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唯一の愛じゃなきゃお断り! 〜異世界召喚された私、聖女となって幸せになります〜  作者: 香月深亜
第一章 魔の森

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13. 銀色のネックレス

────二度目の討伐前夜。


 私のところにやって来た隊長さんが、突然目の前に銀色のネックレスを差し出してきた。


「……これは?」

「明日の討伐で着けていただけないでしょうか?」


 隊長さんを見上げると、とても真剣な表情をしている。

 少なくとも異性にアクセサリーを送るときの甘い表情はしていない。


 とりあえず両手で受け取りながら、ネックレスを見る。

 真ん中には綺麗な青い石がはめ込んである十字架モチーフの華奢な銀色のネックレスだ。


「魔獣討伐のお守りだと思ってください。もしものときは自動で防御魔法が発動する仕組みになっています」


 ……あ、なるほど。


 突然ネックレスのプレゼントなんて何事かと思ったけど、そこには色気なんてものはなく、あくまで討伐に向けての防御策としてくれるようだ。


「でも、そういうものなら隊長さんが持っていた方が良いのでは?」


 前回怪我をした隊長さんこそ持つべきだろうと思い、確認してみる。


「いえ。また前回のようなことがあっては危険ですし、今回聖女様には瘴気の中の光を討つお役目がありますので。きっと光を狙っている間は無防備になってしまいますから、私がやむを得ず聖女様から離れなくてはいけなくなったときに、聖女様をお守りするものとお考えください」

「はあ……」


 たしかに前回より危険になる予感はしている。

 遠くから標的を狙えるクロスボウを使ったとしても、クロスボウの腕前は付け焼き刃なのだ。もしどうしても光に当たらないようなら、極限まで近付かないといけなくなる。

 瘴気からはどんどんと魔獣が生まれているわけで、瘴気に近付けば近付くほど危険は増す。


 隊長さんが着けて欲しいと願い、せっかく用意してくれたプレゼント。私はそれを、素直に受け取ることにした。


「そういうことなら、ありがとうございます。明日必ず着けて行きます」

「はい」


 銀色のネックレスを手でぎゅっと握り、隊長さんに笑顔を見せる。すると彼もまた優しく微笑んでくれて、討伐前夜に束の間の幸せを感じるひと時となったのだった。



***


 そして次の日。

 五日ぶりに、再び魔の森へ入る日がやってきた。


「昨日はよく眠れましたか?」

「はい、バッチリです!」


 隊長さんに声を掛けられて、私は元気よく答える。


「ネックレスもちゃんと着けてきましたよ」


 そう言って、首から下げた銀色のネックレスを隊長さんに向かって持ち上げながら見せると、隊長さんはただこくりと頷いた。


「隊員さんたちも大分回復できたようですね」

「そうですね。全員ではありませんが、なんとか再討伐に向かえる程度には回復しました。今回はより一層気を引き締めて、怪我人を最小限に抑えつつ聖女様の援護をいたします」

「……はい」


 数日前は怪我をしてベッドに横たわっていた隊員たちも、ほとんどが怪我を治して再討伐に向かうようだ。


 今回のメインは、私が瘴気の中の光を討つこと。


 またみんなが大怪我を負わないように、ささっと光を討たなければいけない。

 隊長さんの言葉を聞いて、私も改めて気を引き締め直す。



「……よし。全員準備は良いか? では出発しよう」


 そうして、隊長さんの一声を合図に、みんなが魔の森への一歩を踏み出した。




 一度進んだ道のりだからか、前回よりはスムーズに奥へと進んで行く。前回同様、途中までは魔獣は一体も現れず、気付けば瘴気が見えてくる位置まで来ていた。

 そこまで近付けば、私の胸がざわつき始める。

 

 ……ああこの感じ。嫌な感じだわ。


 私は胸元に手を当てて、深呼吸した。

 前に感じたこの嫌な感じは、瘴気と魔獣の現れを示唆するもの。魔獣が現れれば、即座に討伐が開始される。


「……じょ様」

「……」

「聖女様」

「! ……隊長さん」


 突然肩を叩かれて、私は驚いて肩をすくめた。

 何度も名前を呼ばれていたようだが、集中していて気付けなかった。


 私があまりにも驚いたので、隊長さんの方も驚いてしまったようだ。目をパチパチと瞬かせている。それでもすぐに元の顔に戻り、やわらかい笑みを見せて言ってくれた。


「大丈夫ですよ。もし失敗しても、また出直して来れば良いだけですから。あまり気負わないでください」


 それは、私を気遣う優しい言葉だった。

 討伐部隊を率いる隊長としては、この一回で終わらせたいと思うはずなのに、失敗しても良いと言ってくれるなんて。……本音は違うかもしれないけれど、でもその言葉は私の重かった心を少しだけ軽くしてくれた。


「……はい。ありがとうございます」


「隊長。あの木の先に瘴気があるぞ」


 部隊の先頭をズンズンと進んでいたフランキーさんが、隊長さんに報告をした。

 私が感じた通り、すぐそこに瘴気があると確認された。


「分かった。全員気をつけて進め」

「りょーかい」


 フランキーは適当な返事をしてまた前を向いた。

 血気盛んな彼はニヤッと口角を上げ笑いつつ、その後ろに付いている隊員さんたちはキッと緊張感ある顔つきに変わっている。


 いつ魔獣が襲いかかってきても対処できるように、みんな臨戦体制だ。慎重に、音をなるべく立てないようにすり足で、隊はゆっくりと前進していく。


 私は進みながら、先にある瘴気を視界に捉えようと必死だった。目を細めながら、木と木の間に生じる違和感を探す。


 複雑な暗い色をした瘴気。

 そしてその中にある、小さな光。



 ……見つけた!



 瘴気の中に光を見つけ、私は即座にクロスボウを構える。

 しかし、前方には隊員さんたちが多くいてまだ矢は放てない。万が一にも誰かに当てたくはない。


 すると、矢を放つことを躊躇っていた私に、隊長さんが話しかけてくれた。


「光を見つけられましたか?」

「はい、でもまだ遠くて……。それに隊員の皆さんがいるのでここからでは皆さんに当たってしまうかも」

「分かりました」


 私の話を聞いて、隊長さんはこくりと頷いてまたみんなに何かを言おうとした……その時だった。


「魔獣です!!」

「左右両方向、複数確認!!」


「!!」


 前方の隊員が声を上げた。

 魔獣たちが、その凶暴な姿を現したのだった。

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