竜の神様、課題は秘密。
お弁当を気持ちの良い青空の下‥早速広げると、オミさんはそれはそれは嬉しそうに中身を見つめた。
‥そんなに嬉しいなら、もうちょっと中身入れてあげれば良かった。
なんか「少ない!」とか、「肉がない!」とか言うかと思ったので、ちょっと意外な姿に胸がむず痒い。‥ここの所、本当にペースを乱されている気がするなぁ。
ウィンナーを一口齧って、もぐもぐと食べていると、
足元から小さな声で、
「美味しそうですね」
って聞こえて、足元を見る。
と、赤い蛇がこちらをつぶらな目でこちらを見ている。
へ‥、
「「「わぁあああああ!!!!へ、蛇ぃいいい!!!」」」
両足を浮かせて、オミさんの方へ体を勢いよく寄せるとオミさんの体が一瞬固まる。
「な、何を言って‥。あ、そいつか」
「「お、お知り合いで?!!!」」
蛇と知り合いなの!??
どういう繋がりなの!??
涙目でオミさんを見ると、赤い蛇はスルスルと滑るように私達の前にやってきて、頭を小さく下げる。
「初めまして、セキと申します。この度は、うちの国の者が青葉様にご迷惑をおかけしまして‥」
「「っへ???」」
「あいつ、もうちっとどうにかしとけよ。勝手にこっちに来るなんてどんだけ頭軽いんだよ」
へ?
どういう事なの??
オミさんの方を見ると、お弁当を大きな口でもぐもぐ食べつつ、
「昨日、お前を殺そうとしたのはうちの国の奴なんだけど、まぁあの通り身勝手だから、セキに言っておいた。俺の契約者に牙を向けておいてタダで済むわけないだろ」
「そ、そうなんですか!?っていうか、そもそも契約者って何か利点が?!」
「言ってなかったっけ?」
「「言ってません!!!」」
私が怒鳴ると、赤い蛇のセキさん?が小さくため息をつく。
「青葉様、本当にルディオミ様がご迷惑をお掛けしてしまって‥。本来、契約者は同意の元結ばれるものなのですが、今回はあまりのダメなルディオミ様の行動が目に余って、頭に血が上ってしまったダメな竜王様が問答無用で契約をしてしまったので説明がないままで混乱しましたよね。申し訳ないです‥。まぁ、1番の原因はルディオミ様なんですけれど」
サラサラと言いつつ、オミさんのお父さんとオミさんをきっちり責めている赤い蛇のセキさん‥。これは、仲良くなれそうだな?オミさんはお弁当を食べつつ、面倒くさそうな顔をしている‥。
「契約は、本来危険が及ばないよう守る事を念頭に交わされるものなのです」
「危険‥」
「なので、身の安全は保証されるのでそこはご安心下さい」
「昨日、殺されそうになったけど‥」
私がボソッと呟くと、オミさんが私を見て「万が一の時は、言の葉の神も手伝ってくれる」って言うけど、契約‥ガバガバすぎない?蛇のセキさんは、小さく咳払いしてオミさんを見る。
「ルディオミ様、お分かりかと思いますが身体的接触は無理ですからね」
「んな事いちいち言わなくても知ってる!!っていうか、今言うな!!」
身体的接触?
今現在、セキさんが怖くてオミさんにくっついてるけど??
これってダメだったの?
「あ、要するに体液などのせっしょ‥」
「「言 う な !!!」」
オミさんがセキさんの首をギュッと勢いよく掴んで、思い切り睨んでいる。
体液‥。
その一言でようやく意味が分かって、思わず顔が赤くなった。
大丈夫、それは間違ってもない。
蛇のセキさんは、オミさんの手の中からシュルッと出てきて、腕に絡みつきつつ私を見て、
「今回の契約は、オミさんの課題が終了次第解消されますのでご安心下さいね」
「課題って?」
「竜王様が仰るには「秘密!」だそうです」
「「王様ーーーー!!!!」」
私は叫んだ。
とりあえず叫んだ。
課題が終了したらって、その内容がわからずして一体どうやってその課題に取り組めばいいのだ!?
オミさんはそんな叫んだ私を見て、
「とりあえず弁当食えよ」
「「いや、当事者!!そしてやっぱり完全に巻き込まれてる事実!!」」
「身の安全は保証するぞ」
「「そういう問題じゃない!!!!」」
契約内容を聞いたら、ますますこれは解消の道は遠いのでは?!!
って思って、気が遠くなった‥。
蛇のセキさんが「僭越ながらお手伝いさせて頂きます!」って言ってくれたのが、せめてもの救いだった‥。




