竜の神様、動揺知らず。
蛇神様と一緒に別荘の前に立っていた女性は、オミさんと同じ褐色の肌に、蜂蜜の色みたいな長い髪を綺麗に結い上げて、薄い淡い緑色のワンピースを着ている。
私をオミさんを見ると、ふんわりと優しく微笑み、
「初めまして、今日は突然お邪魔してしまってすみません。竜族のファルファラと申します」
声まで綺麗だなぁ〜!
あまりに綺麗で、そして女性らしい柔らかい笑みに思わずぽかんと口が開いてしまう。い、いかん!!挨拶せねば!
「え、えっと、こんにちは、青葉と言います」
慌てて頭を下げると蛇神様はニコニコ笑いつつ、
「とりあえずここじゃ何だ。別荘に入ってかき氷を食べよう!」
「蛇神様も食べたかったんですね…」
「シロップも持ってきたぞ!!」
「何から何までありがとうございます」
オミさんを見上げると、ちょっとハッとした顔をして黙ってついてきたけど‥、ど、どうした??なんでそんな黙ってるの?
別荘に上がって貰って、ソファーにオミさんと座って貰って私と蛇神様は、早速かき氷機を持ってきてくれた箱から出して、パーツを簡単に下洗いするけど‥、
ずっと黙ってるオミさんがあまりに不気味で、蛇神様にこそっと聞く。
「‥あの、あの女性はどちらから?」
「ああ、そうだったの。あの方はな竜の国から来たパティア様の婚約者だ」
「「え、えええ??い、いいんですか??そんな大事な人がこちらに来て‥」
「わしの神域ならば大丈夫だろうって、パティア様も了承済みだ」
な、なるほど?
じゃあ、オミさんにとっては知り合いって事か。
それにしたって、なんであんなに黙っているの??そう思っていたら、ファルファラさんが何かを話しかけると、途端にオミさんの顔が柔らかくなって、今まで見た事もない笑顔になる。
‥え、
あんな顔するの???
びっくりして思わずまじまじと見ていると、蛇神様がかき氷機を組み立てつつ、
「ルディオミを小さい頃から見ているからなぁ。ある意味、心許せる人物の一人じゃな」
またびっくりして蛇神様を見る。
お兄さんとは大層仲が悪かったけど、ファルファラさんには心許せるの??
えーと、それはつまり大分好きって事では‥?
そう思ったら、胸がズキッと痛む。
あ、これは今季1番の胸の痛みでは?
「そ、そうなんですか‥」
誰かを好きだとか、そんなの人の自由なのに‥。
一緒にいたけど、そんな話も出た事もなかったから思い切り動揺してしまう自分がいて‥、かき氷用のお皿を食器棚から取り出すけど、オミさんに何の味がいいかも聞けない。
「青葉?」
蛇神様の声でハッとして、顔を上げる。
どうやらシロップをじっと見ていたらしい。
「そんなに迷っておるのか?」
「あ、ええと、そうですね‥。まさかこんなにあると思わず‥」
「そうじゃろ!?ネットで調べたらな、桃も柚子もリンゴもチョコもあるって見つけてな!即買ったんじゃ!」
よく考えたら、即買って、即届くものなのか?
私はハタっと我に返ったけど、いや、神様の世界は不思議な世界‥。そっとオミさんの方を見ると、オミさんが話しながらこちらをチラッと見て、目が合ったので思わず体が揺れた。
「青葉、何味あるんだ?」
「え、えーと、すっごい一杯ありまして‥、目新しいのだと、リンゴとか、チョコとか、桃とか、ブドウとか‥」
「「俺、リンゴ」」
「早い、即決か」
いつものように返せた自分にちょっとホッとしつつ、ファルファラさんを見て、
「何の味がいいですか?」
「わぁ、嬉しいです。でも食べた事がなくて、おすすめはどれでしょう?」
あ、そっか。
食べた事ないから、想像つかないか。
「定番なら苺かな。あ、でも柚子もさっぱりして美味しいし、桃も美味しそうだし、マンゴーも捨て難い‥」
「お前、前も同じように悩んでたな。最初は苺だろ」
「あ、またオミさんそう勝手に決める‥」
私はファルファラさんに聞いているというのに‥。
「では定番らしい苺をお願い致します」そう、柔らかい笑みでお願いされて私は蛇神様とかき氷機を回した。動揺も全部削れてしまえるようにと、結構力を込めてガリガリと氷を削った。




