竜の神様とクリスマス。3
赤いマフラーをお守りにもらって、海苔のような眉毛をした雪だるまさんはニコニコしながら帰って行ったけど‥。
「サンタクロースが雪だるま‥」
「あれだろ、最近なんでもネットにアップされるから人間の目隠しも兼ねてあの形態なんだろ」
「そんな事情‥」
ちびっ子の皆、今年のサンタクロースさんは雪だるまだけど驚かないでね‥って思ったよ。っていうか、サンタクロースの話をオミさんにしようと思ってたけど、雪だるまさんの話を聞いていて驚かないって事はオミさん知ってたのかな?
チラッとオミさんを見上げて、
「オミさん、サンタクロースって知ってたんですか?」
「‥クリスマスを調べてたついでに知った」
「そうですか〜。じゃあ当日、何が来るか楽しみですね」
「え!?プレゼントって子供限定じゃないのか!?
オミさんが驚いた顔をして私に聞くので、私はここぞとばかりに笑顔になる。
「いい子には大人でも稀に来ることがあるそうですよ」
「そ、そうなのか!?」
ええ、そういう事にしておきましょう。
良い反応をしてくれるオミさんに、ニコニコと微笑み、私は心の中で「特大ブーツお菓子詰め合わせ」をあとでスマホで検索!!と、書き記しておいた。絶対プレゼントしよう。
とてもいい反応をしてくれるに違いないと思っていると‥、くしゃん!とクシャミが出た。そういえば、雪だるまさんに遠慮してエアコン付けてなかったんだった。と、オミさんが慌てて着ていた上着を私に被せた。
「大丈夫ですよ、オミさん。すぐエアコン付けますし‥」
「‥風邪引いたら大変だろ」
照れ臭そうにそう言うと、いそいそとまたお湯を沸かしに行ってくれるオミさん。‥この神様は本当に人の心を鷲掴みしてくるな‥。うっかりキュンとしてしまった私はなんとか緩む頬を引き締めて、オミさんのいる台所へ向かった。
そうして一緒に朝食を食べて、私は大学へ。
オミさんは街の周辺のモノ達の様子を見に見回りへ行く。
「本当は一緒に大学に行きてーんだけどなぁ‥」
大学までは一緒に歩いていくけれど、そこまでだ。
オミさんは白い息を吐き出しつつ、ちょっと不満げだ。
「そうは言ってもお仕事ですからね。あ、でも今日はちょっと早めに終わりますから。夕飯はおでんにしましょっか!寒い日に食べると美味しいんですよね〜〜」
まだこの冬はおでんを作ってないけれど、オミさんのことだからきっと気に入るであろう。オミさんも私の言葉にちょっと顔を輝かせる。
「肉、あるのか?」
「うーん‥。ウィンナーと牛すじ‥足しておきます」
「そうか!じゃあ、早く帰って来いよ!連絡くれれば迎えに行く!」
「いやいや、オミさん仕事があるでしょうに‥」
それに特大ブーツお菓子詰め合わせがあるかも調べておきたいし‥なんて思っていると、オミさんはすかさず私の手をギュッと掴んで、愛おしそうにこちらを見つめる。
「‥迎えに行く」
「〜〜〜っ、わ、わかりました!!」
だからちょっとその顔、控えて頂けます?!
ドキドキしちゃうんですよ!
顔が赤くなっていくのがわかって、慌てて横を向くとオミさんはニマニマ笑って、わざと私の顔を覗き込んでくる。
「なんでそっち向くんだよ」
「気のせいですよ」
「こっち向けよ、赤りんご」
「ええい!神様がからかわないで下さい!!」
そんな風に言われると、どんどん顔が赤くなってしまうではないか!
と、足元に何かがぶつかって下を見ると、
さっきの雪だるまさんが溶けかかって、顔が半分崩れてるーーーーー!!!??
「なんで!?どうして、溶けてるの〜〜〜!!??」
「あ、エアコンの排気を浴びたら‥」
「お、オミさん!!オミさん!!助けてぇえええ!!!」
思わず道端で叫んでしまう私と、溶けかかった雪だるまを見てオミさんは遠くを見つめる。
「‥おい、加護があっても自衛はするんだぞ?」
と、呆れたように冬の寒空の下、ポツリと呟いて雪だるまさんを直して(?)くれた‥。




