竜の神様、カチコミにいく。
闇の中へ飛び込むように入ると、ゾクゾクとした空気が充満している。
「‥おやおや、わざわざ自分から飛び込んできたのか?」
聞き覚えのある声に、体が強張る。
この声は、以前突然人の顔を舐めてきた狐‥。
そう思った瞬間、火の玉だろうか幾つも浮かび上がって、私の背丈を軽く越すほどの大きさの狐の姿がはっきり見えた。
足元を見ると、長谷君がグッタリした顔をして倒れている。
「は、長谷君を返して!!」
「なんだ?こいつと知り合いか?お前を狙ってたら、こんな美味しそうな餌を見つけたのに‥、取り上げようってのか?」
「え、餌???!」
「こいつは半妖らしいが、自分では知らないらしいなぁ」
そういって、狐は長い舌で長谷君の頬をべろっと舐める。
う、うう、見てるだけで寒気がする!!
「お前は半神、こちらは半妖、どちらか力を食べれば俺は更に格の上がった神になれる。どうする?こいつの代わりにお前が俺の餌になるか?」
私を食べると神になれるの?!
目を丸くして狐をまじまじと見ると、口を歪めてクツクツと笑う。
「なんだ、そんな事も知らずに蛇とトカゲに守られていたのか?」
なんてことを言うんだ‥。
そんなの蛇神様も、オミさんも聞いたらぶちぎれるぞ。
‥でも、私は止めるオミさんを振り切ってここに来てしまった。
蛇神様も、もしかしたら呆れているかもしれない。助けに‥来てくれるなんて分からないし、なんでもかんでも頼ったらダメだ。
そう思うのに、足がカタカタ震えて狐を見上げる。
「‥え、餌になるって、なったら‥私は、どうなるの?」
「そうだな、運が良ければ生き残れるが、悪ければ魂まで食べられてしまうな」
魂‥。
目眩がするけど、足元でグッタリしている長谷君を見る。
役者になりたいって努力している姿を知っている‥。そんな彼が私のせいで巻き込まれて死んじゃうなんて、ダメだ‥。
ドクドクと心臓の音がうるさい。
ごめんねオミさん、止めてくれたのに‥。
でも、ここで巻き込まれる形で長谷君を死に追いやれないんだ。
「‥‥私の、力を‥」
そう言いかけた途端、後ろから大きな手が私の口を塞ぐ。
「「アホか!!!勝手に差し出してんじゃねぇ!!!」」
オミさん?!!
狐の神域に入ってこられないんじゃないの?!驚いて目を見開くと、目の前に雲のような霧状のものが広がる。
狐を囲うように、雲が姿を覆うと長谷君の体が丸い透明な球体に包まれて空中に上がっていく。な、何??!長谷君は大丈夫なの?!私はオミさんの方を見ると、狐を睨んでいる。
「「人の事をトカゲ呼びした悪食神め‥」」
悪食神!??狐じゃないの??
すると突然、見たこともないくらい大きな白い大蛇が姿を然現すと、ものすごい勢いで狐の体にぐるっと巻きついた。
へ、蛇‥、いや、あれはもしかして‥。
「蛇神、様???」
「あいつも相当キレてるけどな、もっと怒ってるのは言の葉の神様だろうな」
「「え??ど、どこに???」」
「雲のやつは、言の葉の神様の使いだ」
え、雲のあの狐の体を包んでいるの??
雲のような霧状のものは、狐の口にすうっと入っていくと、狐が目を見開いて暴れ出そうとするけれど、蛇神様がギュッと巻きついて全く動けないようだ。
雲がまた狐の口から何かをずるっと引き出すと、黒い塊だ。
なんか‥以前お隣さんの体から出てきた塊に似てる?雲は、それを包んだかと思うと一瞬で消えてしまった。
「消え、た?」
「冥界に送ったんだろ。ありゃ、しばらくどの世界にも帰って来られねぇ」
「め、冥界???!!」
「魂の改める場所だけど、相当食ってるぞあいつ」
な、内容が怖いんだが〜〜!!!
狐の体が、黒い塊が抜けた途端砂のようにさらさらと崩れ落ちてしまった。それを見て、私も腰が抜けてズルッとオミさんの体に崩れ落ちそうになると、オミさんがヒョイっと抱き上げた。
な、何をする!!???
驚いてオミさんを見下ろすと、オミさんはジロッと私を睨む。
「‥神づかいの荒い奴め」
「す、すみません?」
そういった途端、いつの間にか蛇神様が人の姿に戻っていて、ものすごいジャンプをしてオミさんの後頭部を引っ叩いた。
「「阿呆!!それはお前じゃぁああ!!!」」
薄暗い場所で、蛇神様の怒声が響いて木霊した。
うん、まぁ、良かった‥?




