竜の神様、お仕置きされる。
業火のような火柱はあっという間に、黒いお化けみたいなのを焼き尽くしたようだ。
私はというと、まるさんを手に持ったままオミさんに抱きしめられているけれど、なぜか絶賛怒られている。解せぬ。
「アホかお前は!俺から離れたら、お前なんてすぐ喰われるだろ!」
「な、何に喰われるんですか?!い、いや、やっぱ聞きたくない」
「なんで俺のいた店から離れて行ったんだよ!!」
「だ、だって、店がビルになってて‥、それで、く、黒いお化けみたいのが追いかけてきて‥」
オミさんは私の言葉を聞いて、思い当たる事があったのか舌打ちする。
私は怒られつつも、オミさんが来てくれた事で安心してしまって‥、じわっと涙が出そうになる。と、オミさんの顔がギクリと強張る。
「「な、泣くな!!わ、分かったから!!」」
「な、泣いてなんか‥」
「「だ、大丈夫!!大丈夫だから!!」」
そういうと、オミさんは私をぎゅっと抱きしめてまた優しく背中をトントンと叩く。‥泣かれるのに弱いのかな?
心底困ったように、焦った顔をして私を見ているオミさん。
顔を見上げた拍子に涙が溢れると、オミさんはますます慌てて私の背中を撫でたり、叩いたり忙しそうだ。
なんかそんな様子に胸が温かくなって、小さく笑う。
こういう姿が憎めないんだよね。
「オミさん、もう大丈夫だから」
「ほ、本当か?もう泣かないか?」
「泣きませんって」
だからとりあえず体を離してくれ。
そっと腕から抜け出そうとすると、オミさんがちょっと口を尖らせつつ私を見下ろしている。
「‥なんだよ‥、もうちっといたって‥」
「??いる??」
「なんでもねぇ!!」
「あ、お友達はどうしたんですか?」
「帰した。けど、今となっちゃ残しておけば良かった。黒いの仕掛けたの、多分あいつだ」
「「え???」」
黒いのって、もしかしてあのお化けみたいなの?
オミさんが苦々しい顔をして、私を見る。
「契約者のお前が死ねば、竜の国に帰ってくるって思ったんだろ」
「‥すごい情熱的ですね」
「「アホか!!ちっとは怒れ!!!」」
「怒るっていうより、そんな方法があったんだなって‥」
「「アホか!!絶対ぇさせるか!!!」」
オミさんのこめかみがヒクヒクしている。
うーん、これは相当怒ってくれているんだな。
さっきまで怖かったし、本当にどうしようって思ってたけど、オミさんの怒りっぷりになんだか嬉しくなる。
いつもは口が悪いのに、なんだかんだと心配したり、気にかけてくれている事が嬉しくて‥、口が緩む。そんな私を見て、オミさんが呆れたように私を見て、
「何、笑ってんだよ‥」
「いや、オミさん優しいなぁって」
「はぁあああ??!何言ってんだ??」
「はいはい、そう思っただけです。あ、まるさん助けて頂いてありがとうございました」
「「おい!!俺にもお礼!!」」
「はいはい、ありがとうございます」
おざなりに言うと、オミさんに「「もっと心を込めろ!!」」って言われたけど知るか。まるさんはそんな私とオミさんを見て、ニコニコ笑って、
「言の葉の神様が、今回青葉様をお守り出来なかったので、お仕置きが必要という事だそうですので、僭越ながらこのまるがお仕置きをさせて頂きますね」
「「えええっ!!??」」
私とオミさんの声が重なった途端、オミさんの体に小さな丸い光が目の前に現れたかと思うと、胸の中に吸い込まれていった。
「ま、まるさん、お仕置きって‥、オミさんは確かに口も素行も悪いけど助けてくれて‥」
「おい、庇ってんのか?非難してんのか??」
オミさんの言葉をよそに、手の上のまるさんにそう話すと‥、
「一応、人をお守りする修行ですからねぇ。今回は軽いお仕置きだそうで、青葉様がもう良いと仰れば終わりますから」
まるさんが私を見上げてそう話す。
私が許せばいいの?
っていうか、どんなお仕置きなんだろ??
「まるさん、お仕置きってどんなものなの?」
「ああ、それはですね‥」
オミさんが、私の側へ寄って話を聞こうとすると、バシッと叩かれたような音がして後ろを振り向くと、オミさんが一歩私の体から離れてうずくまっている。
「「お、オミさん??!!」」
「一定以上の距離には痛みが走って近寄る事ができないそうです。あ、でも離れるのも出来ませんけどね」
それはお仕置きになるのか???
オミさんを見ると、かなり痛かったのか胸の所を抑えている。
「お、オミさん、大丈夫!??」
私が触ろうとしたら、またバシッと音がしてオミさんが痛いのか顔を歪めて、ボソッと呟く。
「‥まじかよ」
「マジです!言の葉の神様の術は完璧に御座います!!」
手の中のまるさんが、すっごく誇らしげに言うのでそうなのだろう。しかし‥これはお肉食べに行けるのかな??一応距離に気をつけよう。




