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唯一の愛じゃなきゃお断り! 〜異世界召喚された私、聖女となって幸せになります〜  作者: 香月深亜
第二章 王都

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21. 重いお守り

「浄化は、聖女様のみが使える能力と思われます。そのため、その力に関しての文献はかなり少なく、自分もよくは知らないんです」

「そうなんですね……」


 レヴィさんも知らないのであれば、今は一旦、浄化については置いておこう。とにかくあれが魔法でなかったならば、やはり私が使った『魔法』と呼べるものは先ほど述べた三回だけになる。


 どういった経緯で魔法が発動したかは説明したので、次はレヴィさんの考えが聞きたい。


「それでどうでしょうか? やっぱり私は、誰かの魔力を勝手に使ってしまっていたんでしょうか?」

「うーん。……結論を急ぐ前に、もう一つ聞いても良いですか?」


 レヴィさんは隊長さんに話を振った。


「もしかして何か、魔法を付与したものを聖女様に渡していましたか?」

「!」


 隊長さんの目が大きく見開かれていた。

 

 ……レヴィさんはあの場にいなかったはずなのに、何で分かったの?


 多分、隊長さんも同じ気持ちで驚いているのだろう。確かに私は、魔法を付与したものを受け取っていた。

 あの、銀の十字架のネックレスだ。


「……ネックレスを渡していました。もしものときに、自動で防御魔法が発動するようにしたものを」

「そのネックレスに、魔力はどの位込めてましたか?」


 レヴィさんから続けて出てくる質問に答える隊長さんの姿を、私はただ黙って見つめていた。

 するとふと、隊長さんからの視線が私に向けられて、なんとなく言いづらそうな空気が出ているのを感じた。


「もしかして私がいると話しづらいことですか? あれだったら席を外して、」

「ああいえ。そのようなことでは……」


「聖女様の前で話しにくいということは、防御魔法一回分だけというわけではなさそうですね」

「え!?」


 私たちの会話を聞いて、レヴィさんはにこやかに推測した。


 私が、それが本当なのか隊長さんに確認すると、隊長さんは観念して教えてくれた。


「……っ、はい。実は……三回分くらい」


 あのネックレスに、三回分の防御魔法が込められていたとは……。

 今更ながら、お守りとして借りるにはあまりに強い効力を持っていたようだ。


「その、本当のことを言うと、聖女様は遠慮してしまいネックレスを受け取ってもらえないかと思ったんです。それで黙っていました」

「当たり前です! あのとき、あそこでは隊員さんたちの治癒をする分の魔力も足りないって言っていたんですから。私なんかのためにそんなに魔力を……!」


 半分怒りながら、私は隊長さんを責め立てた。

 きっと私が怒ると思って、言いづらそうにしてたのだなと、納得もした。

 しかしそれを擁護したのは、レヴィさんだった。


「まあでも、それだけの魔力があったからこそ、聖女様はシュナイツ隊長の命を救えたのだと思いますよ」


 そんな風に言われては、これ以上は何も言えなくなるではないか。私は気を落ち着かせて、レヴィさんに確認する。


「……つまり、レヴィさんの考えが当たっていたんですね?」


 レヴィさんはこく、と深く頷いた。


「はい。聖女様は魔力ゼロのため、魔法を使いたいときは外部の魔力を使わなければならない。外部の魔力とは触れた人または物の魔力を指し、聖女様はその力を何倍にも増幅する力もお持ちのようです」


 自分に魔力がないことも、他人の魔力を増幅させて使っていたことも、最初にレヴィさんが考えた通りの結果だったようだ。

 私がなんと返せば良いか分からず言葉に詰まっていると、レヴィさんはそのまま補足してくれた。


「一回目の光魔法は、その直前にシュナイツ隊長から魔力を送ってもらっていたのでそれを使った。一瞬でも強い光を放ちかけたのは、聖女様が彼からもらった魔力を増幅させたからです。ただそれをコントロールする力はまだ持っていないので、一度の魔法で全ての魔力を放出してしまったのでしょう。そのため、二度目の『ライト』は発動しなかった。そして二回目はシュナイツ隊長の背中の傷を治癒した魔法。話を聞いたところ、彼の背中に手を付けていたようなので、包帯越しでも触れていたことで彼の持つ魔力をそのまま使えたのだと推測します。最後に三回目……これはもう説明不要な気もしますが一応お伝えすると、先ほど仰っていた銀のネックレスが魔力の源ですね。防御魔法三回分もあれば、それを一気に増幅させて『ヒール』を発動したとすると、瀕死の隊長含めて怪我人全員の治癒まで行えたとしてもおかしくはありません」


「す、すごい……」


 澱みなくスラスラと説明してくれたレヴィさんに心の中で拍手を送った。


「ありがとうございますレヴィさん。おかげでスッキリしました」

「いえいえ。こちらが知りたかっただけですので」


 レヴィさんは笑顔でそう言ってくれた。そして言葉はこう続く。


「ただ、まだ聖女様が魔力を何倍に増幅させられるのかは分かりませんので、その解明にはご協力いただけますか?」

「あ、はい。私にできることならいくらでも協力します」


 と、私は反射的にそう答えたが、その回答に対して見せたレヴィさんの笑顔は、まるで何か悪巧みを企んでいる人の笑顔に見えた。

 予想外に悪魔のような笑みを見せられて、よもや安請け合いをしてしまったのかと不安になる。


 ……でも、レヴィさんは良い人そうだし。うん、大丈夫大丈夫。とは言え“いくらでも”と言ったのはまずかったかな?


 今更回答の撤回はできず、私は心の中で自分に大丈夫だと言い聞かせ、不安に感じた気持ちは押し殺すことにした。


「では、ご協力いただく日程はあちらの侍女と聖女様の予定を確認して決めておきますね。今日はこの辺で失礼いたします」


 そう言ってレヴィさんが立ち上がったので、私も慌てて立ち上がり、お見送りをした。


「はい。ありがとうございました」


 レヴィさんは最後には優しい笑顔で会釈して、ハンナさんを連れて部屋の外に出て行った。


 すると、部屋に残ったのは私……と、隊長さん。



「……あ、あの隊長さん。お茶でも飲みませんか?」

「え……」

「だって、せっかく来ていただいたのにずっと立ちっぱなしでしたし、少しだけでも休んで行ってくれたら嬉しいです」

「あ……。では、一杯だけ」

「良かった。すぐ用意しますので、そちらに座っててください」


 レヴィさんと話す間ずっと後ろに立っていた隊長さんを、このまま帰してしまうのは忍びない。

 私は隊長さんにソファに座ってもらい、ハンナさんがお茶を淹れていた姿を思い出しながら見よう見まねでお茶を淹れ、隊長さんの前に差し出した。

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