竜の神様、お化け屋敷に潜入。
集まった皆とお祭りの為に作られたお化け屋敷につく。
なるほどすぐに取り壊して移動できるように、幕が張られていて迷路のようになっているようだ。友達が早速団体割引で券を買ってきてくれて配ってくれた。
‥うーん、本当は出来ればさっきの怖い出来事があったから、入りたくない。しかし、券は受け取ってしまったしなぁ。ひとまず皆でジャンケンで決めよう!という事で勝負する。と、人数の関係上私は一人になってしまった。長谷君がこちらを心配そうに見ているけど、すでに女子に腕組まれてるからそこに気付いてあげて。
「あ、青葉一人になっちゃったね」
「私らと行こうか」
「ああ、いいよ。一人で行ってみたい」
「強者じゃん!!」って言われたけど、私の手をずっと握っているオミさんがいるので一人ではないんだな〜〜。さっさと行って、さっさと帰ろう。そう思って、「先に行くね〜」と一人‥ならぬ二人で入っていく。
あちこちから悲鳴とか、曲が流れている‥。
私はオミさんを見上げて、
「‥オミさん、もう姿を現してもいいのでは?」
「お?そうか?」
オミさんはそう言うと、ニヤニヤしながら堂々とお化け屋敷の中に現れたようだ。垂れ下がっている葉っぱや、なんかマネキンの首をちょっと邪魔そうに避けている。
「‥ところで、お化け屋敷ってのはなんだ?」
「あれ〜〜???そっから???えーとお化け屋敷っていうのは、この世界では理解しきれない存在を、おどろおどろしいものとして作って、怖がって遊ぶもの‥ですかね?」
「‥人間界って、大丈夫なのか?」
「いや、私もよく考えたらちょっとおかしいって思いました‥」
私がそう言うと、オミさんが吹きだしておかしそうに笑う。
「こんなんより、ずっと本物の方が怖いんだろ?」
「そりゃそうですよ。でも、たまにこういうのに紛れ込んでいるのがいるから厄介なんです」
「ああ、さっき立ってたのはそれか」
「え、ちょっと待って、怖い」
思わずオミさんの繋いでいた手をぎゅっと握ると、オミさんはニヤっと笑う。
「なんだりんごは怖いのか?」
「‥本物が怖いのは当たり前では?」
「俺がいるのになんで怖いんだよ」
「気持ちの問題です」
ジトッとオミさんを睨むと、ますますニヤニヤ笑うから本当に腹が立つ。
と、後ろから足早にこちらへ近付いてくる足音が聞こえる。
「「青葉!!」」
「あ、あれ??長谷君???」
君、さっき女子に腕組まれてなかった??
私が驚いてオミさんから手を離して、長谷君の方へ行くとホッとした顔をしている。
「一人でさっさと行っちゃうから心配で‥」
「え??その為に来てくれたの??悪いね‥」
「いいよ、俺が勝手に心配で追いかけて来ただけだし」
な、
なんていい奴!!
ここの所、ああ言えばこう言うっていうオミさんと一緒だったから、ストレートな優しさが胸にくるわぁ〜。感動して長谷君を見上げると、長谷君の方はオミさんの方をチラチラと見ている。
「‥‥もしかして、友達って彼?」
「ええと、はい、ソウデスネ」
「俺、お邪魔だったかな?」
オミさんがすかさず「「邪魔だ」」って言うので、問答無用で脇腹をパンチした。神様がそういう事を言うんじゃない!!
「全然大丈夫です!えーと、とりあえず一緒に行こうか?」
「うん!!行こうぜ!!」
ニコッと笑う長谷君のまぁ爽やかな事。
おどろおどろしい、血みどろの背景もモノともしないなぁ〜。
3人で進んで行こうとして、通路が狭いので私が先に進もうとすると、オミさんが慌てたように私を呼ぶ。
「あ、バカ!一人で先に行くな!」
「へ?なんで??」
私が振り返ってオミさんにそう聞こうとした途端、足元がぽっかりと穴が開いた。
「「へ?」」
「青葉!!!」
オミさんの叫ぶ声と同時に、ヒュッと落ちていく感覚に意識が持っていかれた。




