竜の神様、お仕置き中。
助けてくれたまるさんに、言の葉の神様によろしく伝えて欲しいと話すと、にっこり笑って静かに手の上から消えてしまった。
‥うーん、神様ってすごい事するなぁ。
私はいなくなってしまった手の上をまじまじと見つめる。さっきまでここにいたのに不思議だなぁ。後ろを振り返ると、私の一歩後ろでオミさんが腕を組んでじっとこちらを見ている。
「おい、さっさと許せ」
「オミさん‥許しというものは、強要するものじゃありませんよ?」
「肉を食いに行くのに不便だろ!」
「一定の距離を保てばいいんだから大丈夫ですよ。ほら行きましょう」
オミさんは、「そうじゃなくて‥」とブツブツ言っているけど、とりあえずオミさんが側にいてくれるから安心だ。一緒に公園の中を歩いてからお店へ行こうと話をする。
「オミさんの街は、こんな公園もあります?」
「もうちっと規模はデカイけどな」
「そっか、似た感じの場所なんですね」
オミさんと一緒に公園を歩いていると、シャボン玉をしている子供がいてオミさんが不思議そうに見ている。‥竜の国にはないのかな?
帰りにでも買って、ベランダで飛ばしてあげるか?
なんか目を丸くして見そうだなぁと思ったら、おかしくなって小さく笑ってしまう。
「‥なに笑ってんだよ」
「いや、ちょっと」
「さっきまで泣いてたくせに」
「あれは、驚いたあまりに涙が出たんです!」
私がジトッとオミさんを見上げると、オミさんはニヤッと笑って「泣き虫りんご〜」って言うので、本当にこの神様はガキンチョなのでは?って思う。ムッとした顔をすると、ますます面白そうに笑うので、体を触ってやろうか?って思って、そっと近付くと、オミさんはサッと体を翻す。
「あ!!もう、すばしっこいんだから!」
「‥お前がトロいんだろ?」
「‥‥許さなくていいそうですね」
オミさんは、ぐっと言葉に詰まって私をじっと見る。
なんだよ‥っていうか、別に私に触れなくても特別困ることなんてないんだから、よく考えたらお仕置きになんてならないよね?
スタスタとお店の方へと歩いていけば、オミさんが静かについてくる。
それはそれで、ちょっと気持ち悪いな‥。
ちょっとため息をついて、オミさんの方を振り向いて、
「オミさん、アイス屋さん行きます?」
そういうと、パッと顔を明るくする。
‥本当、この神様はちょっとずるいな。長い足であっという間に私のギリギリ側まで来ると、
「チョコって奴のアイス食ってみたい!」
「チョコも好きですもんね。スマホで調べたら、限定アイスもあるみたいなんですよね」
スマホの画面を距離に気をつけつつオミさんに見せると、オミさんが私をジトッと見て、
「見えにくいから、早く許せ」
「だから、強要するものじゃないですからね?ほら、ちゃんと見えるでしょ?」
私がそっと側に行くと、オミさんが今度は一歩離れる。
なんなんだ、君は!!
「痛かったんですか?」
「いた‥、うん?痛く、は、ある?」
胸元をぎゅっと掴んで、オミさんが不思議そうな顔をしている。
なんか困惑している顔が、さっきまで鬼のような形相で怒っていた人に思えなくて、つい笑ってしまう。
「もー、どっちですか?」
オミさんに笑いかけると、オミさんはピタッと体の動きを止めて私をじっと見てる。
「オミさん?」
「‥‥なんでもねぇ」
「そうですか??じゃ、アイス屋さん行きましょう」
「‥おう」
急に静かになったけど、大丈夫かな?本当は痛いのを我慢してるのかな?
オミさんを見上げて、スマホをなんとか見せようと位置を工夫してみる。
「あ、ちなみにアイスは乗せて食べられるんですよ」
「「何個までいいんだ」」
「お肉を食べに行くんで、一個までにしておきましょうね」
「お前も食えよ。そしたら色んな味、楽しめるし」
「何サラッと言ってるんですか。私はそんなにお腹に入りません」
乙女のお腹には許容量っていうのがあるんだぞ?
結局オミさんは3個乗せたアイスを食べて、その後熱々のお肉をこれでもか!って食べてたけど‥、本当にそんな量、お腹のどこに入っていくの??私は見てるだけで胸焼けしそうだった‥。




