竜の神さま、感謝される。
長谷君と橋の上で撮影の為に抱き合うことになったけど、
はっきり言おう。オミさんからの視線が怖い。
しょうがないじゃないか〜〜。
それに、なんでそんなに怒るんだよ‥。ただの契約者じゃないか。
黙りこくっている私を見て、長谷君が顔を覗き込む。
「青葉、緊張してる?」
「え、あ、ああ、緊張というか、なんというか‥」
ううう、ますます視線が突き刺さる〜〜。
私がちょっとだけ長谷君から離れると、視線が和らいだ気がする。
スタッフさんがやってきて、
「すみません、さっき一部落ちたセットがちょっと直らなくて‥、抱き合うんじゃなくて手を繋いで橋を渡って貰えませんか?」
ええ‥と、長谷君は声をあげたけど、即座に私は「「全然、構いません」」と、言い切った。オミさんの視線で死にたくない。命大事。
「じゃあ、こっちの橋のたもとから、ゆっくり笑ってお喋りしながら歩いてきて下さい」
スタッフさんに声を掛けられて、スタスタ歩いて行こうとすると長谷君に慌てて手を掴まれた。あれ??もう始めるの?
「青葉、恋人役なんだから一人で行くなよ」
「え、ええ、もう役作り?」
「‥できれば、現実も、その」
長谷君が私をじっと見つめたその時、
後ろでがしゃん!と、何かが落ちた音がして思わず振り返る。どうもセットの一部が落ちたらしい。‥よく落ちるなぁ。オミさんをチラリと見ると、腕を組んだままこちらを睨んでいる。‥神様、穏やかであれ。
「セット、大丈夫かな?」
「あ、ああ、大丈夫‥だといいな」
「だね、じゃあ行こうか」
私が長谷君の手を引っ張って歩くと、スタッフさんに声を掛けられて慌てて二人で駆け寄った。
撮影はなんというか、本当に難しい!!!
カメラを意識しながらも、相手に話すのとか緊張するし、何度か顔が固いって言われたけど緊張するんだよ〜〜。
「大丈夫だよ、本当の恋人だと思ってリラックスして」
「あ、ありがとう‥」
って長谷君言うけどね、恋人なんていた事ないからリラックスとは〜〜〜?!なんだ。
オミさんの方をチラッと見るけど、姿が見えない。
あれ?飽きてどこかに行ったのかな?
と、橋の向こうにオミさんがいるのが見えた。いつの間に‥?
すると、オミさんがちょっと上を向くので私も上を見上げると、シャボン玉がふわふわと空を飛んでる?あれ??どこから飛んできた??
でも、なんだかそれを見てホッとしてようやく力が抜けた。
「撮影、始めます」
その声にドキドキはしたものの、帰ったらオミさんとシャボン玉勝負またしようかな‥。そう思いながら長谷君と話して橋の向かいに辿り着くと、カットが入ってようやく合格をもらえた。
はぁっと、肩の力を抜いてオミさんを見ると、ニヤッと笑って私を見る。
オミさんの方へ行こうとすると、長谷君に肩を叩かれる。
「青葉、すごいいい笑顔だったじゃん!」
「あ、長谷君。何回もごめんね」
「いや、楽しかったよ!あの今度さ‥」
「「青葉」」
低い声でオミさんが私の名前を呼ぶ。
あれ??今、呼んだけど見えてないよね?いや、すかさず姿を現しそうで怖い。今は撮影現場だしこれ以上、邪魔はしたくない。
「えっと、ごめんね。長谷君、今度また!」
「え、あの青葉‥」
すみません!!
今度、お話伺いますので〜〜!!
急いでオミさんの体をちょっと引っ張るように、衣装部屋の方へ急ぐ。
「オミさん、あんな不用意に名前呼んじゃって大丈夫だったんですか?」
「お前しか呼んでないんだから、大丈夫じゃね?」
「「もう、いい加減なんだから!!」」
撮影が終わったらすぐ衣装を返しに来て欲しいと言われたので、私は衣装部屋のドアノブに手を掛けて‥、オミさんを見上げた。
「‥オミさん、橋のとこにいてくれてありがとうございます」
「はぁ?」
「‥いてくれたんで、安心しました」
そう言うと、オミさんはちょっと体が固まった。
‥本当、口は悪いくせに不器用だよなぁ。小さく笑って今度こそ衣装部屋の中へ入って行った。




