竜の神様と、花火。
路地で焼き鳥を食べたオミさんは、そのままフランクフルトも食べ始めた。
よくお腹に入るなぁ‥。
感心するようにオミさんを見て、それから路地の向こうにいる商店街を歩く人達を小さな道の隙間から見る。
「それにしても、今日は人が多いですね‥」
「ご先祖ってやつも帰ってきてんだろ?ゴチャゴチャしてるよな」
‥なんか、サラッと怖い事言ったね??
私は思わず遠い目になる。
「花火ってのもやるんだろ?何処かで見えるのか?」
「あ、花火は葉月さんのお店の屋上で見えるんです。葉月さんは今日は仕事でいないけど、外階段から登って見ていいよって言ってくれたんで、食べ終えたら行きましょうか?
オミさんは、またも目をキラキラさせて頷く。
‥こういうところが、可愛いんだよなぁ。
食べ終えたオミさんは、パックをビニール袋に入れるとすくっと立ち上がる。どれ、じゃあ葉月さんの店に行くか。私も立ち上がると、オミさんが手を私の前に差し出す。
て、手を繋ぐの??私は顔が赤くなってしまうんだけど?!
「‥ええと、オミさん、手を繋がなくても歩けますよ?」
「‥‥さっき、人に押されてたの誰だよ」
私ですね。
「あの、でも、恥ずかしくてですね?」
「‥俺は、恥ずかしくない」
「感じ方はそれぞれ違います」
「じゃあ、手を繋いで行きたいって言えば繋ぐのか?」
「「も、もっと無理です!!!」」
そんな言い方されたら、絶対繋げないじゃないか!!
私がオミさんを視線だけ上げて、ジロッと見る。と、ニヤニヤして私を見下ろしているオミさん。
「りんごは、すぐ赤くなるな」
「「〜〜〜〜オミさんのバカ!!!根性悪!!!」」
前言撤回だ、可愛くない!!!
私がクルッと向きを変えて商店街の方を歩いている人達の方へ行こうとすると、オミさんの大きな手が私の手をサッと握る。
「お、オミさん!!!」
「青葉」
急に静かに名前を呼ばれて、ピタッと足を止める。
その途端、ゾクリと背中に冷たい何かを感じる。
「‥‥前を向いていけ。後ろを見なけりゃこっちには来ない」
「は、はい‥」
何〜〜〜!!??何がいたんだ???
私は怖くなって、オミさんの手を思わずぎゅっと握ると、オミさんも握り返してくれてちょっとホッとした。
そして、路地を一歩出た途端、冷たい、嫌な感じの何かが消えた。
「‥き、消えた???」
「どうも帰ってきた霊の奴らしいけど、まだちょっと未練があるらしいな」
「そんな〜〜〜!怖いから帰りたい‥」
「俺がいるんだから、大丈夫だろ」
「ううう、お願いしますよ?」
私が泣きそうな顔でオミさんを見上げると、オミさんはまたニヤッと笑う。
「大丈夫だ!よし、とりあえず花火、見に行こうぜ!」
「‥うう、心配だ‥」
張り切るオミさんに手を引かれ、葉月さんのお店の外階段を登って行く。
屋上に上がって、簡単な柵を開けて中へ入ってくと椅子とテーブルが置いてあるので、そこに荷物を置かせてもらって椅子に座る。
ようやく手を離せて、私は思わずホッとした‥。
「花火って何時だ?!」
「ええと、そろそろかなぁ…」
スマホを見て、そう話した途端ヒュルル‥と、頭上で音がする。
パァン!!
と、大きく花火が空で散ると、オミさんが目を丸くする。
「「おい!!すごい綺麗だぞ!!」」
「オミさん、花火って竜の国にはないんですか?」
「あんのかもなぁ、だけど、俺はあんま祭りに出ねぇしな」
そうなんだ。
じゃあ、花火も初??
それはなんだか嬉しいな。ふふっと笑うと、オミさんが私の顔をじっと見る。
「どうしました?」
そういうと、また花火が一つ上がる。
そうして、パラパラと落ちて行く火花をオミさんが見ながら、私の手にそっと手を伸ばす。驚いたけど、繋いだ手がじっとり手汗をかいてて、熱い。
「‥綺麗だな」
って、しみじみとオミさんが空の花火を見て言うものだから、ものすごく照れ臭いのに、なんだか嬉しくて‥「そうですね」って小さな声で言ったら、オミさんがクシャって笑うので確実にツーストライクだった。




