竜の神様、驚く。
そんなこんなで、オミさんとの別荘生活は穏やかそのものだった。
扉を開けたら、即バイト。
帰ってきたら、即別荘。
ドアtoドア最高だ。
一方のオミさんは、シキさんが言うには私のバイト中は蛇神様にそれはそれはハードな修行をさせられているらしい。帰ってくると、いつものオミさんなんでそんな感じがしないんだけど‥。
シキさんにその話をしたら、
「‥青葉様の心に負担を掛けないようにと、あえてそんなお姿を見せないのでしょうね」
にっこり笑ってそう話すので、ワンテンポ遅れてから言葉の意味が分かった瞬間に顔が赤くなる。‥つまり、責任を感じさせないように普段通りにしてると。
‥何だそれ、めちゃくちゃ恥ずかしい。
あと嬉しいではないか。
シキさんは赤い顔になった私を見て「敵に塩を送ってしまいました」って言うけど、オミさん敵だったの?
今日からバイトも3日ほどお休みだ。
葉月さんは一度実家に顔だけ出して、すぐ帰ってくるそうで‥、
「お姉ちゃんにどこまで青葉ちゃんの事、話しておく?」
「ど、どうすればいいかな?とりあえず元気にやってるだけでいいかな」
「そうだね〜。その方が面白そうだし!」
「「面白そうとは?!!」」
ひとまず元気にやってるって伝えてくれるようなので、お願いしておいた。あと私も一応電話しておいた。呑気に「あら〜、今年はお部屋がないって言うの忘れてたわ〜」って言われたけど、母よ‥今すでに夏休み中何だが?
相変わらず呑気な母との会話を終えて、ローテーブルの上にスマホを置く。
‥前回よりも山盛りの釣り書きをちらっと横目に見つつ‥。
おっかしいな〜〜。
一応蛇神様に、「もう少し悩みます」ってこの間メールしたはずなんだけど、更に増えてるの‥何でかなぁあ??オミさんも本日は私の休みに合わせて修行はお休みらしいけど、山のような釣り書きを燃やそうとするので慌てて止めたくらいだ。
しかし、休みかー。
神域だから大丈夫そうだし、外へ散歩でも行こうかな?
グッと腕を伸ばして、目の前のソファーで雑誌を面白そうに読んでいるオミさんを見る。
「オミさん、ちょっと散歩でも行きません?なんか家にずっといるのもなんだし‥」
私がそう言うとオミさんは頷いて、
「いいぜ。その方が肉も上手く食える」
「‥すっかり蛇神様の所で食べた肉に味をしめて‥。家に戻った時が怖い」
「高い肉、買っていいってセキも言ってたぞ?」
「ううう、貧乏学生には勇気がいる行為なんですよ〜〜」
そう言いつつ、二人で玄関を出て周囲を散策する。
神域といっても、相当広い場所らしくて湖があるし、山もある。
爽やかな風がそよそよと吹いてきて、なるほど別荘にふさわしい環境である。
「はぁ〜〜、気持ちいい!良い場所ですね」
「‥まぁな。コンビニがねーけど」
「コンビニがある神域ってあるんですか?」
「ないな」
ですよねー。
オミさんはすっかり人間界に馴染んでるな?
「帰ったら冷凍庫にアイス入ってたんで食べましょうか?」
「お、いいな」
「かき氷機もお願いすれば、蛇神様送ってくれるかな?」
「自分で作れるのか!?」
「実は作れるんです。ただ我が家の場合はスペースの問題もあって買えなかったんですけど‥」
とか言ってると、オミさんがポケットからスマホを出して何かポチポチ押してる。何をしているんだ、何を。
「蛇神に頼んでおいた」
「「いや、早い!!そんなに食べたいか!」」
「家でも食べたい‥」
「スペースの問題上無理です」
「じゃあ、セキにもうちっと広げるように言うか」
「「いいから!!もういいから!掃除も大変だし!!」」
本当にオミさんはどんどん改造しようとするな!?
結局アイスは何味があったかとか、そんな話をして別荘へ戻ってくると、別荘の前に蛇神様ともう一人女性が立ってる?
「お、青葉!ルディオミ!!かき氷機持ってきたぞ!」
ええ??もう?!
嬉しそうに手を振る蛇神様の方へ行こうと、オミさんを見上げると、女性の方を驚いて見てちょっと固まっている。えーと、もしかして知り合い??




