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唯一の愛じゃなきゃお断り! 〜異世界召喚された私、聖女となって幸せになります〜  作者: 香月深亜
第二章 王都

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36. 唯一の愛を

「な……え!?」

「そんなに驚くことですか? 私はあなたと結婚できればそれだけで幸せなので、他に妻はいりません」

「え、え、でも! 私なんかより良い人もたくさんいるでしょうし、それに……」

「私にはあなたが一番ですよ。それに、あなたが言うように、女性側も男性側もお互いだけを一途に想う方が幸せを感じられると私も思います」

「リアムさん……」


 ……本当に? リアムさんも私と同じ考えを持ってくれているの?


「ただ、周りの意見はそう簡単には変わらないと思うので、あなたしか妻に迎えないことで、私は半人前の夫だと言われるかもしれません。それでも構いませんか?」

「勿論です! 周りの意見なんて関係ありません!」


 そこは全力で答える。

 好きな人が、今後も私だけを見てくれると言ってくれている。こんな感動的なことはない。


 周りからどんな目で見られようと、どんな非難を受けようと関係ない。


 私たちがお互いだけを見て、幸せならばそれで良い。……ううん、それが良いのだ。


「私たちの幸せそうな姿を見せつけて、この国の価値観も変えちゃいましょう!」

「……ははっ。そうですね」


 国の価値観を変えるのはそう簡単ではないだろう。

 自分でも大きく出てしまったと思ったが、リアムさんとなら幸せになれるという確信があるし、何年もかけてその姿を見せていれば、きっといつかは私たちの想いが周りにも理解してもらえるはずだ。



「お、おい。余を無視して話を進めるな!」


「あ、すみません。ついうっかり」


 ほんとにうっかり、王様の存在を忘れて二人の世界に入ってしまっていた。


「ですがさすがにもう、認めてくださいますよね? それ以外にありませんし」

「……っ」


 しかし、王様の存在を思い出したところで、もう話は終わりだ。


 私は、王妃になりたくはない。

 リアムさんと結婚したい。


 この世界に来てからずっと、優しくて、カッコよくて、強くて、そして、私だけを愛すると言ってくれた彼。

 私も彼に気持ちを持っていかれるのに時間はかからなかったと思う。……ただ、それが恋だと認めるまでに多少の時間はかかったけれど。


 この二年、彼とはたくさん一緒にいた。

 たくさん討伐に行って、たくさんの時間を過ごした。するといつのまにか、彼と結婚して過ごす未来を真剣に想像するようになっていた。


「瘴気を全て消したので、聖女の私が王族と結婚する必要は無くなりました。無理して愛のない結婚はしなくて良いですよね?」

「…………分かった。そなたたちがそこまで強く想い合ってるなら、結婚を認めよう」



 ようやく、王様が折れてくれた瞬間だった。


 わっ、と嬉しさが込み上げて、私はリアムさんを笑顔で見つめた。リアムさんも嬉しそうな笑顔を見せてくれている。



「澪。必ず幸せにします」

「いいえリアムさん。それを言うなら、『幸せになろう』ですよ。私もあなたを幸せにしたいですから。一緒に、幸せになりましょう」

「……ええ、そうですね」




────こうして私は、無事にリアムさんと結婚して、幸せを掴んだ。



 幸いにも、その後もずっと瘴気の発見報告は出てこなかった。しかしその影響で討伐部隊の出番はなくなってしまったので、討伐部隊は一時的に解散状態となり、現在リアムさんは王宮の護衛騎士として働いている。


 そして彼は誓い通り、今も妻は私一人で、私だけを愛してくれている。

 最初こそ、想定通り貴族たちからあまり良くは思われなかったわけだが、そんな目は気にせず、私たちはずっとお互いだけを想い幸せに過ごした。するとそんな私たちを見て、貴族たちの中にも段々と、一夫一婦制も素晴らしいのではないかと唱える者が出てきているとかいないとか。



「澪。話があります」

「はい?」

「実は……」



 しかし、そんな平穏な暮らしはそう長くは続かなかった。

 真剣な面持ちのリアムさんから、残念な話が切り出される。


「隣国で瘴気が発生して、聖女の力を貸してほしいとベルトランに要請が来ているようです」

「隣国……ですか」

「はい。しかも陛下は、すでに応じる算段のようで」

「断れない、と?」

「はい……」


 またしてもあの王様か。

 私のことを勝手に決めるだなんて、なんて横暴。


 でもまあ、隣国に行って瘴気を浄化すること自体は何の問題もない。ただ気になるのは。


「それってあなたは……?」


 ……ついて来てくれる?


 私一人では行きたくない。

 恐る恐る確認する。


「安心してください。当然、私も一緒に行きます。愛する妻と離れたくありませんからね」

「!」


 会話の中でしれっと『愛する妻』とかそんな単語を入れられては、こちらが恥ずかしくなってしまう。


「……なら大丈夫です」


 照れながら、私はそれを承諾した。

 リアムさんが一緒にいてくれるなら、どこに行かされても良い。


「まだ慣れませんか?」

「……慣れません」

「すみません。澪が可愛すぎるのでつい」


 愛のセリフを言われることに慣れず毎度赤くなってしまう私に、また彼は揶揄い半分でこちらをキュンとさせるセリフをさらりと言ったので反射的に怒る。


「! ほらまた!」

「ああ、すみません。……でも、怒った顔も可愛いですよ」


 どの道へ行っても八方塞がりで、困ってしまう。

 でもこうして毎日のように愛情表現をされていると、彼が今も他の人には目を向けていないのだと安心もできるから私も本気で怒れないのだ。


 ……まったくもう。


「そういうのは二人の時だけにしてくださいね?」

「はい、勿論」


 私が半分怒りながらリアムさんに説くと、リアムさんはにっこり笑顔で頷いてくれた。



「ちなみに、隣国ってどんなところなんですか?」

「どんな……。私もよくは知らないですが、有名な観光地があるらしいです。透き通るような青い海があるとか」

「へえ! 私たちもそこに行けますかね?」

「あちらは澪を招待している立場なので、澪が望めば行けると思いますよ。多分瘴気の浄化が済んでからだとは思いますが」

「ほんとに? じゃあささっと行って瘴気を浄化して、観光地でゆっくりしましょ!」

「はい」



 こうしてまた、私たちは討伐に向かうことになった。次なる地、隣国へ。愛する人と共に────。



これにて完結となります!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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