている。楽しいことも、苦しいことも.、所詮は感情というものが表層にあるだけで...


「空は、少しだけ明るいですね」


「少しだけだけどね」


 変な話じゃない。真面目なだけだ。なんて、世の中の人は、いう。真面目ってなんだろうって思う。



 答えのない。会話が、ずっと続く。まるで、探り合いをしているかのように....


「あなたは、儚すぎます。」


「君は、正義感が強いんだね」


 もう。色々考えてるから...


「君も。僕は好きだよ」


 初めて会った人に、伝えることじゃないかな。


「私もあなたが、好きです。」


 だから、なんだっていうだ。でも、嬉しいかな。こんな僕を、好きって言ってくれるなんて...


「お別れなんて,..したくないです」


「......変なことを言うんだね。」


「........変ですかね?」


「変だよ」


 ふわふわと、浮いてるような気がする。


「でも、お別れしないと、君の親が心配しちゃう。」


「.....えぇ....そうですね」


 現実なんて、いつもそうだよ。


「またね。」


「.....えぇ、さようなら。」


 少女が、唇を噛んでる気がした。血が出ている。そんなこと、しないでいいのに....

 少女は、そっと歩きだす。


「絶対っ!!絶対また会いましょうねっ!!明日もっ、明後日も会いましょうねっ!!返事してください。」


 少女が振り返っていう。僕は、断れないよ。そんな顔で言われちゃったら、さ....


「......わかった。明日も、明後日も会おうね。きっと」

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