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唯一の愛じゃなきゃお断り! 〜異世界召喚された私、聖女となって幸せになります〜  作者: 香月深亜
第二章 王都

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24. 正装姿に見惚れて

 お披露目会までの一週間はあっという間に過ぎ去り、ついに当日を迎えた。


 この一週間は毎日のようにダンスレッスンを受けたので、ダンスはなんとか様になったと思う。少なくとも相手の足を踏まずに済むくらいにはなったはずだ。

 あとは礼儀作法や、この世界の学問的なところの講義もたくさん受けた。そのあたりは、たぶん私が王妃になると考えられているからなのだろう。私自身にその気はこれっぽっちもないが、今後のことを考えれば知っていて損はないところだろうと思い、とりあえず素直に講義を受けてみた。


 それから他には、レヴィさんのところに行って私がどれだけ魔力を倍増させるかの実験も受けた。

 私は、魔力が込められた魔石を握って自分の中で魔力を膨らませようと試みて、レヴィさんはそのときの私の中の魔力量を測定するというもの。


 結果はまあ……レヴィさんの予想通り。


 正確には、予想を遥かに超えた魔力量が検出された。魔石にほんの少ししか込められていない魔力が、私の中ではレヴィさんでも測りきれないほど倍増していたらしい。

 測りきれない量のため正確な数値は出せなかったが、とりあえず何十ではきかず、何百という倍増量。


 聖女の力恐るべしといったところだ。



「さすが聖女様、とてもお綺麗です」

「ありがとうございます、ハンナさん」


 ハンナさんは、朝から私がドレスを着る手伝いやヘアメイクをしてくれた。

 鏡を見れば、いつもより気合の入った自分の姿が映る。自分で自分を褒めるのは照れるが、ハンナさんが腕によりをかけて磨き上げてくれただけあって、今まで生きてきた中で一番綺麗に仕上がってる気がする。


 私に用意されたドレスは、デザイナーさんがきっちり一週間で仕立ててくれたもの。真っ白な純白のドレスは、聖女が着るドレスとしてぴったりの色合い。しかし、ただ白い布で作っただけではなく、白の中に白色の刺繍も施されている。このドレスはどこから見ても綺麗で、一週間で作ったとは思えないほどに感嘆する美しさだった。

 どうやってここまで細部にこだわったドレスを短期間で作れたのかは……考えない方がよさそうだ。


 それから、ネックレスや髪飾りも着ける。私はハンナさんに言われるまま、エスコート役を引き受けてくれた隊長さんを意識して、アクセサリーは深い海のような青色を選んだ。


 私は鏡台の前で立ち上がり、くるりと見返りながら鏡越しに背面も確認する。髪をきっちり編み込んで結い上げてたので、うなじから背中への流れで見える肌は、いつもより背面の美しさが増して、自身がより一層輝いて見えた。


「うわぁ……私とは思えない」

「ご自身の美しさに自信を持ってください。きっと招待客全員の視線を釘付けにするでしょう」

「……それは多分、私が聖女だから……ですよね?」


 ハンナさんにベタ褒めされても、そう簡単に肯定はできない。

 今日は私のお披露目会だから、皆が私を見てくるのだろうという覚悟はしている。しかしそれを、自分が綺麗だからとかそんな、大それた勘違いはしないつもりだ。


「そんな、」


 コンコン。


「……っ、確認して参ります」


 ハンナさんは何かを言いかけていたが、扉のノック音を聞いて会話を中断し、訪問者を招き入れた。

 一体誰だろうと思ったものの、少し考えれば、今このタイミングでこの部屋に来るのはあの人しかいない。


「隊長さん……!」


 ……な、な、なんて……。


 お披露目会用に恐らく討伐部隊の正装でビシッときめてきた隊長さんは、破壊力抜群だった。

 元からイケメンなのに、そこに正装をプラスすればどうしたってカッコいいに決まっている。

 両手にはめた白の手袋も……。


 ……え、素敵すぎるのでは?


 隊長さんがカッコ良すぎて、私は思わず見惚れてしまった。


「……」

「……」


 私が言葉を出せずにいたからか、隊長さんも私を見て無言になった。


 ……は! まさか変!?


「すす、すみません! あの、私どこか、おかしいですか?」

「え」

「ハンナさんに手伝ってもらったので見れる程度にはなってると思ったんですけど、隊長さんの目には変にうつったりとか……。やっぱりドレスが美しすぎて私には似合ってないですかね? それなら、今からでももう少し大人しめのドレスに着替えて、」

「いいえ!」


 慌ててクローゼットに向かおうとしたところ、隊長さんにパシッと手首を掴まれた。


「すみません。私が……見惚れてしまい言葉が出なかっただけです」


 隊長さんは言い淀み、目線を左右に泳がせながら、最後には真っ直ぐに私を見て言った。



「……綺麗です。とても。似合っています」



 僅かに微笑んで、そしてすぐまた目を逸らされた。でもその反動で見えた彼の耳は、真っ赤だった。

 そんなに照れながらも褒めてくれたのかと思うと、私までつられて照れてしまい、顔が熱くなる。


 私からは、ありがとうございます、と小さな声で応えるのが精一杯だった。



「コホン。そろそろ会場に向かった方が宜しいかと」


 つい無言のまま立ち尽くしてしまった私たちに対して、ハンナさんがわざとらしく咳払いをして早く行くように急かしてきた。そうでもしないと動かないと思ったのだろう。


「あ、ああそうだな。……では聖女様」

「……はい。宜しくお願いします」


 隊長さんも一気に真剣な顔に戻って、私に右手を差し出した。

 私がそこに左手を乗せると、流れるように彼の右腕を掴まされ、私は彼に連れられるがままに、お披露目会の会場へと向かった。

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