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唯一の愛じゃなきゃお断り! 〜異世界召喚された私、聖女となって幸せになります〜  作者: 香月深亜
第二章 王都

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29. 討伐の褒美

 ナディアさんに投下された爆弾発言により、私と隊長さんは何も言わずに見つめ合う。


「……」

「……」


 ……私と隊長さんが、結婚?


 私たちが何も喋らないでいると、ナディアさんはその考えの補足をしてくれた。


「王族と結婚するのがこの国にいてもらうためってことなら、この国の人なら他の人と結婚しても良いですよね? 今回隊長にエスコート役を頼まれてますし、聖女様は独身の方を好まれると聞きました。それにお二人はかなり親密そうにも見えますし。であれば隊長と聖女様が結婚すれば解決できるかと思ったんですがどうでしょうか……?」


 この補足を受けて、私は再び隊長さんを見上げる。


 王様との結婚は嫌だと断言できたのに、隊長さんとの結婚はそうは思わない。

 それどころか、嫌だなんて気持ちは……一切と言って良いほど湧いていない。


 むしろ……隊長さんと結婚できたら幸せだろうな、なんて思えてしまう。


「確かにそれは良い案ですね。それでごねられたら、隊長が国外に出ないよう契約魔法を結べば良いですし」

「違いねえ! 良いこと思いつくじゃねえかナディア」


 ランドールさんやフランキーさんはその案に乗り気らしいが、問題は当事者である私と隊長さんだ。


「……と、いうことですが、どうしましょう?」


 反応に困った私は、隊長さんに聞いてみた。


「……聖女様は良いのですか? 私なんかと……」


 すると隊長さんから聞き返されてしまった。

 私は頭の中で整理しながら、気持ちを吐き出す。


「…………あなたは素敵な人です。いつだってあなたは優しくて。討伐のときは怪我を負ってまで私を守ってくれたじゃないですか。そんな人との結婚が、嫌なわけありません」


 ……そう。嫌じゃない。

 むしろたぶん、隊長さんの隣に他の誰かが立つことの方が嫌だ。


 と、こんなときになってようやく自分の気持ち……私が隊長さんをいつの間にか好きになっていたことを自覚するなんて、我ながら呆れてしまう。


 しかし、結婚するなら隊長さんの意見も聞かなければいけない。私は一応確かめる。


「ただもし、隊長さんが今後他の……若くて可愛い女の子と結婚したいって気持ちがあるならその……」


 性格は難ありだったがあんなに可愛い婚約者がいたのだ。地味な顔の私一人を妻にするのでは物足りないと感じるかもしれない。

 でも、私の心配事を聞いた隊長さんはクスッと笑った。


「有り得ませんよ。無礼かもしれませんが、私の目には聖女様は可愛い女の子にしか見えませんから。聖女様と結婚できるならこの上ない喜びです。私を選んでいただけるなら、私はあなたを、一生大事にすると約束できます」


 ひゅ、と喉が鳴る。


 言うことまでイケメン過ぎて、心臓が止まるかと思った。


 ……か、か、可愛い?

 隊長さんってば、一体なんの冗談を。


「え……え、あの……」


 そんなキュンとするセリフを言われては、否応無しに混乱し、どぎまぎしてしまう。

 ホットワインを飲んだのもあってか、頭の先からつま先まで熱い。

 恥ずかしながら、これではここにいる人全員に、見るからに動揺しているとバレているだろう。


 

「……悪い、皆」


 私が恥ずかしさから顔を逸らしたところ、隊長さんが班長さんたち三人に向き直って話しかけた。


「今回の討伐の褒美は、俺一人でもらっても良いか?」


「「「!」」」


 討伐の褒美とは、これから隊長さんたちがもらう予定のものなはず。

 本来であれば部隊に対してもらうものだったが、それを隊長さんが独り占めしたいと言い出したということだろうか。

 まだ流れを理解できていない私は、なぜ班長さんたちが目を見開き、それからにっこりと笑顔を見せたのかが分からない。



「あの、褒美って何を……?」


「聖女様! それを聞くのは野暮ですよ!」

「そうだぜ! どうせ後で分かるんだから、今は聞かずに取っておけ」

「同感です」


 不思議に思って褒美の内容を聞こうとしたが、班長さんたちは誰も教えてくれなかった。

 それどころか、後で分かるから聞くなと言われた。

 そもそもこの世界での褒美ってなんだろう? お金とか?


 秘密にされると気になるけど後で分かるなら良いか、と一旦この場では納得した。


「……分かりました」


「ではそろそろ、聖女様さえよろしければ会場に戻りますか?」

「あ、はい。私は大丈夫です。ホットワインも美味しかったです」


 いつの間にか飲み干して空になっていたカップを持ち上げながら、私は隊長さんにお礼を言った。

 隊長さんは私が持ち上げたグラスをスッと取り、ナディアさんに手渡ししていた。


「良かったです。では行きましょう」


 隊長さんが私に右腕を差し出す動作をしてくれたので、私は「はい」と返事をして、また彼の腕に手を添えて会場に戻った。



────会場に戻ると、隊長さんは私を連れてそのまま王様の目の前まで進んだ。


 王様は壇上から下に降りてきて招待客たちと談笑していたので、隊長さんはその輪に入って行き、王様に話しかけた。


「お話し中申し訳ございません。陛下、聖女様の体調が戻られましたので、お連れしました」

「ん? ああ聖女よ。気分はもう良いのか?」

「……はい」


 王様の顔を見たらまた悪くなりそうな予感がしたが、とりあえずは「はい」とだけ返事をした。


「そうかそうか。では先ほどの話をしようじゃないか」

「……恐れながら、その前に私から一つご相談がございます」

 

 私の返事を聞こうとした王様だったが、隊長さんに相談があると言われて少しムッとしている。


「それは今じゃなければいけないのか?」

「はい。陛下が今話そうとされている内容にも関わって参りますので、先にお話しさせていただきたく」


 頑なな隊長さんを見て、王様は仕方なしとして許可を出した。


「分かった分かった。では先にそなたの話を聞こうじゃないか。一体何なのだ?」


「ありがとうございます。では……」



 相談とは、先程話していた「褒美」の話に違いない。班長さんたちは教えてくれなかったが、一体何をお願いするのだろうか。


 私が隊長さんの横顔を見つめていると、隊長さんもこちらを見て、笑みを投げかけてくれた。


 そして、隊長さんは王様に言った。



「今回の褒美として、私に聖女様と結婚する権利をいただけないでしょうか?」

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