竜の神様、いぬ間に。
オミさんが修行に行った。
その間は、まるさんとふわさんという言の葉の神様のお使いが私の護衛をしてくれる事になっている。バイト先の葉月さんのお店へ行くと、葉月さんが私を見て驚いた顔をして‥、
「え??青葉ちゃん、とうとう神様になったの!?」
って言われて私が目を丸くすると、シキさんが静かに微笑み、
「肩にお二人が乗っておられるので、そう見えたのでしょう。まだギリギリ人間ですよ?」
「「ギリギリ人間‥」」
私と葉月さんの声が重なった。
そして肩を見てみたけど、何も見えない‥。でも、ちゃんとまるさんとふわさんは私の肩にいるそうだ。そうかぁ〜〜、有難いな。
「別荘ではお姿を現して下さるのでご安心下さい」
「何がどう安心かは分からないけど、分かりました」
シキさんの説明に頷いて、早速バイトを始める。
確かに守ってくれているのだろう。
バイト中、何かが弾かれる音が聞こえて顔を上げるけど、何も見えない。何も見えないけど、なんか嫌な感じがどこかに吹き飛ばされているのが分かる。
‥神様ってすごいなぁ‥。
シキさんにバイト先から、別荘まで送ってもらって玄関に入ると、ポンっと可愛い音がして、白い丸い形のお饅頭のようなまるさんと、雲のようにふわふわ浮かぶふわさんの姿が現れる。
「わ、本当にいてくれたんですね。今日からどうぞよろしくお願いいたします」
「不肖まる、青葉様を精一杯守らせて頂きます!」
「ふわめも、青葉様の御心も守らせて頂きます!」
う、うわぁああ、嬉しい!その上可愛い。
思わずデレっとしまう頬をなんとか引き締め、お礼を言ってから、
「お二人とも何か食べますか?あ、夕飯の前にかき氷どうです?」
そう言うと、まるさんの目が輝き、ふわさんは嬉しそうにふわふわ動く。‥どうやらお使いの方も食べられそうだ。苺と桃味を出したらいたく気に入っていたのでまた出してあげよう。
そんなこんなで昼はバイト、夜は勉強。
時々ゲームをして、日々はあっという間に過ぎていった。
ベッドに寝転がりながら、修行ってどんな場所でするのかな?って思ってまるさんに聞いてみると、
「そうですね、いわゆるこちらの言葉でいえば異次元の岩場だらけの場所ですね。魔物もおりますし、油断もできませんし、まぁ大変な場所でございます。あ、でも青葉様の横には常にルディオミ様がいるのでご安心下さい」
「横に‥」
「そうでないと、力も出せませんし、修行にもなりませんから。今まで別荘から離れていても大丈夫でしたでしょう?問題ないと蛇神様も思ったようで、それで更なる修行の場へ連れ出した次第です」
へぇえええええ〜〜!
なんか目がまん丸になっちゃうんじゃないかってくらい目が丸くなった。契約していても、こんな風に離れても平気ならずっとこの手‥使えないか。結局は離れてるし、会えないしなぁ。
「‥蛇神様ってすごいんですね」
「かなり高位の神様ですから。でも、一番はやる気を起こさせた青葉様かと」
「わ、私???」
「ルディオミ様は元々お強いので、きつい修行から逃げていまして‥」
‥オミさん。
なんとなく逃げるオミさんを想像できて、ちょっと笑ってしまうけど‥、でもそうか私でやる気が起きたの?それ初めて聞いた。目をぱちくりしていると、まるさんは「少しお喋りし過ぎました」って、ふわさんの頭の上に乗って、一緒にふわふわ浮いている。
そっか。
私の何がどうやる気を起こさせたかは分からないけど、
私がきっかけという事実は嬉しくて、ちょっと頬が緩む。
修行、大丈夫かな?
お肉ばっかり食べていないといいなぁ、そう思って大きなベッドの上の窓を見上げる。
前に見た時は満月だったのに、少しずつ欠け始めているお月様。
見えなくなる前に帰ってこないかな。
早く終わらないかな。
夏休みがずっと続けばいいと思っていたのに、今は早く終わらないかな‥、そう思って掛け布団をかける。と、まるさんが静かに「おやすみなさいませ」そういうので、私も「お休みなさい」そう返して瞳を閉じた。早く帰って来てって思いつつ。




