竜の神様、着物着用。
そうしてバイトを終えて、家に戻る。
オミさんがどうしても肉が食べたいと言うので、肉うどんだ。けど、せめて油は取り除きたい私は湯がいてからポン酢と和えた。だって太るし!!
「それにしても浴衣かぁ‥、オミさん着た事‥」
「あるわけねーだろ」
「‥‥ですよねー‥」
自分は着られるけど、オミさんの着せられるかなぁ??
練習しておけばいいか?
「‥オミさん、お風呂に入ったら浴衣の着付け練習させてください」
「きつけ???」
「着せ方がちょっと難しいんですよ。お祭り当日にいきなり着せられる自信がないです」
私が遠い目でそう答えると、オミさんは「ふ〜ん??」と不思議そうにしていた。帯の結び方とか、あとで調べておかないとだなぁ。
そうして夕食の片付けをすると、オミさんはすぐにお風呂に入って、ワクワクした顔で出てくる。相変わらず髪はビショビショである。
「うう!!!もう乾かしてって言ってるのに!!」
「嫌だ、面倒臭い」
「神様〜〜、そんなんでいいんですか?」
「お前が乾かせばいいだろ?」
「‥オミさん?ずーーーっっと私といるつもりですか?」
私がジトッと見ると、オミさんは一瞬口籠る。
「‥いる間はいいだろ」
「もう!髪を乾かすのも修行だと思って自分でやって下さいよ!はい、ドライヤーどうぞ!!」
「「嫌だ!!お前がやれ!!」」
「子供かぁああ!!!!」
プイッと横を向いて、私の前に座って頑なにドライヤーを受け取らない神様‥。蛇神様に言いつけちゃおうかな。でもそんな事言ったら、なんか縦ロールが出来そうなコテとか嬉々として送ってきそうだけど。
それはそれで面白そうだな‥。
ちょっと小さく笑って、コンセントに挿してドライヤーのスイッチを入れると、オミさんが私を振り返ってニヤッと笑う。‥本当にこのガキンチョは。
「オミさん、本当に自立しないとダメですよ?」
「お前が乾かせばいいんだ。問題ない」
「だからぁ〜〜、ずっと一緒にいるわけじゃないんでしょう?」
「そんなの知らねぇ」
「神よ、もう少し考えて下さい‥」
サラサラになっていくオミさんの髪に触れて、自分で言っておきながら「いつか離れて生きていく」未来を想像すると、この手のかかる神様がいなくなるのがちょっと寂しいなんて思ってしまう自分がいる。
‥ダメだ、相当絆されてる。
これではダメだ。
オミさんの修行の邪魔をしちゃダメだし、オミさんの未来はオミさんのものだ。いつかは絶対契約を解消しないとだ。その為には、課題のヒントについても考えないとだなぁ。
髪が乾いて、サラリとする感触の髪にそっと触れる。
この髪を乾かすのも、あと何度なんだろうなぁ‥。そう思ったら、まだ乾かしてあげるのもいいのか?なんて思ってしまうけど、いやいや修行!!あと自立!!と、思い直す。
「はい、オミさん終わりました。えーと早速浴衣の練習していいですか?」
「おう、どーすりゃいいんだ?」
「えーと、まず立って貰っていいですか?」
オミさんに立ち上がって貰ってから、私は綺麗に袋に入れられていた浴衣を取り出す。
黒い生地だけど、これは結構お高いものでは?!
角帯も白がベースの黒い模様が入ってるけど、素敵だ。流石、洋服大好き!蛇神様‥。着物まで完璧である。
オミさんの腕に浴衣の袖を通して、前の方で高さを合わせる。
いつも上半身裸だから、こういう時は楽である。
紐でささっと着物を抑えて、次は帯だけど‥。
「‥うーん、長さの調節が自分じゃないからなぁ‥。オミさん、ちょっと失礼」
「「んなっ!!??」」
なんかオミさんが変な声をあげたけど、気にせずオミさんの体に体を寄せて、腕を回す。帯の長さを調節するけど、なかなか難しい。うん、このくらいかな?何度か試行錯誤を繰り返して、腰の前で帯を結んでクルッと後ろに回せば完成である!!
「「出来た〜〜!!うんうん、オミさん素敵ですよ!!」」
着物の見事な着こなしっぷりに夢中だった私が顔を上げてオミさんを見上げると、真っ赤な髪と同じくらい顔が真っ赤だった。
「‥あれ??なんか照れる事、ありましたっけ??」
「「お、お前なぁああ!!!」」
オミさんは私の顔を横にグリッと向けて、「今度は自分でやる!!」って言うけど‥。それならそれで助かります。私からの自立は大事ですしね。笑顔で頷くと、人差し指の腹で額を思い切り押された。もう!!なんなのだ!!!
まだまだ寒いのに浴衣を着せて楽しい。
角帯は筑前の博多織のが好きなんですけど、調べたらデニム帯もある!
どっちにしようと迷ったけど、博多織りです。着物はいいね!!




