竜の神様、知らぬ間に。
オミさんはリンゴ味、ファルファラさんは苺、蛇神様はチョコとコーヒーを同時にかけた上にアイスものせてた。すんごい盛ったなぁ〜〜。
オミさんがそれを見て、「俺もそれ次やる!!」って言ってるけど、そんなに食べるとお腹壊すよ‥。
私はブドウ味のかき氷を食べつつ、蛇神様とオミさんが競うように食べて、頭の痛みに耐えている姿を見て笑ってしまう。ファルファラさんは、どうして頭を抑えているのか分からないので説明した。
「えーと、氷を一気に食べると頭が痛くなるんです。ゆっくり味わって食べてもすぐ溶けないので安心して下さい」
「ああ、そうなんですね。驚いてしまって‥」
「そうですよね‥、味はどうですか?」
とっても美味しいです!と、柔らかい笑みを浮かべるファルファラさんに私も微笑む。パティアさんと同様、優しそうな人だなぁ。
私はブドウ味のかき氷を一口また食べると、オミさんが私をじっと見る。
な、何だよ??思わず私もオミさんをジト目で見ると、
「ブドウ味って、舌が紫になんのか?」
「っへ??」
そういえば、赤い舌とか青い舌になるって言って面白がってたな。
私はちろっと舌先を出して見てみると、うっすら紫??
「あんまり色が付いてない‥」
「合成着色料が少ないのを選んだからな!!」
「蛇神様、意識高ーーい」
ドヤ顔する蛇神様を、オミさんがジロッと見る。
「あんだよ、それが面白いのによー」
「なんだ竜の子は、意識がまだまだ低いのう」
「「あぁん!!??」」
「オミさん、殺気しまって下さい」
お客さんの前だぞ??
それに心許せる人物にそんな姿見せていいのか?あ、見せていいから、ありのままなのか??
そうしてカキ氷を堪能してから、温かいお茶を淹れて出すと、ファルファラさんがオミさんを見上げる。
「‥人間界へ行ったとお話を伺って驚きましたけど、こうして楽しそうに過ごされている姿を見る事ができて嬉しいです」
「‥そうですか?」
「ええ!こんなにイキイキしているルディオミ様を見るのは久しぶりですわ」
楽しそうに会話するファルファラさんと「そうですか?」なんて言う丁寧な言葉を使うオミさんにびっくりする。いや、たまたまか??そう思っていると、
「ファルファラ様は、来年結婚式をあげるそうですね」
「まぁ、もう知ってらしたんですか。はい、正式に決まりました!」
たまたまじゃなかった!!丁寧に話してる!!
あと結婚するんだ、おめでたい事だなぁ‥そう思ってオミさんの顔を見ると、なんだか寂しげな顔をしていて‥。私の顔が思わず固まった。
さっきの蛇神様の「心許せる人物」という言葉を急に思い出す。
あ、ダメだ。
またなんか胸が痛い。
「青葉?どうかしたか?」
蛇神様に顔を覗き込まれて、思わず「ワッ!!」って声が出る。
び、びっくりした。
「え、えーと積もる話もあるようだし、私はちょっと夕飯の仕込みをしてきます」
「夕飯肉がいい」
「オミさんの選択は聞きません。今日は魚です」
しれっと答えて、平静を装って私はキッチンへ逃げ込んだ。
そうして、あちらからの視線から逃れて私はようやく大きなため息を吐いた。オミさんの事をまるで色々知っていると勘違いしていた自分が恥ずかしいし、そんな風にいつの間にか思い込んでいた自分に驚いた。
心を許している人の結婚に寂しそうな顔をするのも当たり前なのに、あの顔を見たら、それが嫌だなって思ってしまった自分にも驚いたし、嫌だった。
ズルズルとしゃがみこんで、足の間に顔を埋める。
「‥嗚呼〜〜‥、気付きたくなかった‥」
はっきりとオミさんへの気持ちを気付いてしまって、私は胸が痛くなって仕方ない。どうしたらいいんだこれ。リビングから笑い声が聞こえてきて、ますます胸が痛くてしばらくキッチンで蹲ってしまった。




