竜の神様、救援要請。
グングンと下へ落ちていく私は、どうにも出来ずにもう目を瞑るしかできない。
「「わぁあああああああ!!!!」」
お化け屋敷に入ったのに、ジェットコースターとはこれいかに!?
ドスンと何かにお尻をしたたかに打ち付けたはずなのに、思ったよりもふかふかの触り心地に不思議になる。
「‥なんだこれ??」
ふかふかの何か動物のような毛並みを思わず撫でると、それはくすぐったそうに私の手を避けようとする。
『お前、誰だ?』
「へ??」
顔を上げると、暗がりの奥に2つ光る何かが見える。なんだか怖いんだけど、嫌な感じはしないような?
「ええと、人間です」
『人間?竜の匂いがするぞ』
オミさんのこと??
そんなに匂いってするの??私は自分の腕を嗅いでみたけど、全然分からない。
「あの、もしかして手違いでここに落ちちゃったと思うんで、元の場所に戻して貰える事って出来ますか?」
『‥ふむ。随分と落ち着いてるな』
「まぁ、色々あったんで‥」
あとこちらをじっと見ている視線が、ゾクゾクする怖いものじゃないから?
そう思っていると、こちらを見ていたそれがゆっくりと動くと、周囲に火の玉だろうか?揺らめく炎がいくつも浮かび上がって、私が落ちたのはどうやら大きな狐の尻尾の上だったと分かった。
大きな狐はのっそりと動くので、私は慌てて尻尾から降りると、狐は私の方へ顔を近付ける。
「き、狐さんだったんですね‥」
『いかにも‥。最近、体が怠くてな。力があまり出せずにいたので、ここで休んでいたが。お前さん、力を少し持っているんだな』
「力‥って、あるんですか?あ、龍の力かな?」
私がそう言うと、狐さんは目を細めて私を見る。
『どれ、美味そうな気だな。少しだけ私にくれたら、お前を元の場所に戻そうか』
そういった途端に、ぞわりとしたものが背中を駆け抜けた。
あ、これまずい。
今までは大丈夫だと思ったのに、急に空気がヒヤリとする。私は後ずさって後ろをチラリと見る。に、逃げないとまずい気がする!!冷や汗が出て、狐さんの方へまた振り返る。
「え、ええと、それはちょっと無理かもしれないです」
『だが元の場所に戻れないぞ?』
「そ、それはなんとかします???」
ジリジリと近付いてくる狐に、トンと壁だろうか背中がぶつかる。
『ふむ、竜には惜しい気だ』
狐さんがそう言って、大きな舌で私の頬をペロッと舐める。
な、なぁあああああ!!!!!ぞわりと寒気がして体が固まった途端、ボトボトと何かが落ちてくる。
「な、何!!???」
狐さんが舌打ちして私は足元を見ると、薄明かりの下に無数の蛇がいた。
「「へへへへへへ、蛇ぃいいいいいいい!!!!!!」」
思い切り叫んだ。
叫ばずにいられようか。
すると、その内の一匹がシュルッという音を立てて白い着物を着た長い黒髪の14・15歳くらいの女の子に姿を変える。お、女の子???!!驚いて目を見開くと、
「なんじゃ、青葉。わしが分からぬか?」
声を聞いて驚いた!!その声、もしかして‥、
「へ、蛇神様!!??」
「うむ、その通りじゃ。竜の子がわしに助けを求めたんで、馳せ参じてやったぞ!」
「あ、ありがとうございます??」
お礼を言うと、ちょっとツリ目が細められて面白そうに狐さんを見る。
狐さんは、睨みつけるように蛇神様を見て、
『なぜお前が人の子を助けようとする!そいつは俺の物だ』
「残念ながら、それは無理だ。青葉は竜の子と契約している。神といえど、契約している者を襲ったらバチが当たるぞ?」
ニンマリと蛇神様は狐さんを見て笑うと、私の体をじっと狐さんが見る。
『‥次はないぞ』
「お前さん、諦めが悪いのう」
蛇神様がそう言ってため息をつくと、私の手をそっと握って狐さんを見る。
「しつこい男は嫌われると知らんのか?少女漫画でも読んでおけ!」
‥蛇神様、狐さんに少女漫画勧めちゃうの??
さすが人間界に興味津々な神様だなぁって思って、思わず肩の力が抜けた。




