竜の神様、モノの神様修行をする。16
煌々と明るくなった教室の迷路からオミさんと戻ると、蛇神様とベルミアさんがニコニコ笑って手を振ってくれた。
‥その明るい笑顔、大変有り難いです。
すんごく今、私の顔が赤いのでちょっと居たたまれないけど。
ベルミアさんは金髪の人形を、オミさんにポイッと投げると、オミさんが難なくキャッチするけど‥。そんな手軽に投げちゃっていいの?!そう思っていると、金髪の人形は『ちょっと!!投げるんじゃないわよ!!』と叫んでいた。それは、確かにごもっとも。
オミさんは、そんな叫ぶ金髪の人形を気にもせず桐箱の中に入れる。
そうしてその桐箱を持っているオミさんの手から、炎が出てくるとあっという間に桐箱が燃えて無くなってしまった!
「に、人形が!!!」
「言の葉の神様に送ったんだ」
「も、燃やして??!」
「便利だろ」
便利の定義ーー!!??
私が目を丸くしていると、奥の方から話し声がする。どうやら長谷君達が目を覚ましたようだ。こっちに来られると、今はまずいかも‥。そう思っていると、蛇神様が私達を見回して、
「ここじゃなんだ。青葉、お前さん達の家にお邪魔しても良いかの?」
「あ、はい、どうぞ」
「‥なんでうちなんだよ」
「オミさん、そう言わず。たい焼きも買い置きありますよ?」
私の言葉にオミさんがピクッと反応する。
よしよし、これで大丈夫かな?
蛇神様は「じゃあ行くぞ〜〜」と言うと、あっという間に私達は家の前に立っていた。‥神様って本当、すごい。
早速家の中に入って貰うと、ベルミアさんは興味津々で家の中を見回す。
「これは倉庫を改造したのか?」
「‥‥世間一般的な家ですね」
「へ〜!!広くしておいてやろうか?!」
「だーーー!!親父さっさと帰れ!!」
「オミさん、落ち着いて!!」
すぐに一触即発な雰囲気になるな、この親子!!
これで結婚式なんかしたら、乱闘にならないか??っていうか、いつもこんな感じなの??と、蛇神様と目が合うと、面白そうに笑って頷く。あ、やっぱりいつもこんな感じなの??
「ほれほれ、青葉が困っているぞ二人共〜〜」
「ああ、すまんなぁ。ほら、ルディオミ落ち着け」
「お、お前なぁあああ!!!」
「オミさん、たい焼き!!たい焼きがここに!!!!」
急いでたい焼きをチンして、お出ししたさ。
お茶も流れるように淹れたさ。
そうしてコタツに感動し、たい焼きの形を面白がるオミさんそっくりなベルミアさんが静かに食べ始めると、オミさんもやっと落ち着いたようだ。
「‥で、親父はなんでここに来たんだよ」
「お前、祝いを竜の国でするんだろ。青葉さんと正式に顔合わせに来たんだよ。まったく‥前回会いに行ったら俺を投げ飛ばしやがって、この繊細な体が動かなくなったらどうしてくれるんだ!」
オミさんはげっそりした顔になって、ベルミアさんを睨む。
「‥‥繊細が爆笑するようなセリフを言うな」
「うるせぇ、あとはこれだ、これ」
ベルミアさんが胸元のポケットから一枚の金色の紙を出すと、オミさんが目を丸くする。
「神託じゃねーか!なんでこんな大事なもんを気軽に持ってきたんだよ!」
「別にいいだろ。内容はあっちでもちゃんと確認してきたし」
「そういう問題か!!!」
え、えーと‥神託の紙?!
神託って、オミさんの世界の神様‥神王様の有り難いお言葉的なやつだよね?!私も驚いて、その紙とベルミアさんを交互に見ると、ベルミアさんは私にニッと笑う。
「神王様から、こっちとあっちの世界を助ける仕事をしっかりやってくれって直々にお前と青葉さんに神託が降りたんだ。これがあっちゃあ、そこらの神はお前さん達にはなーんにも言えねぇなぁ」
え‥、それって‥。
もしかしてオミさんが半端者って言われない為?
私が呆然とした顔でオミさんを見つめると、オミさんもニヤッと笑う。
「‥俺の為もあるけど、青葉の為でもあるんだろ」
「え?」
「俺はやり返せるけど、お前は力が不十分だ。神王様から直々に神託が降りたからには、お前を馬鹿にしようとすれば、それこそ神王様から罰せられる」
そ、そうなの?!!
驚いて目を丸くすると、蛇神様が面白そうに笑って「青葉、気に入られているしのう〜」って言うけど‥。うわ、これは早急にお礼をせねば!!何が好きか後でベルミアさんに聞いておこう。
そう思いつつ、金色の手紙をじっと見る。
私には読めない異国の字だけれど、暖かい気配が手紙から溢れている。その気配を感じるだけで、嬉しくて‥思わずウルっとしてしまう。
と、オミさんがすかさず私の前にたい焼きを差し出す。
「お、オミさん?」
「‥‥もう泣くなよ」
「‥嬉し涙ですよ?」
「それでもだ‥。笑ってろ‥」
オミさんが照れ臭そうにそう言うと、ふと視線を感じる。
顔を上げると、目の前に座っているベルミアさんが優しい顔でこちらを見ていた。それだけの事なのに‥、優しい眼差しに胸が一杯になって、ぼろっと泣いてしまって‥結局オミさんは大いに慌てたのだった。




