竜の神様とクリスマス。1
結局オミさんと蛇神様との「我こそはクリスマスを共に過ごす者!!」という決戦は私の厳選なる審査によって、イブはオミさんと。25日に蛇神様達‥えーとつまりシキさんとかエトラさん達を呼んで派手に盛り上がろうという話になった。
蛇神様はそれで納得すると、颯爽と帰っていったけれど‥、
肝心のオミさんは納得した顔をしていない。
むしろなんで邪魔をするんだ!とばかりにむくれて、寝室のベッドでふて腐れている。‥あの、私達結婚しましたよね?お風呂から上がってベッドの端っこにちょっと苦笑いして座る。
「まだむくれてる」
「さっきスマホで調べたら、クリスマスは恋人が一緒にいるって書いてあった」
「一体どこの記事を読んだんですか‥」
大分偏ってるぞ、それ。
私が呆れた顔をしてオミさんを見下ろすと、ちょっと照れ臭そうにそっぽを向いて、「だって初めてだろ、クリスマス」と言うから私の胸がぎゅっと握りつぶされた‥。やめてくれ、なんだその可愛い言動。オミさんとこっちへ帰ってからというもの、私は一緒にいたがったり、何かを一緒にするのを嬉しそうにするオミさんに掻き回されっぱなしだ。
「24のイブは一緒ですから‥」
「じゃあ、その日は肉祭りな」
「いつだって肉を所望しているくせに‥。でもカロリー控えめにしないと太っちゃうから、メニューを考えないとだなぁ」
どんな料理がいいかなぁって考えると、オミさんは嬉しそうに私を見上げる。
「ケーキとか一緒に作ろうぜ!さっきスマホで見たけど、きっと?ってあるんだな」
「‥ケーキのキットを挑戦しようって、結構な強者ですね」
「難しいのか?」
「うーん、ものによるかなぁ‥。あ、でもこれならできそう」
オミさんがスマホでいくつかブクマしたケーキキットを見て、指差すとオミさんがくしゃっと笑って私を見上げる。
「‥じゃあ、これイブに作ろうぜ。注文しとく!」
「うう、素直なオミさんの破壊力‥」
「俺がなにを壊すんだよ?」
主に私の心ですかね。
でも、そんな事を言ったらますます喜ばせそうだから言わないけど。
曖昧に笑って、メインのお肉料理の話をしたらすぐそっちに気が逸れてくれたけど‥。そういえばプレゼントはどうしようかな。
結婚指輪は貰ったし、何かオミさんにとって記念になるものがいいな。
思い切って、サンタの話をして枕元にそっとプレゼントを用意しておくのもいいかも?ブーツにお菓子が沢山入ったのを置いても喜んでくれそうだな!そう思ったら私まで楽しみになってきた!
なんだかんだでイベントを楽しんでくれるオミさんだから、サンタの話も教えたら面白がってくれそうだなって思っていると、オミさんが私の腕をぐいっと引っ張って布団の中に引き込んだ。
「わ、わわ、オミさん!?」
「‥体冷えるぞ」
「え、あ、ああ、ありがとうございます?」
オミさんは面白そうな顔をして私をぎゅっと抱き込むと、ぶっとい筋肉の腕で私を抱きしめる。
「‥青葉、クリスマス楽しみにしてる」
ボソッとオミさんが私にそういうので顔を上げると、嬉しそうに私を見つめるオミさんにすかさずキスされた。
「んなっ‥!??」
「お前、まだ慣れねーな」
「な、慣れ‥!?」
「まぁ、そこがいいけど」
そこがいい??!
赤い顔になった私を満足げに見て、またもキスするオミさん。
あの!!慣れてないってわかってるなら手加減してもらえませんかね!?愛おしそうに私を見つめるオミさんに体の奥が一気に熱くなる。恥ずかしくて仕方ないのに、オミさんはそんな私に何度もキスをして、結局私はそのまま真っ赤な顔でキスを受け止めるだけで手一杯だった‥。
くそ、クリスマスめ!!
と、思わずクリスマスに毒づいてしまったの別に悪くないよね?
そうして翌朝、ぎゅうぎゅうに抱きしめられて目覚めた私。
「う、腕が重い‥」
私を抱きしめて嬉しそうに寝ているオミさんを見ると、うっかりキュンとしてしまうけど、重いものは重い。がっしりと人の腰にシートベルトのように回した腕を、そっと引き離し‥、リビングへ行こうとすると、玄関の向こうに何かが置いてあるのがすりガラス越しに見えた。
「ん?」
玄関の前に何か白い物が置いてある?
高さが30センチくらいの物が見えて、もしかしてオミさんにお客さんだろうか?と思って、玄関をそっと開けると、
海苔のような眉をキリッとさせた雪だるまが私を見上げて‥。
「あ、どうも。雪だるまです!」
「ゆ、雪だるまーーー!!!??」
想像して欲しい。
いきなりやってきて挨拶する雪だるまって何?
いや、そもそも雪だるまって喋るの?!!喋るのって消えないモノだと思ってたけど、冬季限定も喋るの!?
私が朝イチで叫んでしまった為に、秒で起きたオミさんが鬼の形相で駆けつけ、玄関へ走り込み、雪だるまと共に思わずその顔に悲鳴を上げたのは、無理もない‥よね?




