竜の神様、モノの神様修行をする。15
オミさんは悪食を倒して、原因の金髪の人形をお父さんのベルミアさんに押し付けると、私の手をがっちり握り込んで、迷路の中へ歩いていく。
その間、ずっと無言なので大きな背中を見ながら私は不安になる。
もしかして怒ってる?
半端者って、やっぱり‥聞いちゃまずい事だった?
それとも‥、何も力のない私と結婚なんてやっぱり無理‥とか?
じわっと涙が出そうになると、オミさんが私を壁際に立たせる。
「オミさん?」
「お前、ロクでもない事考えてるだろ」
「え?」
「俺が半端者って呼ばれたら嫌だな‥とか、考えてるだろ」
「‥そうですね。私と一緒にいていいのか‥とか」
オミさんは私の言葉を聞いて、ちょっと目を見開く。
私は、自分で言っておいて自分の言葉に胸がズキッと痛む。苦しくて、涙を我慢しようとグッと唇を噛むと、オミさんがギュッと私を抱きしめる。
「‥お前、ほんっとうロクでもない事考えてるな‥」
オミさんが私の肩に顔を寄せて、苦しそうに呟いて更に私の体を抱き寄せる。
「だって、私だと半端者って‥」
「んなの、今更だ」
「でもオミさん、修行頑張ってたのに!」
「あんなん屁でもねーよ」
毎日ぐったりと疲れきっているくせに!!
どうして、そう‥こっちが気に病まないようにって、優しくするんだ‥。私は、何もオミさんにしてあげられないのに‥。そう思ったら、また涙が出てきてしまう。
「私じゃ、オミさんの役に立てない‥」
「役に立つから結婚なんてしねーだろ」
「‥それは!あ、あと素直じゃないし」
「それはお互い様だ」
「う、ううう〜〜〜〜」
ええい!!!もう!こっちはオミさんの幸せを願っているというのに!
涙目でオミさんをじとっと見上げると、オミさんがちょっと嬉しそうな顔をする。
「俺の事ばっか考えてるな」
改めて言われると、確かに‥。
顔が赤くなった私にオミさんがニヤッと笑う。
「俺もお前の事ばっか考えてる」
「え?」
「お互い様だな」
「な、な‥」
なんかすごい事サラッと言ってません??
私はますます顔が真っ赤になると、オミさんが私の額に自分の額をくっ付ける。
「全部込みで俺は青葉がいい」
オミさんの不思議な瞳の色が私をじっと見て、囁くように呟く。
たった一言‥。
たった一言なのに、その言葉は胸の中に暖かく広がって、さっきまでの不安とか色々な感情が一気に落ち着く。‥全部込みで、オミさんは一緒にいたいって思っててくれたんだ‥。
ただただその言葉が嬉しくて‥、
ぼろっと涙が出てしまうと、オミさんが慌てて私の涙をゴシゴシと手で拭く。
「な、泣くな!!」
「だって、オミさん‥、ご、ごめ‥」
「ええい!!謝るな!!それなら好きって言え!!」
え、えええ??!!
なんでそうなる?!プッと吹き出してしまうと、オミさんはホッとした顔になる。本当に涙に弱いな‥、小さく笑うとオミさんが私のおでこにチュッと音を立ててキスをするので驚いてしまう。
「‥お、オミさん??」
「青葉、」
オミさんが私の頬をちょっと撫でつつ、顔を寄せたその時‥、
「青葉ー!!竜の子ーー!!話は終わったかーー?」
‥大変聞き覚えのある声が聞こえた。
オミさんはちっと舌打ちをすると、壁の向こうを睨みつける。
「‥蛇神様ですね」
「クッソ!!うるせぇ、邪魔するな!!」
「ちょ、ちょっとオミさん!!邪魔も何も‥」
「そうだぞ〜〜、ルディオミ!いつまで俺はこの人形持ってればいいんだ?」
「あーー!!もうどいつもこいつも!!」
こらこら、神様が神様同士で喧嘩をするでない!!
慌ててオミさんの腕を掴むと、オミさんは私の顔をじろっと見たかと思うと、噛み付くようにキスをされて驚いて目を見開く。
「〜〜っんん!!?」
オミさんは私をギュッと抱きしめて、逃がさないとばかりに何度もキスするので私は目を白黒させた。ちょ、ちょ、ちょっと!!??そっちに蛇神様がいるのに、なんてことをしてるんだ!!
ようやく唇を離したオミさんが、真っ赤な私を見てニヤッと笑う。
「ぜってぇ離さねぇから覚悟しとけ」
「な、な‥!!!」
ニヤニヤ笑うオミさんは機嫌良さそうに私にトドメとばかりに頬にキスをすると、手を繋いだまま蛇神様の声のする方へ戻るけど‥、この真っ赤な顔をどうすればいいんだ?!!
部屋がずっと真っ暗なままでありますように!!
そう思ったら、パッと明かりが点いた。この世に、神も仏もいないのか!!!思わず心の中で叫んださ‥。




