竜の神様、お兄さんが来る。
コインランドリーは、平日の午前中だったからか割と雨続きなのに空いていた。
この辺の中では一番大きいコインランドリーでカフェスペースもあるので、オミさんに座って待ってもらって私は乾燥機の方へ向かう。
「は〜〜、空いてて良かった‥」
洗いは済ませておいたので、乾燥して貰うだけだ。ひょいひょいと洗濯物を入れて早速機会のスイッチを入れて回しておく。助かります!機械様、乾燥機様。
後ろを振り返ると、オミさんはゴウゴウと音を立てて回っている機械をまじまじと見ている。なんだかその様子が面白くて、ニマニマしてしまう。
「こうやって機械が並んでると、ちょっと迫力ありますよね」
「まぁな。人間てのは、よく考えるな」
しみじみと感心されて、なんだか自分が褒められた気分みたいになる。
ちょっとくすぐったい気持ちになりつつ、ココアとコーヒーを買ってオミさんの前に置くと、すかさずココアを取った。甘いもの好きか。
「オミさん、お礼は?」
「「あ り が と う!」」
「よろしい」
私の言葉に、「全くいちいちうるせぇな」って言うけど、神様お礼は大事ですよ?全くこのガキンチョ神様め‥。タウン誌がコインランドリーの入り口に置いてあったので、それを持ってきてテーブルに広げると、オミさんが興味深そうに覗きこむ。
「それなんだ?」
「これですか?タウン誌ですよ。この街の情報が載せてあるんです。ほら、時計塔とか、葉月さんのお店もここに書いてあるでしょう?街はまぁそれなりに大きいんで、どこに何があるか分かりやすく写真と一緒に書かれてるんです」
へぇ‥と、オミさんは返事をしつつジィッと見ると、ハッと目を見開く。
「「おい、これ食いてぇ!!」」
「へ??どれ???」
ビシッと指差したそこには、ドーナツ屋さんの広告が‥。
あ、ああ、ここね〜〜。
写真には色とりどりの可愛い色合いのドーナツが店内の中に所狭しと並べられている。はいはい、これは美味しそうだよね。オミさんは心なしか目がキラキラして私を見ている。
「‥終わったら買いに行きましょうか」
「「絶対だぞ!??」」
神様、君は幾つなの??
しかしオミさんの期待に満ちた目があまりに可愛かったので頷くと、オミさんの黄色にも緑にも、水色にも見える瞳はますます嬉しそうに輝いた。
‥本当、私相当絆されてないかな?
こんなデカいのにその姿が可愛いとか思ってるし‥。ココアを嬉しそうに飲んで、タウン誌をくまなく見ているオミさんを見て小さく笑っていると、
「ルディオミ」
誰かがオミさんを呼ぶ声がして、顔をあげると
入り口に真っ赤な髪に、褐色の肌、そして長い三つ編みをしたガッシリした体型をしているけれど、優しい目つきの男性がこちらを見ている。
あれ??なんかオミさんに似てる?
私がそう思って、オミさんを見るとオミさんは顔をしかめてそちらを見ている。
「なんで来たんだよ」
「お前が心配だからだろう。契約中は戻れないんだし‥」
「どーだか、人間界に落とされた俺を笑いに来たんじゃねーの?」
へっと鼻で笑うと、ココアをグビッと飲み干して紙コップを潰したかと思うと、ゴミ箱にポイっと投げ捨てたオミさん。私は何が何やら分からず、オミさんとその男性を交互に見る。
もしかして、この人って‥。
優しい目つきをした男性は私を見て微笑むと、
「初めまして、ルディオミの兄のパティアです。弟がお世話になっています」
「は、初めまして!!小都森 青葉です!!こちらこそお世話になってます‥???」
すっごい丁寧な物腰に思わず目を丸くする。
思わず疑問形になって答えた私を、オミさんがすかさず「なんで疑問なんだよ!すげー世話してんだろ!」と言うので、私はじとっとオミさんを見つめて、
「‥まぁ、多少お世話になっています」
「「お前なぁ!!そこは素直に世話になってるでいいんだよ!」」
‥じゃあ、せめて髪を自分で乾かしてくれ。
そう思ったけど、お兄さんのパティアさんが驚いて私とオミさんを見ているので、とりあえず微笑んでおいた。




