竜の神様、現実へ。
雲のような霧状のものは、蛇神様に引っ叩かれ、蹴られまくっているオミさんと私の前に、すうっと静かにやってきて、やがて小さな雲になる。
と、その雲の中から声が聞こえる。
「‥この度は大変でしたね。言の葉の神様の使いの「ふわ」と申します。先ほど、長谷さんは「まる」が安全な場所に連れて行き、狙われる事のない状態にしてから元の場所に戻しますので、どうぞご心配なく」
「な、何から何までありがとうございます!」
慌てて雲のふわさんに頭を下げると、ふわさんは私の周りをふんわりと飛びながら、
「いえいえ、自分よりも人を優先しようとする優しいお心、言の葉の神様もいたく感激しております」
そうなんだ??
ちょっと照れくさいけど、でも結局助けてもらったし‥。思わず俯く私に、ふわさんは私の考えを見透かすように、私の顔の前にやってくる。
「もちろん無鉄砲ではいけませんが、貴方の行動が周囲を変えたのですから顔を上げて下さい」
ふわさんの言葉にそっと顔をあげると、蛇神様が私の腕に抱きつく。
「そうじゃぞ!わしは青葉が大好きじゃ!!」
「蛇神様‥」
私はうるっとして泣きそうになる。
蛇神様は、ニコッと笑って私の腕に抱きつきつつ、オミさんを見上げるので、私もつられて顔を上げるとオミさんは眉間にしわを寄せて私を見ている。
「のう?竜の子?」
「‥るせぇ!!」
「素直じゃないのう」
オミさんはプイッと横を見てしまったけど、それでも嬉しくてほろっと涙が出た。オミさんはそれを見て、そわそわしだして私の方をチラチラ見ているけれど、蛇神様の手前どうにもできないのか、こちらを見るだけだ。
蛇神様がポーチからハンカチを出してくれて、それをお礼を言って受け取ると、ようやくオミさんが後ろでホッとした顔をしている。‥オミさん、分かりやすい。
雲のふわさんは、ふわふわと私の周りを飛んで、
「もう狐が言ってたのを聞いてお分かりの通り、青葉様の力は悪食、半妖、半神にとっては、自分の神格を押し上げる力なのです。貴方を怖がらせまいと敢えて伏せていましたが、かえって危険な目に遭ってしまいましたね‥」
「‥あの、この力ってどうにかならないんですか?」
「様々な方法はありますが、どれも大変ですね」
大変なの??私が目を丸くすると、ふわさんは少し黙って‥、
それから静かに、
「お見合いをする気はございませんか?」
「「えええええ???!!!」」
薄暗い場所に、今度は私の声が響く。
「貴方の力を取り込もうとする輩でなく、貴方を大事にし、共に神格をあげられる半神、あるいは半妖と一緒になれば、力は取られる事はなくなります。そうですね、先ほどの長谷さんも自身は半妖だと知らずにいましたが、今ならお話をしても‥」
「「い、いえいえいえいえいえ!!!!ま、待って下さい!!」」
よ、要するに結婚しちゃえば力を取られないって事?!
びっくりし過ぎて頭が追いつかないんだけど!
「確かに、このままオミさんや蛇神様、言の葉の神様に頼りきりになってしまう状況はまずいとは思いますが、ま、まだ私は大学に入ったばかりですし、結婚はとても考えられなくて‥」
「そうですか‥失礼しました。少し結果を急いでしまいましたね」
「え、いや、でもそんな方法もあるんだ!って分かったのは、まぁ、安心しました‥」
とは言ったけど、結婚‥。
思わず遠くを見つめてしまう。
ひとまずびっくりな提案をしたふわさんを見つめる。
‥と、言ってもどこに目があるかわからないけど。
「‥ええと言の葉の神様に助けてくださってありがとうございますって‥、お礼を伝えて頂けますか?」
「もちろんです。お喜びになるでしょう!」
ふわさんの顔が見えないけど、なんだか笑っているような気がした。
「それでは、私はこれで失礼いたします。青葉様、お見合いの方できればお考え下さいましね」
あ、諦めてなかったのか!私は顔を引きつらせつつ手を振ると、ふわさんは霧のように消えてしまった。すると周囲が突然明るくなって思わず目を瞑る。
そうして、静かだった周囲から段々と音が聞こえ始める。
そっと目を開けると、遊園地の売店のベンチに座っていて、私の隣にはオミさんが座っていた。
「‥え?夢??」
「「アホか、ガッツリ現実だ!!」」
ギロッと睨んでオミさんが私の持っていたジュースを今度こそ全部飲んでしまった!!
「私の〜〜!!!」
「うるせぇ!!」
私も睨み返すと、向こうのヒーローショーで「成敗!!」って声が聞こえて顔を上げると、悪役が倒されていて、その舞台袖に長谷君が元気な姿で立っているのが見えた。神様、本当にすごいな!?




