竜の神様、契約続行。
パティアさんは、私が契約を続行するという言葉を聞いて嬉しそうに微笑んだ。
‥もしかして、私の心配もしてくれてたけど、オミさんの心配もしているんじゃないかな?オミさんにはその気持ちがどうやら伝わっていないようだけど、なんだかオミさんを見つめる視線は優しいもん。
「‥また近く、こちらに来てもいいかな?」
「もちろんです!今度はうちに‥」
「「来なくていい!!」」とパティアさんの言葉にすかさずオミさんが睨みながら話すけど、‥オミさん、私の家なんですけど?
パティアさんはちょっと可笑しそうに笑って、ゆっくり立ち上がる。
「‥ルディオミの契約者が青葉さんで良かったです‥、契約中は、ルディオミは国には戻れないのでまた様子を見にきます。今日は本当に突然すみません‥。ルディオミ、しっかりな」
オミさんはパティアさんを見向きもせず、腕を組んで横を向いたままだ。‥本当にもう。私も立ち上がって、小さく頭を下げると、にっこり笑ってパティアさんはコインランドリーから出て行った。
なんだかそこだけ非現実的に感じて、私は去っていった出口をもう一度椅子に座って見ていると、オミさんが私の服をちょっと引っ張る。
「‥洗濯、終わったぞ」
「え、あ、本当だ。ありがとうございます。とってきますね」
「おう、早くしろ」
「‥言い方ぁああ!」
全くもう!!もうちょっと優しく言えないのか!
カパッと乾燥機の扉を開けて、洗濯物をバックに詰めていくけど、ほかほかで気持ちいい。
「オミさん、終わったんでドーナツ屋行きましょうか」
そういうと、オミさんの顔がパッと明るくなる。
オミさんはパッと席を立つと、足取り軽く出口に向かう。
「3個な!!」
「自腹ですよ」
すかさずそう話すと、オミさんは口を尖らせる。大きな黒い傘をオミさんが広げて、
「まったく俺の契約者のくせにケチだな」
「それ関係あります?」
「うるせー。で、どっちだっけ?」
「あっちですよ、神様」
反対方向に行こうとするな。
オミさんは私を傘の中に入れとばかりにジッと見るので、遠慮なく傘に入る。まだ雨はシトシトと降っていて、なんとも困った天気なんだけど、オミさんを見上げるとなんとなく嬉しそうな横顔が見えて、私まで嬉しかったりする。
「我ながら単純だ‥」
「あ?」
「いえ、こっちの事です」
雨の中、ドーナツ屋へ行ったら、スペシャル半額デーだったので、結局オミさんは自分で3個どころか6個買ってウキウキだったけど、お金大丈夫かな???今度お小遣い帳でも渡そうと思った。
家に戻ると、玄関に何か箱が置いてある。
「あれ??なんだろう???」
「あ、セキがもう送ってきたのかも」
「「え??セキさんが??」」
驚く私をよそに、オミさんはちょっと大きめのダンボールを持ち上げて、鍵を開けるように言うので急いで玄関を開ける。
と、なんか部屋がいつもと違う???
部屋に入ると、なんか部屋が広くない!!??
ベッドも今まで使ってたのが、ドンと大きくなってる!??
「「え、あれ??私のベッドが大きい!!???」」
混乱している私をよそに、オミさんは玄関に置かれたダンボールの箱をベリベリと乱雑に開けて、白い機械を取り出す。
「あ〜、セキに部屋を広げておけって言った。あと、ベッドもう少し広い方がいいから変えさせた。あ、この機械は神の国で使われてる「かんそうき」らしいぞ?」
「「え、え、え????」」
「あ、部屋はちゃんと戻せるぞ。狭い方がいいか?」
ちょ、待て!!!
いきなりの環境変化に驚いているんだけどもーーー!!!!???
「「な、な、なんで勝手に変えちゃうんですか!!!?私のベッド!!!」」
「狭い方が良かったのか?」
「いや、広い方が確かにいいですけど‥って、違う!!それって一緒に寝る事、前提じゃないですか!!??」
思わずそう言っちゃってから、とんでもない事を言った事に気付いて、顔を赤くするとオミさんはニヤリと笑って、
「神と一緒に寝られるなんて貴重な経験だろう?」
「「んなわけあるか〜〜〜〜!!!!!」」
オミさんの力で防音、遮音のお部屋で良かった‥。
私はシャウトした。思い切りシャウトした。
オミさんの脇腹をドカドカとパンチしたけど、オミさんはゲラゲラ笑って、怒る私の口にドーナツを突っ込んでまた笑った。‥本当にやる事が無茶苦茶なんだけども!!??




