竜の神様、見破られる。
バイトへ行く為に、カバンを掴んでオミさんと家を出る。
鍵を閉めていると、隣の扉がガチャッと開かれて私は思わず体を固くする。し、静かだったはずですが?!!鍵さえもダメな感じか?
青白い顔に、メガネをかけた一見気弱そうな顔をしたお隣さんは私と、そして隣に立っているオミさんをちょっと驚いた顔をして見ている。
「‥お、おはようございます」
私が声をかけると、その人は小さく会釈したかと思うと静かに扉を閉めた。‥どうやら文句ではなかったらしい。ほ〜っと息を吐いてオミさんを見上げると、ものすっごい睨んでる。‥これ、もしかして怖かったのでは??
「‥オミさん、睨んじゃダメですよ」
「あぁ?!あっちが見てきたんだろ?」
「‥神様なのに、全然神様じゃない‥」
まさかお隣さんもメンチ切ってるお兄さんが神様だとは思わないだろう。
サクサクと歩いて、階段を降りて行き、歩きがてらオミさんにこれから行くバイト先の説明をする。
「これから行く場所なんですけど、私の母の弟で葉月さんっていう人なんですけど、花屋さんをしているんです」
へぇと、気の無い返事をするオミさん。
いっそ清々しいほど興味がないな‥。それよりも周囲の風景に興味津々で見ている。
「ガラスの店が多いな」
「オミさんの所はどんな所なんですか?」
「自然しかねぇ」
「いい所じゃないですか」
自然いっぱいなんて神様の国っぽい。
そんな話をしていると、ほどなく花屋が見えてきた。
コーヒー屋さんの向かいにある、白い二階建ての家で一階が店舗になっていて、玄関先にすでに鉢がいつものように並べられている。
と、お店の入り口から、おじさんの葉月さんが出てきた。
「葉月さん、遅くなりました!」
「あ、青葉ちゃんおはよう〜」
短く切った髪に、丸メガネを掛けたホンワカした笑顔で葉月さんが挨拶してくれた。そうして、私の後ろに立っているオミさんを見て、
「‥あれ???青葉ちゃん、なんか変わったお友達連れてきた?」
「あ、ああ‥その、」
「なんか霊ではないし、狸でも狐でもないし‥」
ニコニコしながらオミさんにそう話す、葉月さん。
実は結構色々視える人だったりする。
オミさんも、自分を人間として見ていないと気付いたのか、腕を組んでふんっと葉月さんを見る。
「竜だ。火竜」
「へぇ〜〜、初めてお会いしました。不躾にジロジロ見てしまってすみませんね。ええと、双竜 葉月と言います。どうぞよろしくお願いします」
「オミだ」
「いい名前ですね。えっと、ところでなんでうちの青葉ちゃんと一緒に?」
あっさりとオミさんを受け入れてしまう葉月さんにちょっと驚きつつも、私はようやく理解者がいたことに感動を隠せない。
「「それですよ!!葉月さん!!私、全然了承してないのに、オミさんの契約者になっちゃって、修行を終えるまで私の側から離れられないって言うんですよ!!!」
「あらあら大変だね〜。青葉ちゃん、なんていうか好かれる気が流れてるからかねぇ〜」
「「そ、そうだったんですか!!??」」
私はエプロンをつけつつ、今日の花をざっと見る。
まず水切りをしないとだなぁ。
オミさんはそんな会話をしている私を面白そうに見ているので手招きして、予備のエプロンを渡した。
「はい!神様といえど働いて下さい」
「これの着方がわからん」
「「ああもう〜〜!!!ほら、後ろ向いて!!」」
エプロンを着せて、後ろで蝶々結びをしてから葉月さんを見る。
「‥葉月さん、そんな訳でしばらくオミさんを連れて来たいんですけど‥いいですか?」
「うちは手伝ってくれるなら大歓迎だよ〜。大学がある時はここで働いて欲しいくらい〜」
なんと!!それは助かる!!
オミさんを見上げると、嫌っそ〜〜〜な顔をして、
「‥俺に毎日働けと?」
「毎日ではないですけど、お金はないんでしょう?せめて自分の食費くらいは稼いで下さい。それも修行では?!」
私が腰に手を当て、指さすと、ちっと思い切り舌打ちする。
神様が舌打ちするな。
バイト先があっさり見つかるなんて普通ないんだからね!?私がオミさんをジトッと見上げると、オミさんはすぐに目を逸らして、「へいへい」って言いつつ私が抱えていた花の束を持ってくれた。




