竜の神様、コインランドリーへ。
衝撃的な事実を知って、とりあえずお守りをしっかり持ち歩くことにしたけど、家にいる間はオミさんが守護の力を使って、外敵が入らないようにしてくれているらしい。
「風呂もトイレも流石に俺は入れねぇしな」
「「当たり前です!!!」」
そもそもこんな1DKにオミさんと二人暮らしだって、相当恥ずかしいのに。
引っ越し‥は、流石にお金がないから無理だしなぁ。
しかしそれよりも問題なのはここの所、雨続きで洗濯物を乾かせない事だ。
服はどうにかなるけど、下着は流石に見せたくないしコインランドリーに行くしかないかな。
「オミさん、洗濯物を乾かしに行こうと思います」
「はぁああ???なんで??どこに??」
「‥オミさんは、力を使って服を出しますけど、私の服は洗って干さないとなんです!!」
人間界の生活習慣、まだまだ覚えきれないから仕方ないとはいえ、そうオミさんに訴えるけど、よくわからないらしい。
「‥外にいつもみたく干せばいいだろ?」
「雨の時は、乾かないんです。それに下着は流石に‥」
口ごもってしまう私に、オミさんが瞬間固まった。
‥意味が分かって頂けて良かったです。
オミさんはちょっと照れ臭そうに横を向いて、
「‥セキに言っておく」
「え??セキさんに言っておいてどうにかなるんですか??」
「あいつ、人間界には詳しいからな」
「セキさん、蛇なのに‥」
「こっちにも蛇の神様はいるだろ?あいつ、それ経由で詳しいんだよな」
ああ、なるほど〜〜。
確かに蛇の神様っていたなぁ。私がそんなことを思い出していると、オミさんがチラチラと私を見る。
「‥服、足りないのか?」
「うーん、まぁ大丈夫だと思います。とりあえずコインランドリーに行きたいんですけど、一緒に行って貰えますか?」
「コインランドリー???」
「服を乾かしてくれる機械がある場所です」
オミさんはその言葉を聞いて、興味深そうに目をキラッと光らせる。
こういう所、可愛いんだよなぁ。
「よし、行こうぜ。こいんあんど??」
「こいんあんど‥ですね」
面白かったので、あえて訂正しなかった。
服をネットにいくつか分けて入れて、大きめのバッグに仕舞う。虹色の傘を使うか?ビニール傘にしておこうか??玄関でちょっと迷っていると、
「‥んなでけーカバン持ってるんだから、俺の傘に入っていけよ」
「え、ええ‥???」
「おら行くぞ」
オミさんは、玄関を出て大きな黒い傘を差す。
内側の青空が今日も気持ちよさそうだ。雲がフヨフヨ浮いている。‥相合い傘とかいう概念をオミさんは知らないだろうし、気にしなければいいか。そう思って、私はオミさんの大きな傘の下に入る。
「今日も気持ち良い青空の傘ですね〜」
「お、おう‥」
オミさんはちょっとぶっきらぼうに答えて、ジーンズのポケットに手を突っ込んでのしのしと歩く。こんな大きな傘を片手で持っても軽々と持っているのを見ると、やっぱり体力あるんだなぁ〜‥思う。
「梅雨が明けたら、一気に夏かぁ。やだなぁ、暑いの」
「暑いの苦手なのか?」
「こっちの暑さは狂気じみてるんですよ‥いくら薄着したって、暑いし」
「ふ、ふ〜〜ん???」
「夏用に部屋着のショートパンツ、買っておこうかな」
「しょ、しょーとぱんつ???!!!」
私の言葉にオミさんがギョッとした顔をして、赤い顔で私を見る。
「しょ、しょーとぱんつって、あの雑誌で見た短いのか!!?」
「そうですけど??」
「やめとけ。あれは危険だ」
「いつからそんな危険物に‥」
「「あ〜〜〜もう、と、とにかくダメだ!!!」」
そう言ってオミさんは、ずんずんと前に進んで行こうとする。
ちょっと待て!!!私が濡れるではないか!!!
慌てて駆け寄って、オミさんの腕を咄嗟に掴む。
「もう!!オミさん、待ってください!私が濡れちゃうじゃないですか!!」
「う、あ、おっ、おまっ‥!!」
「‥なんですか?」
私がジトッと睨むと、オミさんは目をウロウロさせながら口を噤んで歩いて行くけど、隙あらば離れていこうとするので、その度に私が腕を引っ張る。
「オミさん、離れないで下さいよ!」
「「お、お前なぁああ!!!本当に、この、アホリンゴ!!」」
「はぁあああああ??リンゴに謝って下さい!!」
オミさんがなんでそうなるんだよ!って怒鳴るけど、知るか!
私はリンゴではないし、りんごはそもそもアホではない。コインランドリーに入っていくと傘をしまいつつオミさんは力無く、「絶対ぇセキに連絡する」と、力無くオミさんが呟いた。‥なんで??




