竜の神様、お祭りを満喫する。
かき氷を食べて、オミさんを見る。
「オミさん、舌赤くなってる」
「は??なんで??」
「私の見ます?オレンジの色素ついてるでしょ?」
ベッと舌を出すとオミさんが目を丸くする。
「オミさんも赤いですよ?」
「はぁ??あ、本当だ」
自分で舌を出して、舌先についた赤い色を面白そうに見ていた。
「また食いたい」
「今日は一杯までにしておきましょう。頭痛くなるし、お腹も壊すし」
「‥‥じゃあ、今度すぐな!!」
「はいはい」
どうやら気に入ったようで、私は一人小さく笑った。
かき氷のカップを片付けると、オミさんがサッと私の手を繋ぐ。
んん???
もう一回言っておく。
私と手を繋ぎつつ‥で、ある。
あ、あれ??ど、どーして手をそうずっと繋いでるのかなぁ??
え〜〜〜〜と????私は頭の中がグルグルしているのに、オミさんはちっとも気付かない。人でごった返している商店街だったけど、オミさんは混乱している私をよそに、あちこちの屋台や出店を興味深そうに見ている。
と、オミさんがすごい笑顔でこちらを振り向く。
「おい!青葉、あそこにシャボン玉やたらと飛ばしてる所あるぞ!」
「へ??ど、どんな場所??」
オミさんに言われて、そちらを見ると広場で大道芸だろうか、大きなシャボン玉を作ったピエロに扮した人が、フラフープの輪っかで小さな子をシャボン玉で包んだり、ものすごく大きなシャボン玉を作って飛ばしている。
「わ、すごいですね!!」
「見に行こうぜ!!」
オミさんは楽しそうに私を引っ張って行くけど、ちょっと待ってくれ足の長さを自覚して!!広場の人だかりの方へ行くと、皆目をキラキラさせてシャボン玉が飛んでいるのを見ている。もちろんオミさんもである。
「あれがあれば、ずっと勝てるな」
「‥一体、なんの勝負をするつもりですか」
そこかい!って思ったけど、興味津々な様子に小さく笑ってしまう。
ピエロに扮した人が、「こちらでシャボン玉売ってまーす」ってすかさず言うものだから、オミさんの目が光った。買う気だな。
「おい、青葉買っておこう。で、今度勝負だ」
「なんの勝負ですか、なんの‥」
そう突っ込むけど、オミさんはそんな私の言葉を聞く事なく、シャボン玉をちゃっかり二つ買っていた。‥どんだけ勝負が好きな神様だろうか。
オミさんが買ったシャボン玉をバックに入れてあげると、
「そろそろ腹減った」
「早い、オミさん早い」
「お前、減らないのか?」
「逆に食べなくても平気なのに、なんでお腹が空くのか聞いても??」
そう言うと、ニヤッと笑って、
「お前が美味そうに食うからかもな」
「え??私のせい??」
まさかの私のせいだったの??
不思議そうな顔をして見上げると、「嘘だ」って言って私の手を引っ張って、フランクフルトと焼き鳥をしっかり買うオミさん。食べる気満々だな。
「どこかに座って食べましょうか」
「そうだな‥」
オミさんと周囲を見渡していると、急にグイッと引っ張られ、
細い路地の中へ入っていく。
「え??お、オミさん??」
「こっち、いこーぜ」
「は、はい??」
オミさんに手を引かれ、ズンズンと路地の中を歩いていくと、閉まったお店の前にベンチがポツンと置いてある。
「これに座るか」
「い、いいんですかね?」
「食べたらすぐどきゃいいだろ」
「‥神様、もうちょっと考えて下さいよ」
そう言うけど、オミさんはドカッとベンチに座ると鼻歌混じりに焼き鳥の入ったパックの蓋をパカッと開ける。
聞いてくれ、人の話。マイペースオミさんは、焼き鳥を一口食べると、美味しかったのか顔がパッと明るくなって、その焼き鳥を私の口元に持っていく。
「ん、美味いぞ」
「‥え、ええと???」
た、食べかけですが??
だけど、美味しいぞ?みたいに目が訴えているオミさんに誰が断れよう。焼き鳥を受け取ろうとしたら、口元にずいっと寄せられる。そ、そのまま食べろって事??
うう〜〜‥、多分私の顔が赤いだろうなぁ。
そう思いつつ、焼き鳥をそのままかじって食べると、オミさんがニヤッて嬉しそうに片方の口をあげて笑う。
「美味いだろ?!」
「‥美味しいです‥」
大分、恥ずかしいけど‥。
なんて、そうは言えないのでもぐもぐ食べると、オミさんは私が食べた焼き鳥を気にせずそのままパクパク食べた‥。神様は、あまり気にしないのね。




