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唯一の愛じゃなきゃお断り! 〜異世界召喚された私、聖女となって幸せになります〜  作者: 香月深亜
第二章 王都

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28. ナディアさんの提案

 王様に衝撃発言をされた会場から逃げたかった私は、隊長さんに連れてきてもらいバルコニーへと出た。人がごった返している会場内とは違い、外は静かで、空気も澄んでいて心地良い。

 もう夜も遅いので若干肌寒くは感じつつ、しかし顔は少し熱っていたので、顔に当たる風は涼しく感じられて丁度良かった。


 私はバルコニーの柵に手をかけて、ふーっと深呼吸をする。澄んだ空気を体内にめいっぱい取り込み、気分を落ち着かせるためだ。


「聖女様、少しこちらで待っていていただけますか? 何か飲み物を持ってきます」

「あ、ありがとうございます」


 そんな私を見た隊長さんは、気を利かせて飲み物を持ってくると言ってくれて、中に戻ってしまった。



「あーあ……。どうすればいいんだろう?」



 バルコニーには私一人で残されたので、ぽつりと独り言を漏らす。


 一旦あの場からは逃げることができたけれど、問題は解決していない。


 ……あの王様とは結婚したくないなあ。


 第四妃だろうと第五妃だろうと、あの人と夫婦になることの想像がつかないのだ。


「好きになれる気がしないのよね、俺様な感じの人って」


 自身も割と気が強い自覚があるから余計に、なんでも自分が一番で俺様気質の人とは相性が悪いと思う。

 あの王様も、初め私を見た時に行き遅れだの地味だのと貶してきたから、あちらから見ても私は好みではないはずだ。


 お互いに好きになれそうもないのに、この国の決まりだからと無理矢理結婚しても良いことはない。

 だから、最初から私の中に王様の求婚を受けるという選択肢はない。問題はどう断るか……どう言えば本気で断られているのだと理解して私との結婚を諦めてくれるか、だ。


 うーん、と簡単には答えが出ない問題に頭を悩ませている間に、隊長さんが戻ってきた。


「お待たせしました、ホットワインです。それからこれを」


 隊長さんは私にワインの入った温かいカップを手渡してくれて、しかも流れるように私の肩にストールをかけてくれた。

 先程バルコニーに出てきたあの一瞬で、私が寒い思いをしてはいけないと思ってくれたようだ。


「……ありがとうございます」


 隊長さんの優しさが身に染みる。

 体の内と外両方から温められて、ホッと笑みもこぼれた。


「隊長さんは寒くないですか?」

「私は平気です」

「なら良かったです。……中の様子はどうでしたか? ざわついてましたか?」


 私の飲み物だけ持ってきた隊長さんに一応確認をして、そして状況がどうであったかを聞いてみた。


「やはり新たな王妃様の誕生となると、皆気にはなっているようですね」

「……私はなりたくないですけどね、王妃には」


 隊長さんの答えを聞いて、私はシュンとしながら話した。


「あの王様とはどうにも反りが合わないと言いますか、多分あっちも別に私のこと好きじゃないと思うんです。それに、結婚相手には私だけを好きでいて欲しい。……三人妻を持つことが男性側のステータスになるというこの国では難しいことかもしれないですけど、やっぱりそこは譲れなくて」


 頭には、この世界に来る直前のあのシーンが浮かぶ。

 当時婚約していた恋人の宏人が、私たちが同棲している部屋のベッドに若くて可愛い女の子といたシーンだ。


 トラウマ級に辛いそんな出来事があった手前、たとえこの国の結婚観がそれを認めているのだとしても、私は、自分の夫を誰かと共有したくはない。


 もう一人いるだけでも嫌だって言うのに、私が王妃になることに頷いたら、他の四人の女性と夫となる王様を共有することになる。……なんなら女性の人数は今後さらに増える可能性もある。


「何人もいる王妃様と仲良く王様を共有だなんて、私にはできる気がしません」

「聖女様……」

「何か方法はないんでしょうか? 王様と聖女が結婚しなければいけないという決まりを消してしまうとかそういう……」

「それは……」


「あると思いますよ」


「「!?」」


 私からの問いかけに困惑した隊長さん。

 しかしそこに、隊長さんではない別の人から答えが降ってきた。


「ら、ランドールさん!?」


 ここには私と隊長さんしかいないと思ったが、いつの間にか三人の班長さんたちもバルコニーに集まってきてくれたらしい。

 三人の姿を見て私たちは驚いた。


 そしてさらに驚くことに、班長の一人であるランドールさんは、私が王様と結婚しなくて済む方法を何か知っているようだ。


「どういうことだランドール」

「聖女様に王族と結婚していただくのは、そうすることで聖女様を国内に留めておくことができるからです。つまり重要なのは、聖女様にいかにしてこの国にいてもらうかであり、王族との結婚ではないということ」

「じゃあ、何か契約書とか書くのはどうですか? この国から出ません! みたいな」

「それもアリだとは思いますが、少し弱いかもしれません。契約書はあくまで書面に過ぎませんので、契約していたとしても国外逃亡を図られてしまえば意味がない」


 ランドールさんに教えてもらい、少し希望が見えてきた。

 私は王様と結婚しなくて済む方法を全力で考えた。すぐに思いついた契約書を交わす案は、方法として弱いらしい。私はガックリと肩を落とす。


 すると続いて、隊長さんが更なる案を出してくれた。


「書面で弱いなら魔法はどうだ? 国外へ出られないように契約魔法を結ぶとか」

「ふむ。良い考えだとは思いますが、契約を結ぶのが『聖女様と』ということを考えると未知数ですね。聖女様には魔力がないと聞きましたので、契約魔法を結べるのか、また、結べたところでその効力が発揮されるのかどうか……」


 隊長さんの案も良さそうだったが、私の魔力ゼロが足を引っ張ってしまうらしい。


 またみんなでうーん、と考え始めたところ、ナディアさんがスッと手を挙げた。


「……はい」

「どうしたナディア? 何か良い案を思いついたか?」

「良い案……というか、余計なお世話になってしまうかもしれないんですが……」

「何だ?」


 手は挙げてくれたものの、隊長さんが確認しようとするとなぜかおずおずと言いづらそうにするナディアさん。


 ……余計なお世話、ってなんだろう?



「隊長と聖女様が結婚するのはダメなんでしょうか?」



 一体何を言いづらそうに、と思ったがそういうことか。

 ナディアさんの案を聞くと、当事者である私と隊長さんは、二人して固まってしまった。

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