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唯一の愛じゃなきゃお断り! 〜異世界召喚された私、聖女となって幸せになります〜  作者: 香月深亜
第二章 王都

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30. 私の人生は、私のもの

 隊長さんの口から、とんでもない話が出てきてしまった。


 ……褒美が、私と結婚する権利?


「……っいや、いやいやいや!」

「私との結婚は嫌ですか?」

「いえ、その“いや”ではなく!!」


 私は咄嗟にツッコんでしまった。

 この状況でそんなボケは挟まないでほしい。

 まあ隊長さんはボケたつもりなんてないのだろうけど。


「褒美って、討伐の褒美ですよね!? それって隊員さんたち皆がもらうべきものでは? そもそも私と結婚する権利って……何ですか!?」

「はい。討伐の褒美です。褒美の内容はこちらから希望を出せるのですよ。あとは陛下の承認さえいただければ問題ないので、今回その褒美として、あなたと結婚する権利が欲しいと申し出たのです。それから、先ほど班長たちの了承を得ましたので、今回の褒美を私一人がもらうということには何の問題もありません」


 勢いで質問を重ねてしまったが、隊長さんはスラスラと答えてくれた。


 確かにさっき班長さんたちに許可を取っている場面を見ていたけれど、それがまさかこんな展開になるとは考えてもみなかった。

 または、少し考えれば分かったのかもしれないが、さっきの私がそこまできちんと考えていなかったので気づかなかっただけかもしれない。

 たしかにナディアさんに隊長さんとの結婚を勧められ、隊長さんも私も満更でもないという感じを出していたけれど……まさか早速、王様に直談判するなんて思わないじゃないか。



「ま、ま、待て! 待つのだ! 聖女は代々この国の王と結婚することになっている! だから今回の聖女も慣例に倣って余と結婚を、」

「しかしながら、聖女様はそれを望んではいらっしゃらないようです」

「そんなもの、照れ隠しだ! 余ほど夫として申し分ない男はいないだろう?」


 申し分……しかないが?


 ふふん、と胸を張り鼻高々にしている王様を見ながら申し分を考えるが、そんなナルシストなところも、全てにおいて上から話してくるところも、すでに何人も奥さんがいるところも嫌なのだ。

 あれほどまでハッキリとお断りしているのに、それを照れ隠しと受け取れるだなんて、そのポジティブさはどうやって培ったのか逆に聞いてみたい。


 ……と、心の中で思ったものの、大人な私はそれを全て口に出すことはしない。


 ただ王様の言うことが理解できず、キョトンとした顔をしてみた。それから、困ったような笑みを浮かべて告げる。



「申し訳ありません。私、隊長さんのような男性が好みでして」


 王様は私の好みではない、ということを再び彼に伝えたくて遠回しに言ってみる。


「ですから、隊長さんが私と結婚したいと思ってくれているなら、私もその想いに応えたいと思っています」


「な……っ!」



 王様はわなわなと震えているようだ。

 そんなにも私の発言が衝撃的だっただろうか。


「ですが、聖女様はこの国の王族と結婚する決まりですわ」


 そう言って陛下の後ろから会話に入ってきたのは、か弱い系女子の隊長さんの元婚約者だった。


 ……あ、彼女もいたのね。


 私の視界には王様しか入っておらず、彼女がそこにいたことに今気付いた。


「聖女様にはこの国に一生尽くしてもらわなければ困りますもの。ですよね陛下?」

「ああ勿論! よく言ってくれたエリー」


 勝手にこの世界に召喚して、戻すこともできないと良い、挙句の果てによく知りもしないこの国のために人生を捧げろと?




 プチッ




 頭の中で、何かが切れる音がした。


 冗談じゃない。

 私の人生は、私のものよ。



「……この、お馬鹿二人」


「はい?」

「え?」


 私がボソッと出した言葉を聞き取れず、元婚約者と王様は二人して首を傾げた。


 まあ「馬鹿」なんて言葉は聖女らしくない、とまた聴衆に非難されそうなので聞こえなくて良い。今から私がいうことが伝わればそれで十分だ。

 私は大きく息を吸い、会場に響くくらい大きな声で意見を述べる。


「いい加減、自分たちがどれだけ勝手なことを言っているか気づいてください! 聖女だからと、好きでもない相手と結婚して、一生この国のために働けだなんてそんな命令聞けるわけないでしょう!!」

「いやしかし、これはこの国の決まりで、」

「知ったこっちゃないのよ私には! だって私は、この世界の人間じゃないんだもの!」


 王様の意見は即却下だ。

 最後まで言わせないように、私は言葉を重ねた。


 国の決まりだからって理由にはもううんざり。


 しかし、私の圧力が強すぎたようだ。

 一歩後ずさりした王様は、今度は自分が優位に立てる隊長さんに話を振ってきた。


「そなたが知らなくてもシュナイツ隊長は知っているはずだ! なあ、そうだろう? シュナイツ隊長」

「……はい」

「じゃあ、」

「ですので、策は考えてきております」

「へ?」


 隊長さんが「はい」と言ったことで事態が好転したと早とちりした王様。その瞬間は少し安堵して自分の意見を押し進めようとしたものの、またしても、今度は隊長さんに言葉を遮られてしかも「策がある」と告げられると、王様からは素っ頓狂な声が飛び出ていた。


「聖女様と王族の結婚は、あくまで聖女様をこの国に繋ぎ止めておくために法で決められているかと存じます。それであれば、聖女様が結婚する相手がこの国から出ないという契約を結んでしまえば、聖女様が結婚する相手は誰でもいい……つまり、私でも問題ないはずです」

「そ、そんなこと…………あるのか?」


 一瞬言い返しそうになった王様だったが、ふと我に帰った王様は、言い返すことができなかったようだ。


 ……まあ、隊長さんが言ってることって間違ってなさそうだものね。


「聖女様に今後も国内にいていただき瘴気の浄化をお願いしたいのであれば、聖女様にはそれ相応の環境や待遇を用意すべきです。……恐れながら、陛下と聖女様との先ほどのやりとりを見て、陛下が聖女様に幸せを与えてあげられるか疑問に思っています」

「! じゃ、じゃあそなたとの結婚なら聖女は幸せになれると言うのか!?」

「そうですわ陛下。聖女様はきっとその男か、あるいはあちらの討伐隊員に騙されているのです。先ほども、なぜか私が嘘をついているような口振りで睨んできていましたもの……!」


 隊長さんが理路整然と話しても、それが通じる相手ではないのが残念である。

 私と隊長さんはついつい目を見合わせて、お互い同じことを考えていると認識した。



 この二人、面倒だなと。

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